2026年04月19日

■書名:「経営組織」
■著者:安藤史江、稲水伸行、西脇暢子、山岡徹
■出版社:中央経済社
■どんな人向けか:リーダーが知るべき組織のメカニズムやダイナミクスを知りたい人、自分の組織を良くするために論理を身に付けたい人、経営組織論の読みやすい本を探している人
人事コンサルタントが立ち戻る理論の教科書
私は人事コンサルティングをしていますが、ただの人事制度屋ではなく、組織が成長するところまで責任を持つことを信念としています。そもそも、人事とは手段であり、本来の目的は事業成長できるような組織を作ることです。その目的を果たすために機能が分かれて採用・教育・制度・人件費管理などに分かれて分担しているにすぎません。
そのため、組織の勉強については常に怠ってはいけないと考えています。事業と組織は経営の両輪と考えられていますし、いくら良い事業を提供しているとしても組織がついてこなければ水の泡です。しかも難しいことに、組織は生ものであり再現性が低い。良いマネージャーが別の企業でもそのマネジメント能力を発揮できるかと言われたら、メンバーや担当部署、役割や顧客が異なる中で、リーダーシップを発揮できるかは分かりません。
これだけアドリブ要素が強いマネジメントを司らなければならないのですから、組織を作る立場にいる人は少しでも理論を叩き込んでおくべきと思っています。そこで、本書「経営組織」を今回お勧めします。
チームの大小にかかわらず、組織を引っ張るリーダーはただ指示を出せばよいのではありません。特に経営まで上位層から会社全体を引っ張るとなると、組織の構造から部下のメンタルまで、「組織」に影響をもたらすあらゆる要素を頭に入れておく必要があります。複雑すぎて面倒くさいと感じてしまう人もいるかもしれませんが、私はそれは勿体ないと思っています。折角これだけ関連要素があるのであれば、それを活用しない手はないのです。
例えば、本書にモチベーションというテーマが出てきますが、「人のモチベーションなんて人それぞれじゃん」と言ってしまったらそれは解像度が少し低いと思います。モチベ―ションの基礎を知っているリーダーと知らないリーダーで、率いる組織の雰囲気や成果の達成度が変わるのであれば、モチベーションが湧き出る理論を学び、少しでも組織作りに活かしてみてもよいと思います。
また、経営者に必要なリーダーシップですが、学んでいる人をあまり見たことがありません。しかし、本当に何も学ばずしてリーダーシップを発揮できるのでしょうか。本書の中にも出てきますが、「仕事ができるから部下がついてくる」、もしくは「ポジションに就いているから部下がついてくる」ことはないと言う話が出てきます。言い換えれば、「社長だからリーダーシップがある」「事業部長だから部下が言うことを聞く」というポジションありきのリーダーシップはあり得ないのです。
ということは、逆に言うと勉強すべき「リーダーのスキル」「リーダーの知識」というものがあるということで、リーダーシップを発揮するには、先天的な才能ではなく後天的な知識で決まるとも言えます。これらは実務で習得することは非常に難しく、業務とは別に時間を作って理論を学ばなければ一生身につくことはありません。世のMBAはそのためにあるのだと思っていますが、本書は大学の教科書として使用されているもので、読みやすくかつ全体を網羅できますので、経営層に就いている方やそこをめざされる方、リーダーとして部下を持っている方はまずこちらで学んでほしいと思います。
モチベーション、意思決定、生産性、リーダーシップ…リーダーの視野の広さとは
各企業は組織をどのようにまとめていくかを常に試行錯誤おり、様々な制度やルールが組織の中に敷かれています。その制度やルールが、なぜ組織にとって良い影響を与えるのか、という根拠部分は実は導入した部署でも深く理解していないことがあります。
私は人事制度のご支援をしていますので、ここでは目標管理制度を例に取ってみます。
MBOと言われる目標管理制度は多くの企業に導入されています。しかし、なぜメンバーに目標を立てさせるのか、それをなぜ上長が面談で管理するか。理由を説明できますか?
本書によると、メンバー一人一人が目標を立てることは様々なメリットがあると言います。例えばモチベーション。人は何かを行動の前に、動かされる動機があります。ということは、動機がない行為はしないことになり、動機があれば自ら行動することになります。
目標を立てることは、社長の目標の一部が分割されて自分の目標となることで動機がもたらされます。ここで進行方向を揃えておくことで、その目標達成のための行為は他人(社長)のためにやるのではなく、自分の目標を達成するためという動機が生まれます。もちろん、ここには報酬の連動が必要ですが、それだけではなくこの社長の目標(会社の目標)と個人の目標の連続性を接続するものが目標設定制度になるわけです。これは、内的動機を高めるとも言い換えることができます。
ここでのポイントは、リーダーが「制度だから」とか、「会社がやれと言うから」とくれぐれも部下に言ってはいけません。
なぜかというと、目標管理制度はモチベーションを高めるための施策なので、部下のモチベーションを下げるような説明は目標管理制度を運用する上では不利だと、理論を学んでいれば分かると思います。面談でのリーダーの振る舞いも同様です。理論を学ぶと、「リーダーのモチベーションを引き出すことがリーダーシップはどのようにふるまえばよいのか」が分かります。部下はリーダーにリーダー然としていてほしいのです。社長であれ、部門長であれ、そのポジションに立つということは、それを支える土台を作らねばなりません。

目標管理制度の全体図(IGNITE HORIZON作成)※この図が示すのは、社長の想いを個人の動機へ『翻訳』するプロセスです
そして、この部下の目標が達成できるように引き上げるのが上長の役目、つまりリーダーシップになります。そこから派生して組織の内部の分担を考えれば生産性を高める活動は日々必要ですし、リーダーが担う役割の大きな部分を占める意思決定、部署同士がぶつかり合うコンフリクトなど、日々の業務で理解しておくと得するような理論が満載です。
一つ一つの理論を見ると独立しているように思いますが、それぞれの理論はすべてつながっています。そして、今回通読してみて改めて経営者・リーダーなど、チームの上に立つような方たちは頭に入れておいてほしいものばかりだと思いました。現場で実践することが無いと侮ることはできない。人を動かすのに理論は必要です。
具体的な一つ一つの理論については、また別記事で解説していきたいと思います。





