事業成果を出す組織を作るの実績紹介

書籍紹介(「学習する組織」入門」(小田理一郎))

■書名:「学習する組織」入門

■著者:小田理一郎

■出版社:英治出版

■どんな人向けか:複雑に絡み合う組織内の相互作用を整理したい人、組織改革のレバレッジポイント(てこ入れするポイント)を見つけたい人

 


「学習する組織」(ピーター・M・センゲ)が発売されて10年以上経過していますが、未だに本屋さんで平積みになっています。組織開発のバイブルとして紹介されており様々なところで見かけますので、手に取られた方も多いのではないでしょうか。

本書はその「学習する組織」の入門編として噛み砕いて説明されている本です。本家は非常に難解であると聞いたことがありましたが、こちらは分かりやすかったので入門編を読んでから本家の方を読まれるのがいいのではないかなと思います。

我々は組織について話をするとき、人格を持った一人の人間のように話をします。「あのチームはモチベーションが高いよね」「あのチームはまとまりがないから駄目だ」、そのような評価は一度は耳にしていると思います。その人格を紐解くと、実は所属する一人一人のメンバーの行動や性格の集合体で、それらがお互いに作用し合っている結果が「組織の人格」を形成していると気付かされます。

本書の表題に関して、組織が「学習する」という表現が面白いと思いました。個人の集合体である組織が、まるで一人の人間かのように、組織は過去の出来事を吸収して未来に成長していけるのでしょうか。

 


学習する組織になるための要件

私は組織論について、理論と現場でのギャップを毎回感じています。

まず、「学習する組織」という題目から、理論上は「優秀な組織は自発的に学びだす」と認識してしまいそうになりますが、私の経験上、自発的に学びだす組織は本当にごく僅かです。つまり、一般的な現場では何もなければ停滞していることの方が多いように思います。組織は、学習を欲する環境に組織が置かれない限り、動き出しません。

では、学習を欲する環境はどのような状況か。

上記のとおり、企業や組織を一人の人格のように捉えることが面白いという話をしました。人がどのようなときに学習せねばと感じるか、また知識や技術を身に付けるために本腰を入れられるかというと、「必要に駆られたとき」だと思います。

一方、組織が必要に駆られて学習するタイミングは2つあると思っています。1つは「メンバーが「自分がこの組織リーダーになり得る」と感じているとき」、もう一つは「組織が潰れそうなとき」です。この状況のどちらに自分の組織が近いか、まずは捉えてみて下さい。あるいはどちらにも当てはまらなければ、その組織は学習するフェーズではないと思います。その場合は、そのタイミングまで組織を誘導する必要があるので、環境づくりから始めるべきと思います。

 

次に、本書では組織に必要な学習能力として以下の3つの要素を挙げています。

(参照:「「学習する組織」入門」(小田理一郎)を基に作成)

 

個人的には、ここで補足が必要かと思っています。この3つの学習能力は、一人で醸成できるものではないように思えるからです。本書を読んでやる気になったメンバーが一人で奮闘しても、組織内に広まっていきません。特に、「1.志を育成する力」と「3.競争性に対話する力」はリーダーの働きかけが非常に重要になります。そのため、いきなりこの3つの要素を取り入れいることはできず、まずはリーダーがこの3つの学習能力を持っているか、持っていなければ研修などで外部からてこ入れをすることになります。

一方、「2.複雑性を理解する力」についてはある程度自己学習が可能だと思います。本書はその手助けになる考え方を教えてくれています。

 

 


複雑性を理解する力(システム思考とループ図)

この本の中で、初めてシステム思考とループ図を知りました。

システム思考とは、「ある事象が因果関係の連鎖によって、表面的には何も関係なさそうな事象を引き起こす」ことを考えることで、ループ図はその流れを見える化する図式です。絡み合う事象同士を構造の問題として書き出して繋げ、全体像を見てみようということです。

例えば、本書ではネガティブは発言が組織の雰囲気に悪影響を及ぼす事象について、システム思考とループ図を用いて説明しています。

(参照:「「学習する組織」入門」(小田理一郎)P.125 を基に作成)

 

この分析の良い点は、要因同士の「ループ」を浮き彫りにできる点です。

その事象の一つ一つは前の事象の結果であり、次の事象の原因になっていて、因果がぐるぐる回っています。そして、好循環・悪循環という言葉があるように、ループは良い方向にも悪い方向にも螺旋状にブーストが掛かります。

私個人の話ですが、実はブレストがあまり好きではなく、頭の中を整理できた試しがありませんでした。ブレストは「点」での洗い出しなので、作用の流れやどのように周辺へ影響しているかは一旦置いておくことになります。そのため、一つの事象を箇条書きで出したとしてもそれは氷山の一角を出しているだけで、根本原因まで到達できる気がしませんでした。会議や打ち合わせでの議論も同様に、関連性を無視した論点一点突破の話し合いでは、いくら時間を割いたとしても無駄に終わってしまっている感覚がありました。その点、ループ図の考え方は非常に納得することができました。

さらにもう一つ、ループの中にループが入っている(ダブルループ)になっている点も重要です。

添付のループ図でいうと、シングルループは「ネガティブ発言の数」→「メンバーのネガティブ発言への意識」→「ネガティブ発言の数が増える」・・・・という部分です。見て頂くと分かる通り、シンプルループは個人~少人数での活動であり、シンプルな事象に絞ったループです。

しかし、ここで言えることは、そのシングルループはさまざまな外的要素に影響を及ぼしてしまうということです。添付のループ図でいうと、シングルループ内で回っているはずだった「メンバーのネガティブ発言への意識」から派生し、「メンバーの無力感」、そして「できていないことの数」が増え、「ネガティブ発言が増える」という外側のループへと移行しているのが分かります。これがダブルループです。

そして、本書の本題である「深い学習サイクル」はダブルループになっていると言います。

例えば、P→D→C→Aは典型的なシングルループです。トライアンドエラーをぐるぐる回すことで、プロジェクトや作業を効率や質を高める(あるいは低下していく)活動になります。ですが、その活動は個人で完結するものではなく、そこからプロセスや結果がチームに影響・貢献し、広がっていきます。ということは、P→D→C→Aのシングルループのその外に2つ目の組織全体ループが存在しているということです。

前述の組織の学習能力で挙げられいた「2.複雑性を理解する」については、この2重のループを用いて自分のチームのシステム(構造)を知ることで、組織開発に大いに活かせると思います。私は組織は構造が7割だと思っています。構造が絡み合った状態の組織では、どんなに「1.志を育成する力」と「3.競争性に対話する力」を育もうと思っても機能しません。そういった意味でも、システム思考とループ図で構造から捉えることは重要だと思います。

 


システムの抵抗とレバレッジポイント

「学習する組織はダブルループ」という話が出ましたが、ダブルループであることによる弊害というものがあります。

まず、組織改革で必ずと言っていいほどぶつかる壁は「メンバーからの反発」だと思います。

ここで重要なことは、変化や行動のパターンに影響を及ぼしているものは「構造(システム)」だということです。

システム思考の重要な原則は、構造がパターンに影響するということであり、構造を変えないまま結果やパターンを変えようと資源や努力を投入しても、システムの抵抗によって結果が相殺されたり、かえって悪化したりしてしまいがちです。つまり、複雑なシステムにおいては、構造そのものを変えない限り、パターンを変えることは難しいのです。

(「「学習する組織」入門」(小田理一郎)P.157)

本書でも「システムの抵抗」という考え方が解説されています。

下記の例は、溜まっている仕事がなぜなぜなくならないかという議題をループ図に起こしているものです。「仕事をこなすことで評価や信頼が上がる」という一見良い事象がループを発生させています。しかし、このループがブーストすればするほど、この方へ依頼される仕事の量は上がっていきます。好循環がバランスを崩すことがループ図を描くとよくわかります。

では、この課題をどう解決するか。一定内の仕事は業務時間内に終わるでしょうが、終わらなかった業務が消えるわけではありません。そのため、一般的には残業や休日出勤といったプライベート時間の投入により残務消化していくことになります。しかし、時間は有限ですし、法令の問題や体調面もあるため限界が訪れます。すると、そこからまた仕事が溜まっていくということになりますので、システムの抵抗ループが仕事を依頼されるというループをストップさせる形になります。

(参照:「「学習する組織」入門」(小田理一郎)P.153 を基に作成)

 

ということで、組織の改革には構造(システム)へのアプローチが必要であり、システム思考とループ図が役立つことが理解できます。

そして、もう一つ重要な考えは、レバレッジポイントです。

レバレッジポイントとは、組織改革のてこ入れ箇所で、まさにてこの原理(レバレッジ)の力点のような部分だと思います。できる限り小さな力を力点に送り、作用点に最大の効果発揮させるということです。本書では、レバレッジポイントの探し方として下記が掛かれています。

1.物理的な構造(ストック、フロー、リードタイム、バッファなど)

2.各ループの相対的な強さ

3.情報の流れの構造(誰が、いつ、どの情報にアクセスできるのか)

4.制度上の構造(目標、ルール、インセンティブ、罰則など)

5.組織に所属するメンバーの心情(メンタルモデル)

(参照:「学習する組織」入門(小田理一郎)P.160~162)

ということは、組織開発をする上で、上記5つについて分析しなくてはいけません。ずれたレバレッジポイントに対して施策を実施してしまうと、大きな労力を使うとともにメンバーからの信頼を失ってしまうことと思います。

 

以上、私が本書を読んでみて勉強になった点や気になる点をまとめてみました。

学習する組織の要件である「1.志を育成する力」「2.複雑性を理解する力」「3.競争性に対話する力」、これら3つの要素は椅子の脚に例えられており、一つでも欠けると椅子として立たせることができないと本書に書かれています。私も組織は構造で決まるという考えですので、今回重点的に取り上げたシステム思考とループ図は構造分析に非常に有効だと感じました。

組織の構成メンバーが増えるほど、ループする事象も増えていきます。本書を読んで感じるのは、「学習する組織」はシンプルな構造の中で生まれるものだと思いました。そのため、複雑な事情を持つ企業トップや組織リーダーは、それらを紐解き、整理することが今後ますます求められていくことと思います。

 

書籍紹介(ハイアウトプットマネジメント)

<書籍情報>

■書名:HIGH OUTPUT MANAGEMENT

■著者:アンドリュー・S・グローブ

■出版社:日経BP社

■どんな人向けか:ミドルマネージャーのための本。マネージャー業の本質を知りたい方、次世代リーダー育成の方向性が分からない方

 


ミドルマネージャーというカオス処理部隊

ここ10年ほどでマネージャーというポジションの重要性が増しました。

長時間残業が当たり前だった日本企業が、この10年で業務効率化を求められ、短時間で効率的に働くことが求められています。さらに、転職の活性化によりいつ会社を離れるかわからないメンバーをマネジメントする必要性も高まっています。業務や人員の変化が目まぐるしい時代において、組織風土を作るのも業績を上げるのも離職率を防止するのも小さなチームに託されるようになりました。

つまり、それらの責任はすべてマネージャーに押しかかっているということです。

私のイメージですが、「カオスな状況をミドルマネージャーというフィルターで濾し、部下に綺麗な状態で提供する」ことを求められているように感じます。まさに、カオス処理部隊。

この本では、カオスな状況に先頭を切って対処しなければいけなくなったミドルマネージャーに、秩序をもって無秩序を制するやり方を提示してくれています。

著者はこの状況をこう説明しています。

「無秩序(カオス)に対する、より高度の受容力と許容性」を身に付けなければならない。むろん、無秩序をそのまま受け入れてはならない。だから、実際上、周囲の事柄を「秩序立てる」ように推し進めるべく、最善を尽くさねばならない。(「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」(アンドリュー・S・グローブ)P.27)

秩序と無秩序の区分け、これが本書のキーワードです。

 

 

カオスを整理・再構築することがマネージャーの第一歩

前述のとおり、本書の本質は「無秩序(カオス)を受容・許容するために、それ以外のことをなるべく秩序立てていく」ことです。言い換えると、まずはイメージしやすい自分の業務について整理し、標準化していくとこから取り掛かるべきということです。

本書の著者は、インテル社がまだ小さなベンチャー企業だったころに3番目の社員として入社した方です。その後、同社をけん引して今日のグローバル企業にまで発展させてきた人物で、社長も務められた方です。

そのため、本書はチームマネジメントの手法に製造業の生産ノウハウが豊富に詰め込まれています。

 

まずは業務フロー。

具体的な例で説明されており、ゆで卵・ホットコーヒー・バターサンドを提供する架空の「朝食工場」というものがあったとして、どのようにプロセスを組み立てるかを考えることができます。

製造業の生産工程は、学びの宝庫です。労働集約産業、つまり人を投入することで商品に付加価値をつけていき利益を得ている業界は、1秒での処理スピードをあげるために生産性向上が最も大きな命題であり、処理フローに関わる全ての事柄(人・設備・導線・業務の受け渡し・工程など)を日々洗練させています。この考え方がまずインプットできれば、自分のチームの分業の組み立てがいかに取り組まなくてはいけないかわかると思います。

なお、私も「業務の線引きで組織が変わるチームデザイン」というブログ記事を書いていますので、そちらもご参考にされてください。

業務の線引きで組織が変わるチームデザイン

 

次に、部下のアウトプット。

部下のアウトプットもカオス(無秩序)なものであり、そこをある程度予測できる状態まで組み立てることも生産管理のうちの一つであることが分かります。

そのためのツールとして、目標管理・評価制度は非常に有効というわけです。これは部下に対して整理を強いるだけではありません。マネージャーの中でも部下に対する期待やアウトプット予測値を明確に持つことができ、それによって評価が可能となります。

本書でも、下記のように言われています。

査定のむずかしさを弱めるためには、管理・監督者は部下に何を期待するかを事前に自分の心の中で明確にし、それから部下がその期待どおりに実行したかどうかを判断してみることである。考課における最大の問題は、管理者が通常部下に何を期待しているかをはっきり決めていないことである。(「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」(アンドリュー・S・グローブ)P.269 )

部下のアウトプットもマネージャーが避けるカオスのうちの一部です。

これを予測できる範囲で秩序化し、整理するために目標管理制度があるということは、マネージャーは認識されるべきだと思います。

 

 

チームの資源と価値を握るマネージャー

そもそもマネージャーはどういう存在なのか、という問いにも触れておこうと思います。

本書の中では、「マネージャーはチームのCEO」だと繰り返し述べられています。つまり、割り当てられた資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をチーム内であれば自由に使うことができる、一種の経営に近いものであると言えます。

チームをうまく運営できない人が経営層に就くことはできない、一般的に考えても当然だと言えるでしょう。しかし、実際にチームのCEOとして行動している人がどれだけいるか。その時にチームが必要とする資源は流動的です。常にチーム内外にアンテナを張り、チームに有益だと思う資源を提供し、チームをブーストしなくてはいけません。

ここで見落としがちなのは、「マネージャー自身の時間配分」もチーム資源の中に組み込まなくてはいけないことです。

マネージャーの仕事のほとんどは、労働力、金、資本といった経営資源の配分と関係がある。だが、マネージャーが毎日毎日配分する唯一無二の重要な資源は、本人の時間である。原則的に言えば、金や労働力や資本は必ずもっと手に入るが、マネージャー自身の時間は、誰もが絶対に有限な形でしか手に入らない。したがって、その割当てと使用に相当の注意を払わねばならないのである。(「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」(アンドリュー・S・グローブ)P.100,101 )

これは、作業系の業務を全部部下に振って楽になるべきという単純な話ではなく、自分の労働時間をチームの資源として考えるべきということです。そうしてみると、マネージャーが作業をすればするほどチームは外との関わりがなくなり、効率は下がり、取り残されてしまうことが分かると思います。この観点は、私は非常に重要だと思っています。

 

また、マネージャーに求められる存在意義は「付加価値」をつけることだとも著者は言っています。

「付加価値」とは何か。普通の価値ではなく、プラスアルファの価値です。つまり、マネージャーがいることで何かチームにプラスの影響が与えられなくてはいけません。交通整理、方向性の修正、他部署との調整、さらに上層部への掛け合い、チームの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の確保、部下の育成などです。繰り返しになりますが、マネージャー自身が作業することは、何も付加価値にはなりません。

この中で、「部下の育成」は一番のチームへの付加価値です。

マネージャーは何で評価されるのか。チーム(部下)のアウトプットに対する評価だと著者は言います。どういうことか、マネージャーには部下(チーム)の評価以上の評価つけることはできないということです。そのため、マネージャーは部下の育成に力を入れなければなりません。優秀な部下は一握りですし、上長の育成によって成長したわけではないことは一目瞭然です。それ以外の一般的なレベルの部下を育て、アウトプット効率を上げていく。これも非常に生産的な考え方であると言えます。

 

ここまで本書を紹介してきましたが、難しく考えすぎず、まずはチームのために何ができるか考える。業務分担や目標設定など無秩序(カオス)状態の整理してなるべく計画的な流れを作ることと、自分の労働時間の中でチームの付加価値を高める動きを最大に確保することをすれば、自ずと「ハイアウトプットマネジメント」は可能だと言えます。

 

 

書籍紹介(組織デザイン)

<書籍情報>

■書名:組織デザイン

■著者:沼上幹

■出版社:日本経済新聞出版社

■どんな人向けか:組織の骨格を組み立てたい方、組織開発のハード面を学びたい方、分業と調整について学びたい方

 


事業成果を出す者は分業を制する

今回ご紹介する書籍は「組織デザイン」(沼上幹)です。

本屋さんで書籍を探してみると、組織の骨格や構造について端的にまとめられている本が少ないことがわかります(意外とこの分野の研究者が少ないのかもしれません)。そんな中、本書は新書であるにも関わらず組織構造について非常に詳しくまとめられています。本書の内容は、他の「組織論」や「経営論」の本に度々登場し、またか!?というほど引用されています。組織構造の章がまるまる本書の内容だったりするくらい超有名なので、すでにお持ちの方も多いのではないでしょうか。一冊読むだけで組織のハード面について網羅的に学ぶことができますので、組織開発初心者から玄人まで必読の一冊です。

さて、私がこの本を手に取ったきっかけは「組織構造」と「分業」の関連性に気づいたことにあります。現職で一部上場企業に勤めていますが、そこでは数年前から社長肝いりの企画が多数始動していました。社長指針を刷新したり、現場からボトムアップの形で小さな改善を活性化させるような取り組みを導入したりと、経営者が組織を活性化させようとしている雰囲気が社内に広まっていました。これは良い取り組みである一方、社長自身は自分の想いが社員の末端まで行き届いていないことを課題に感じていたはずです。人事として会社全体の組織改編を取り扱う中で、本当に今の組織形態が一番効率の良い形なのだろうか?人事として新しい形を提案できなくてよいのだろうか?と疑問を持つようになりました。

「組織構造」と「分業」は密接に関わっています。しかし、この対応を蔑ろにしているリーダーが意外と多く、チーム成果が出せていない組織ではこのどちらか(もしくは両方)がうまく機能していません。これは大所帯の企業も少人数チーム(私は3人からがチームだと思っています)も本質は同じです。崩れていく組織は布陣が曖昧なのです。なぜ従業員が自分の方針を理解してくれないのか、なぜ従業員は非効率に作業を進めてしまうのか、なぜ従業員同士がすぐもめてしまうのか…実は「組織構造」と「分業」が大混乱している証拠なのです。

最終的に作業や情報が滞りなく組織の末端まで流れていくことがめざすべき形です。そのために経営者やリーダーがやるべきことは何か。まずは「組織の骨格を再設計する」ことです。言い換えると、組織図を描き起こせるようなチームの状態を作ります。これは組織を牛耳る者しか担うことができません。いくらメンバーが組織の形を整理したいと思ってもできないのです。

企業はチームです。事業が伸びている企業は「分業」がうまく機能しています。自然発生的に機能しているのではなく、経営者が分業での成果の出し方を知っているのです。つまり、チームで成果を出す者は「分業」を制していると言えるでしょう。

 


ボトルネック工程を見つけ出せるか

本書は分業の理論的な考え方について学べる良書です。その中で読んでいて感じることは、分業は水のようだということです。作業工程を「フロー」と呼ぶくらいなので、まさに水の流れそのものです。

作業工程もスタート地点からゴール地点へと流れていきます。その過程で、詰まっているところ=一番時間がかかるところがあると途端にフローは滞ります。これをボトルネック工程といいます。皆さんもチームで仕事をする際に、「分担がうまくいかないな」と悩んでしまう箇所はないでしょうか。担当者同士がもめていたり、マンパワーが必要だったり、なぜこの作業をやっているかわからなかったり、そういう箇所や部署はまさにボトルネックなのです。

ボトルネック工程を排除することはできませんので、本書ではボトルネック工程の取り扱い方についても教えてくれています。

 

①ボトルネック作業があまり重要でない作業・部署だった場合 → 作業や存在自体をいかに小さくするか/注力するか/効率化するか

②ボトルネック工程が重要部署・重要作業だった場合 → 周りの作業を効率化し、いかにリソース(時間・優秀人材)を突っ込むことができるか

 

これができるかどうかだけでも組織の動きは全く変わってきます。本書で繰り返し述べられているのは、「ボトルネック工程と非ボトルネック工程を仕分けしてください」ということです。あなたの企業・あなたの組織が抱えている作業や案件を全て棚卸する必要があります。これは、片付けの手法と非常に似ています。片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)さんが提唱されているこんまりメゾッドでは、まず部屋の中央に家の中にあるすべてのものを集めてきて、カテゴリごと(書類・衣服・本・小物など)にどれを残すか選別していくそうです。まさに、工程の棚卸もこの作業と同じことをします。

やり方が分かれば自分で片づけられる人もいれば、片付けコンサルタントに依頼して短時間で一気に片づける人もいます。「組織構造」と「分業」の整理も、短時間で一気に済ませてしまいたい場合は外部へ委託されることをお勧めします。ボトルネック工程が抽出できた後は、リソースの分配まで一気通貫で構築することが可能です。

また、片付けと組織整理の違いは、複数の人や部署が絡み合う点です。自分で決めればよいわけではなく、都度担当者のヒアリングが必要になります。何も聞かずに断捨離されたら現担当者は自分の人格を否定された気持ちになり怒り出す。つまり、気持ちにも配慮しながら進めなくてはいけない非常に繊細な作業です。事業を進めながら組織を整えるのは、難易度がかなり高いことが分かります。

事業が進んでいく中で組織について立ち止まれるか、飛躍するための準備期間を設けられるか。事業の成功は「組織構造」と「分業」を機能させる作業に掛かっている。本書を読んで痛感した気づきでした。

 

 

 

書籍紹介(図解 人材マネジメント入門)

<書籍情報>

■書名:図解人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ

■著者:坪谷邦生

■出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

■どんな人向けか:初めて人事分野を担当される方、人事施策の全体像を知りたい方

 


「人事って何やっているの?」という疑問に打ち勝つ本

人事や組織を勉強している中で、読んだ本についても紹介しようと思います。

今回紹介する本は、

「図解人材マネジメント入門 人事の基礎をゼロからおさえておきたい人のための「理論と実践」100のツボ」です。

人事を始めて11年経ちますが、本書を初めて店頭で手に取った際、この本が入社当時にあったらなあと思いました。どの分野でもそうですが、入社して最初は先輩社員が持っている雑務を振ってもらい、徐々にその業務の一担当となるわけです。しかし、それもまだ「人事」という全体像からすると本当に隅っこの部分を任されているだけであり、それを2年も3年も続けていると「今自分は全体のうちのどの部分を任されているのだろう」「一体いつになったら人事の全体像が分かるようになるのだろう」という暗闇の中を走っているような気分になることと思います。

私の場合は、「人事って何やっているの?」と他部署の同期や先輩から聞かれたときに、答えることができませんでした。私が答えられていたことと言えば、「普段は給与計算をしていて~、」「入退社の対応をしているよ」といった実務レベルの話に過ぎず、聞いてきた方も「ふーん」と興味を失ってしまうのです。しかも、実は労務をやっていたことが後からわかり、当時の私は人事と労務の区別すらついていませんでした。

本書は、そんな悩める人事担当に「人事とはこういうことをやるのだ」という全体像を見せてくれる非常に有効な説明書のようなものだと思います。本で勉強したいけど何から読むべきかわからないという方は本書をお勧めします。また、人事を立ち上げたいと考えている会社の方や人事施策を行いたい経営者の方にとっても、全体観を把握する上でも有効だと思います。

 


人事パーソンとしての設計図を手に入れよう

私は、人事担当になった方には、まず自分が担当する「人事」という領域がどのような要素で構成されているかを把握してもらいたいと考えています。そうすると、「自分が人事パーソンとしてどのように成長していくべきか」という道筋が見えてくることになります。任される業務だけで人事の全てを理解しようとするには何年あっても時間が足りません。そのため、自分が業務で携わっていない部分にどのような学ぶべきことが存在しているかを把握することが重要です。

私も本書をテキストにして社内で勉強会を実施していました。当時のチームは人事経験の浅いメンバーが多く、日々の業務に追われ、「人事とは何をすべきか」などを考えるきっかけもありませんでした。そのようなメンバーにも、本書をテキストにすることで人事の全体像を俯瞰してもらうことができました。

例えば、下記に引用している図ですが、人事の構成要素としてChapter1.人材マネジメントからChapter9.組織開発まで要素分けされています。各要素は相互で関係しており、また人が入社してから退職するまでの期間すべての要素を行き来することで人材資源を活用しています。そのため、どれか一つだけ極めるのではなくすべての要素に精通して初めて人材を扱うことができることが分かります。

さらに、Chapter10.働く人という項目があることもポイントで、雇用している人のキャリアを預かっていることも確認することができます。「人事のお客さんは従業員だからね」と当時の上司からみっちり叩き込まれてきましたが、制度や施策のような抽象的なものと従業員の一人一人のキャリアという具体的なものの双方を考えることも人事の重要な仕事の一つです。

 

引用:「図解 人材マネジメント入門」P.  

引用:「図解 人材マネジメント入門」P.19

 

 


「組織開発」の重要性

Chapterの内容について一つご紹介したいと思います。

Chapter9で解説されている「組織開発」についてです。上記の引用している図を見て頂くとお分かりのように、「組織開発」は全ての人事制度の土台になっています。つまり、組織という土台が機能していないところにいくらピカピカの人事制度を乗せたとしても機能させることができず、組織諸共倒れてしまうということです。

「組織開発って胡散臭いな」と思っている方も多いと思いますし、意外と長年人事に携わっている方でさえもそのように感じるのではないでしょうか。それもそのはず、つい10年くらい前までは、パワーバランス的に企業側(上司)が労働者側よりも強かった印象があります。そのため、放っておいてもメンバーは上司に言われた通りチームのために働きましたし、一部の能力しか持たない人でもチームに貢献している部分があれば、企業側は雇用を継続できる体力もありました。

それが時代が急激に変わり、パワーバランスも変わってきました。転職市場が活発になり始め、労働者側が「この組織から得るものは何もない」「大切に扱われていない」と感じると簡単に離れていくようになりました。一方、企業側は1on1や評価制度のような従業員の積極性を高めるような制度を導入しています。私はここに矛盾が起きているように感じています。本書の一部を引用します。

 

逆に不活性な組織とはどんなものでしょうか?それは固定化した階層組織、型にはまった役割、規則・制度・ルールなどで「管理」された組織です。(「図解 人材マネジメント入門」P.228)

 

要するに、人事制度を導入するというだけでは、組織が「管理」されることを促進してしまっていますので、この「不活性化組織」を作り出してしまうのです。

そこから脱するには、その制度を運用するリーダー側の積極性にかかっています。まるでその制度が存在しないかのように、ナチュラルにチームのことを考え、メンバーと対話ができるようになって初めてメンバーにリーダーの想いが伝わります。そしてメンバー側もこの組織に貢献しようという気持ちが高まり、組織は活性化しだすのです。リーダー開発に力を入れる企業が多いのは、まさにこの考えからです。

人事関係の皆様は本書で人事の役割を学んで頂くなかで、人事の土台は組織開発であるということを意識されてほしいなと思います。著者の坪谷邦生さんが出版されている本書のシリーズで、「組織開発入門」という本もありますので、そちらも今後紹介できればと思います。