事業成果を出す組織を作るのブログ

人事制度の構築に現場見学は必要?

先日、ご支援先の企業様にお願いし、1.5時間ほどかけて現場見学させて頂きました。

当初、企業様側では事業現場の見学は想定されていなかったようで、私からの依頼も少々驚かれていたようでした。

なぜこのようなお願いをしたかと言いますと、私の前職が物流会社だったことが大きいと思います。

入社当時から、「現場に行け」「現場をしっかり見てこい」と何度も上司から言われてました。メーカーのように商品があるわけではなく、サービスや作業工程を売っている事業において現場は非常に重要視されます。そこで発生する作業そのもの(付加価値)が商品で、現場が売上を上げる場所だからです。

そこで繰り広げられている日常は、私たち人事部門が本社ビルの中で一日を終えるのとは全く別の世界があります。人が現場に行かないと終わらない、拘束時間が長い、人と人とが顔を合わせて話さないと解決しないなど、社会行動学の塊のような場所です。

今回の現場見学においても、多くの気づきがありました。

 

事業現場と評価基準

現場見学ではまず人の配置と接点、業務の流れを見ます。

今回の現場は、狭い場所に多くの機械と薬品が配置されていました。人の配置は機械の配置に依存しますから、同じ部署であっても担当する作業機械が違う階にあれば、顔を合わせる機会はぐっと減ります。端らから見ると簡単に作業しているようですが、実は熟練の技が必要な工程ばかりだそうです。そして安全の徹底。機械や薬品による事故や労災と隣り合わせの職場で常に安全意識が要求されるのですが、人間不思議なもので隣に劇薬が置いてあっても慣れてきてしまう。きっと私も1週間と立たずして気の緩みが出てしまうだろうと考えていました。

このような場所で、日々作業をしている従業員の評価基準は何でしょう。

どのような目標を立て、どのように上司と部下が目標達成にむけたコミュニケーションをとればよいでしょうか。一つの工程に一人の作業員ということは、上長と同じ作業場にはいません。その状態でどうやって評価をすればよいでしょうか。

これは、IT企業のように現場を持たない企業でも同じ観点を持つ必要があります。従業員がパソコンに向かって作業するオフィスフロアや会議室が「現場」であり、そこで作業のような付加価値やプロダクトが生まれているのです。

立地、間取り、環境が違えば人と人との連携の仕方が変わります。コミュニケーションの取り方が変わります。情報の伝達方法やスピードが変わります。同業他社で同じ事業をしている企業同士を比較しても、もしくは同じ企業内においても、全く異なる組織運営がなされているという意識を持ちます。

評価基準とは、日々作業している中で出現するコミュニケーションなのだと思います。技能検定のように個人の能力を測る試験は別ですが、基本的には人がいるところに評価基準が存在します。

例えば、管理職の評価基準として「リーダーシップ」や「業務遂行力」を設定したとします。「リーダーシップ」は部下や後輩がいて初めて露見されますし、「業務遂行力」は発注した企業からのニーズを受けて社内の人材リソースに作業を割り振り、最後に統合して納品するのですから何人もの人が絡み合っていることは想像に容易いでしょう。

つまり、事業現場を生で見ることの意義は、どこに人との接点が発生しているのか、調整はしやすい状況なのかを確認することが一番大きな意義だと思います。

 

データで拾えない声による評価基準の研磨

評価基準はどのように決めるのかというと、まず先程例として示した「リーダーシップ」や「業務遂行力」、このような広義の基準(一般的なもの)を選定していきます。一般的な基準をリストからピックアップする時点でオリジナリティが損なわれると怪訝されることもあるかもしれませんが、この時点で実は非常に個性が出ます。事業分野や企業フェーズ、創業者のMVVなど、企業が立っている土台が違うことに気づかされます。

ここまで完了して、次の段階です。いくら一般的に重要だと言われている基準でも、その企業の実務にそぐわないものであっては上手くいきません。「リーダーシップ」が本当に必要な事業なのか、「業務遂行」できる裁量を任せてもらえるのか、現場に敷かれている組織体制と実務の観点を組み込みながら評価基準を設定していきます。

その後、運用検討段階になると、評価基準の定義が広すぎて評価しづらいという声が確実に出てきます。そこから、話し合いを重ねることでさらに定義を狭くし、人によって評価レベルに差がでないようにしていきます。

評価基準の研磨こそが「自社独自の評価基準」への調整作業であり、この作業においてデータのみで結果を提示してしまうコンサルタントが非常に多いと思います。

どの分野であれ、コンサルタントという職種は常に理屈や理論が求められます。「データで語る説得力」を求めて、データをこねくり回して施策を提案してしまう節があります。他社事例を持っているが故に結論ありきでデータを集計していることもあるでしょう。例えば、等級制度に必要な「等級要件」「役職定義」はどの企業でも似通ってきますので、市場全体の統計をもとに設計できるのがコンサルの強みです。

しかし、私たちコンサルタントが本当に語るべきは、自分の嗅覚で嗅ぎ取った「直観」の部分なのだと思います。

私共に連絡頂く以前に、別のコンサルティング会社で人事制度を導入しようとした過去パターンが本当に多くあります。その時の構築プロセスを伺ってみると、構築の段階で「現場の観察」が抜け落ちています。実際にあった事例だと、コンサルタントが従業員サーベイの結果から自社の課題を嫌味のように洗い出し、机上の判断のみで制度を構築してしまったケースも伺ったことがあります。

もしその制度をそのまま運用していたとしたら、確実に失敗していたと思います。

人事制度はあくまでも組織改善のツールです。人事制度を使って改善したい「何か」があるはずです。その「何か」を特定し、その改善にむけたアプローチができる人事制度になるかどうかは、「データで拾えない声」をどれだけ拾い上げているかにかかっています。

そして、またこれが厄介なのですが、自社のみで収集しようして失敗するケースも多くみてきました。働く環境に毎日接している従業員では、直観的に評価基準を炙り出そうとしても当たり前すぎて認識が甘い場合あるからです。プロジェクトメンバーの方の経歴の違いから(現場寄りの方とそうではない方)、現場の解像度にばらつきがあることもあるでしょう。

コンサルタントがプロジェクトに入る最大の利点は、「データで拾えない声」を形にできることです。そして、「データで拾えない声」は現場に眠っている。私は今後も現場観察を重視していきたいと思います。

 

管理職の大降格時代を考える

管理職ポスト保障時代の終焉

先日、日経新聞を読んでいたところ、このような記事を見つけました。

「管理職に大降格時代 スキルないと2軍、でも実はチャンス」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC288QD0Y5A120C2000000/

管理職の大降格時代、なんとも怖ろしいタイトルですが、実際に私も前職では48歳以上の管理職を対象に早期退職制度を実施していましたし、私自身も管理職降格の仕組み作りに携わっています。

10年前と比べて、管理職というポストの在り方が変わったように感じますが、その変遷について追ってみました。


管理職に昇格する=生活の保障だった

大企業では、過去の年功序列体制により、膨らみに膨らんだ管理職のやりくりに頭を悩ませています。

私も前職がプライム一部上場企業でしたので、状況はよくわかります。現在の大企業では、人員の適正構成と一般的に言われているピラミッド型(年齢層が上がるほど役職のポスト数が減る)にならず、管理職よりも一般社員の方が少ないケースも多く見受けられます。一人の一般社員に対して複数の管理職が作業員の取り合いになり、指示があちらこちらから出される。一体だれの指示を聞けばいいのだろう、若手社員の疲弊はもはや当たり前になっています。

日本の管理職が増えてしまった要因として、給与の支給基準が変化したことが挙げられます。

一昔前まで、給与は「生活給」「勤続給」という性質が強くありました。年功序列という考え方はまさに「生活給」をベースに報酬が設計されており、40歳男性であれば家庭があり子どもが2~3人いることを想定します。中学生くらいになり、学費も高くなるころだろう。一般的な生活のロールモデルが描きやすいですし、従業員の大半はそのロールモデルの通りのライフスタイルだったというわけです。

給与が生活費という側面を抱えている以上、会社側にも従業員の生活を保障する責任が発生します。そのため、会社側もよっぽどのことが無い限り、管理職のポストを用意します。そうなると永久的に管理職が増えていくことになりますが、若手が大量に採用できた時代はいくら管理職がいても困らないとも言えました。

毎年大量に入ってくる新人に対して、現在のような手厚いサポートもないため、即戦力になるまで時間が掛かる。管理職が多数いれば、パフォーマンスの上がらない若手を大量に抱えていても部署の実績をあげることができます。日本の新卒一括採用を支えていたのは、一般社員の仕事を一人でかつハイクオリティで対応できる管理職で、その方たちは一定数必要でした。

つまり、この時代の管理職に求められることは、同じ仕事をハイクオリティ(職人的・正確・早い・顔が利くなど)で対応できるようになることだったのです。

 

日本全体での人事異動

上記の日経新聞の記事で述べられている「管理職降格時代」。

生活給としての管理職ポジションは一転し、全員が管理職に就ける時代は終了しました。

現在、人材の価値は転職という名の市場に委ねられています。転職では、個人の持つ「能力」「経験」「役割」が切り売りされ、その希少性・汎用性の高さに比例して需要が増し、高い給与が払われるようになります。会社側は従業員と外部採用候補者のレベルを比べることができる。従業員は、社内ではなく社外の人(他の会社で「能力」「経験」「役割」を身に付けた人)と戦うことを余儀なくされているのです。

日経の記事によると、大降格時代は日本にとって「チャンス」だと言います。

それは、中小企業やスタートアップなど、ここから拡大・発展しなければならない企業において、大企業で培われた高い専門性は喉から手が出るほど欲しいからです。大企業で降格になった、あるいは早期退職に引っかかったからといって知識や経験を腐らせてしまうのは、日本としては非常に痛手です。本人的にも降格してまでも大企業に居続けるより、いっそ環境を変えるチャンスと捉えるほうが良いと記事は述べていました。

私もこの意見には賛成です。労働力がますます減少する中、さらに効率的に生産することを求められる日本にとって、日本全体での人事異動はてこ入れしてでも実施すべきでしょう。

個人の人生を見ても、この日本全体での配置転換の流れに飛び込めた方が幸せなのではないかと思うのです。つまり、今までは一度管理職に上がってしまえば、能力が頭打ちになった人材も窓際族として高給が保証されていたところから、その保証が外され降格・降給が当たり前になるのです。それであれば、同じ規模の給料になることが目に見えているのですから、必要とされる場所へ移った方がよいのではないでしょうか。

私がご支援する中小企業においても、大企業での経験やノウハウを欲していることをひしひしと感じています。(だから私のようなコンサルタントへ発注がある訳です)

例えば、前職が大企業の子会社役員や管理職だった人材が定年後に再雇用先として地元の中小企業へ転職しているケースは本当によく見受けられます。定年前に転職に慣れていた方ばかりではありませんが、自分の知識や技術が活かせる環境に60歳過ぎてから身を投じ、活躍されています。

条件があるとすれば、そのような人たちは自分の培ってきた技術や知識に絶対的な自信があります。そして、その技術や知識を横展開できるように言語化し、マニュアルに落とせるレベルまで標準化されています。理想的なレベルの新しく就職する企業の改善点を見つけ出し、臆せずに行動や発言をされている印象があります。これはおかしいよ、これは変だよ、こういう風にやっていこうよ、と問題提起されています。

あるいは、黙々と個人主義で働くということもできます。大企業に居る限り、どこまで昇進したとしてもマネジメントされる側から逃れることはできません。それが、中小企業へ移ることで自分の作業だけに集中する(個人プレーポジション)で働くこともできます。高い専門性とスキルがあるため、それが許されるのです。また、私は、社長の右腕や二番手ポジションが性に合っている人は意外と多いと思っており、そのような自分に合った働き方も叶うようになるのです。

組織はその大きさや事業のレベルに応じて必要な人材が変わっていきます。日本という国を大きな企業と見立てた時に、今まではマンパワーをかけて成長してきた、それがここからは少数精鋭で利益を出していかなくてはいけなくなるのですから、いかに国全体で効率のよい人員配置できるかがカギとなります。今まで大企業が手放さなかった人材が、この大降格時代に放出されるようになったこの状況を「大降格時代」と悲観せず、日本の人事異動として捉えられたらより発展するだろうと思います。

トップダウンとボトムアップ

トップダウンvsボトムアップの論争

人事制度を導入するために組織診断をしていると、トップダウンとボトムアップという話にぶつかります。どちらが良いというわけではなく、必要な部分に必要な手法を使えているかという話だと思ったので、まとめました。

 


実は、中小企業はトップダウン組織が作りにくい

ネガティブな社風として、従業員様から「当社はトップダウンだ」というお話をよく伺います。

確かに中小企業では社長と従業員の距離が近いため、心理的にそのように感じることは多いかもしれません。社長の指示がダイレクトに個人に向かうことは大企業ではあり得ないことで、良くも悪くも受け取る側からしてみると言葉の重みは大きいものがあるでしょう。

また、一挙手一投足社長に見られてしまうわけですから、それでは従業員が息苦しくなるのは非常に理解できます。特にコア事業は社長の一番の得意分野であることが多く、社長の考えが色濃く反映されることは間違いないです。社長がいちいち口を出してくる、新しい取り組みを潰されるといった状況に従業員が疲弊してしまいます。

しかし、大企業と比べると、実は中小企業は現場の裁量が大きいように思います。小さい会社では、担当範囲を細分化することができないため、社員一人一人がある程度広い範囲を担当しなければなりません。社長も現場のことは意外と分からないことも多く、そうなると一定の権限の範囲内であれば、自由に動き回ることができます。

一方、上場企業は社長を中枢とした強烈なトップダウンです。各部署における業績ノルマの達成/未達成は厳しく評価され、優秀かどうかは噂が一気に回ります。加えて、フジテレビの件が分かりやすいですが出世競争や社内政治も蔓延し、トップの意見を確実に実行できる人材(イエスマン)が権力を握っていきます。人事権も社長にあるため、意向に沿わない人は異動させることで辞めさせずともその人材を組織から外す(いわゆる左遷)ことが可能です。

その点、中小企業においてはブラック企業を除き、ここまでの強烈なトップダウン組織は作りにくいと思います。まず、部署が少ないので人事権が効きにくく左遷ができない。さらに、現場は従業員が取り仕切っているため辞められては困る。無意識だとは思いますが、それを逆手に取った方はある場面では社長よりも発言権が大きくなったりもしているとお見受けしています。

中小企業の社長の皆さんは、会社を大きくしたいと考えていると思います。それはつまり、組織をさらにトップダウンに変えて締めていくという意味になります。しかし、従業員は現レベルでさえもトップダウンに対してアレルギーがある。ここをいかにして突破できるかを考えていく必要があります。

 


ボトムアップは自然発生的には生まれない

従業員の方から「当社はトップダウンだ」というお声と同じくらい聞かれるのは、社長様からの「当社はボトムアップは無理だ」というお話です。

社長様の立場からしてみると、「自分が指示をしないと従業員は何も動かない」と感じられています。ある意味その通りで、企業は社長が一番熱量を持っている組織体です。そのため、理論上は社長の期待以上に働いてくれる人はいないことになります。

しかし、ここで問題なのは、社長の立場からは現場が見えなくなっていることです。立場が上がると経営的視野が広がり、未来の事業計画を立てることになります。と同時に、視座が高くなった分、足元が見えなくなるのです。

例えば、なぜ退職者が止まらないのか、自分の方針がなぜ末端まで届かないのか、なぜ組織がまとまっている感覚がないのか。何か組織内に問題があるはずだが、同じフロアにいる従業員の様子が社長からは分からないというわけです。

それは、トップダウンオンリーで閉塞的な雰囲気になってしまっていることが一因かもしれません。組織拡大のためにさらなるトップダウン体制を作っていくことは必要ですが、ボトムアップ要素を入れておかないと組織は息ができなくなり、従業員は働く場所としてその企業を選ばなくなります。

ボトムアップは自然発生的には生まれません。そのため、意図的にボトムアップを取り入れる必要があります。ボトムアップが根付くことで社風も変えていくことができます。

 


ボトムアップが成立する条件

では、ボトムアップはどのような条件で成り立つのか。

私は「①トップからの問いかけ」と「②汲み上げる場の設定」が条件になると思います。

様々な組織を見てきましたが、①②それぞれ実施されているケースは実は非常に稀です。①の「トップ」とは社長様だけを指しているのではありません。リーダー(管理職)→メンバー、さらに下位組織でも主任・係長→後輩も当てはまります。小さなユニットになっても同じように①②が実施できて初めてボトムアップが可能な組織と言えます。

そして、この①②を作るところからボトムアップでやらせようとするリーダーが非常に多いですが、①②を下位の立場の者が作ることはできません。

ボトムアップはトップの熱量から始まります。トップが本気で皆さんの意見を聞きたいかどうか、従業員には透けて見えてしまいます。ボトムアップが自然発生的に生まれない要因はまさにこれで、求めるだけではだめだということです。

言い換えれば、トップの熱量があればボトムアップの組織に変えていくことは可能で、上手くできていない場合はこの「①トップからの問いかけ」と「②汲み上げる場の設定」を改善すればよいだけだと思います。ここは研修や伴走次第でいくらでも実施を促すことができます。

そして、人事制度(特に目標管理による評価制度)はこのボトムアップのネックになる条件を乗り越える一番よい手法です。人事制度を導入することで、①②が組織のルーティンワークとして入り込み、コミュニケーションの量は格段にアップします。(ただし、そこに質が伴うかはリーダー教育が必要です)

現在ご支援中の企業様では、評価のみならず組織体制を整えるための人事制度を導入すべく伴走しております。

 

 

書籍紹介(ハイアウトプットマネジメント)

<書籍情報>

■書名:HIGH OUTPUT MANAGEMENT

■著者:アンドリュー・S・グローブ

■出版社:日経BP社

■どんな人向けか:ミドルマネージャーのための本。マネージャー業の本質を知りたい方、次世代リーダー育成の方向性が分からない方

 


ミドルマネージャーというカオス処理部隊

ここ10年ほどでマネージャーというポジションの重要性が増しました。

長時間残業が当たり前だった日本企業が、この10年で業務効率化を求められ、短時間で効率的に働くことが求められています。さらに、転職の活性化によりいつ会社を離れるかわからないメンバーをマネジメントする必要性も高まっています。業務や人員の変化が目まぐるしい時代において、組織風土を作るのも業績を上げるのも離職率を防止するのも小さなチームに託されるようになりました。

つまり、それらの責任はすべてマネージャーに押しかかっているということです。

私のイメージですが、「カオスな状況をミドルマネージャーというフィルターで濾し、部下に綺麗な状態で提供する」ことを求められているように感じます。まさに、カオス処理部隊。

この本では、カオスな状況に先頭を切って対処しなければいけなくなったミドルマネージャーに、秩序をもって無秩序を制するやり方を提示してくれています。

著者はこの状況をこう説明しています。

「無秩序(カオス)に対する、より高度の受容力と許容性」を身に付けなければならない。むろん、無秩序をそのまま受け入れてはならない。だから、実際上、周囲の事柄を「秩序立てる」ように推し進めるべく、最善を尽くさねばならない。(「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」(アンドリュー・S・グローブ)P.27)

秩序と無秩序の区分け、これが本書のキーワードです。

 

 

カオスを整理・再構築することがマネージャーの第一歩

前述のとおり、本書の本質は「無秩序(カオス)を受容・許容するために、それ以外のことをなるべく秩序立てていく」ことです。言い換えると、まずはイメージしやすい自分の業務について整理し、標準化していくとこから取り掛かるべきということです。

本書の著者は、インテル社がまだ小さなベンチャー企業だったころに3番目の社員として入社した方です。その後、同社をけん引して今日のグローバル企業にまで発展させてきた人物で、社長も務められた方です。

そのため、本書はチームマネジメントの手法に製造業の生産ノウハウが豊富に詰め込まれています。

 

まずは業務フロー。

具体的な例で説明されており、ゆで卵・ホットコーヒー・バターサンドを提供する架空の「朝食工場」というものがあったとして、どのようにプロセスを組み立てるかを考えることができます。

製造業の生産工程は、学びの宝庫です。労働集約産業、つまり人を投入することで商品に付加価値をつけていき利益を得ている業界は、1秒での処理スピードをあげるために生産性向上が最も大きな命題であり、処理フローに関わる全ての事柄(人・設備・導線・業務の受け渡し・工程など)を日々洗練させています。この考え方がまずインプットできれば、自分のチームの分業の組み立てがいかに取り組まなくてはいけないかわかると思います。

なお、私も「業務の線引きで組織が変わるチームデザイン」というブログ記事を書いていますので、そちらもご参考にされてください。

業務の線引きで組織が変わるチームデザイン

 

次に、部下のアウトプット。

部下のアウトプットもカオス(無秩序)なものであり、そこをある程度予測できる状態まで組み立てることも生産管理のうちの一つであることが分かります。

そのためのツールとして、目標管理・評価制度は非常に有効というわけです。これは部下に対して整理を強いるだけではありません。マネージャーの中でも部下に対する期待やアウトプット予測値を明確に持つことができ、それによって評価が可能となります。

本書でも、下記のように言われています。

査定のむずかしさを弱めるためには、管理・監督者は部下に何を期待するかを事前に自分の心の中で明確にし、それから部下がその期待どおりに実行したかどうかを判断してみることである。考課における最大の問題は、管理者が通常部下に何を期待しているかをはっきり決めていないことである。(「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」(アンドリュー・S・グローブ)P.269 )

部下のアウトプットもマネージャーが避けるカオスのうちの一部です。

これを予測できる範囲で秩序化し、整理するために目標管理制度があるということは、マネージャーは認識されるべきだと思います。

 

 

チームの資源と価値を握るマネージャー

そもそもマネージャーはどういう存在なのか、という問いにも触れておこうと思います。

本書の中では、「マネージャーはチームのCEO」だと繰り返し述べられています。つまり、割り当てられた資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をチーム内であれば自由に使うことができる、一種の経営に近いものであると言えます。

チームをうまく運営できない人が経営層に就くことはできない、一般的に考えても当然だと言えるでしょう。しかし、実際にチームのCEOとして行動している人がどれだけいるか。その時にチームが必要とする資源は流動的です。常にチーム内外にアンテナを張り、チームに有益だと思う資源を提供し、チームをブーストしなくてはいけません。

ここで見落としがちなのは、「マネージャー自身の時間配分」もチーム資源の中に組み込まなくてはいけないことです。

マネージャーの仕事のほとんどは、労働力、金、資本といった経営資源の配分と関係がある。だが、マネージャーが毎日毎日配分する唯一無二の重要な資源は、本人の時間である。原則的に言えば、金や労働力や資本は必ずもっと手に入るが、マネージャー自身の時間は、誰もが絶対に有限な形でしか手に入らない。したがって、その割当てと使用に相当の注意を払わねばならないのである。(「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」(アンドリュー・S・グローブ)P.100,101 )

これは、作業系の業務を全部部下に振って楽になるべきという単純な話ではなく、自分の労働時間をチームの資源として考えるべきということです。そうしてみると、マネージャーが作業をすればするほどチームは外との関わりがなくなり、効率は下がり、取り残されてしまうことが分かると思います。この観点は、私は非常に重要だと思っています。

 

また、マネージャーに求められる存在意義は「付加価値」をつけることだとも著者は言っています。

「付加価値」とは何か。普通の価値ではなく、プラスアルファの価値です。つまり、マネージャーがいることで何かチームにプラスの影響が与えられなくてはいけません。交通整理、方向性の修正、他部署との調整、さらに上層部への掛け合い、チームの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の確保、部下の育成などです。繰り返しになりますが、マネージャー自身が作業することは、何も付加価値にはなりません。

この中で、「部下の育成」は一番のチームへの付加価値です。

マネージャーは何で評価されるのか。チーム(部下)のアウトプットに対する評価だと著者は言います。どういうことか、マネージャーには部下(チーム)の評価以上の評価つけることはできないということです。そのため、マネージャーは部下の育成に力を入れなければなりません。優秀な部下は一握りですし、上長の育成によって成長したわけではないことは一目瞭然です。それ以外の一般的なレベルの部下を育て、アウトプット効率を上げていく。これも非常に生産的な考え方であると言えます。

 

ここまで本書を紹介してきましたが、難しく考えすぎず、まずはチームのために何ができるか考える。業務分担や目標設定など無秩序(カオス)状態の整理してなるべく計画的な流れを作ることと、自分の労働時間の中でチームの付加価値を高める動きを最大に確保することをすれば、自ずと「ハイアウトプットマネジメント」は可能だと言えます。

 

 

人事制度=コピペなのか

本来、人事制度は独自のものなはず

当社にご依頼頂くご相談事項で必ずと言っていいほど言われるのが、「コピペではない、独自の人事制度を作ってほしい」という内容です。

私の感覚では、人事制度はその企業独自のものであるのは当たり前だと思っています。それは、その企業の事業・風土・従業員を理解しないとそもそも制度を作ることができないからです。

にもかかわらず、どうして「当社独自の制度を作りたい」というニーズがあるのか。

それは、「人事制度=コピペ」というイメージを作っている何か要因があるのではないかなと感じています。ケースとして、大きく2つあります。

 

過去に外部に依頼して人事制度導入を失敗した場合

企業様にご提案している中で、意外にも多くの企業が人事制度導入に踏み切ったことがあるんだなと感じます。これは、企業規模に関わらず、小さい企業様でも聞かれる話です。

そして、その後運用をやめてしまったケースのほとんどが、過去に外部委託して人事制度を作ってもらっていました。外部とは、別の人事コンサル会社、県や区が派遣している専門家、社労士、キャリアアドバイザーなどです。

そういったところでは、恐らくですが「○○メゾッド」や「●●人事制度」のような一律の構築方法があり、コンサル内で使っている手法やフォーマットを判を押したように使用しているでのはないかなと推測されます。

これはコンサル側の視点に立つと合理的です。人事コンサルタントを養成するのは非常に難しく、人事や事業会社を経験していない新米コンサルタントでも標準化された手法を使えば一定の質を担保できるように開発されたものでしょう。

しかし、このやり方は柔軟性がないのが一番のデメリットです。

メゾッドやフォーマット自体は悪いわけではなく、これを使うコンサルタントが人事制度の余白をどこまで理解しているかによって完成形が変わってしまいます。もし、一点突破でごり押ししてくる方だと、たちまちコピペの人事制度が出来上がってしまいます。

私はコンサルタントの経験は重要だと思っています。それは、人事制度の「構築経験」ではなく、「運用経験」があるかが見極めポイントです。人事部に所属し、運用を苦慮した経験があるかどうか。コンサル経験だけでは、人事制度が自社にフィットしていない影響や従業員からの不満がイメージできず、調整を進めることが難しいと考えています。

「早い・安い・簡単」を打ち出していたり、制度の効果を最初から打ち出している(自己実現、自律分散型など)専門家は、少しメゾッドがきっちり決まっているだろうなという印象を受けます。

 

企業様が独自の人事制度構築の難しさをイメージできていない場合

これは一度だけ私が体験したケースです。

「独自の制度を作る」ことについては、企業様と私が対話を重ねながら制度の細かい部分を設計していくになるので、企業様の方でも相当な努力が必要です。人事制度のことを勉強し、そこから派生してどのような人事課題に影響が及ぶかをイメージし、自社を分析し、落としどころを探ることに悩むことになりますので、多くの時間を費やして頂くことになります。

多くの企業様はこれを理解してくださり、社長様もしくはご担当者様が人事制度に関して積極的に学んでくださいます。こちらが驚くようなところまで知識がある方もいらっしゃり、そうするとさらに込み入ったレベルの高い話ができるようになってきますので、完成した人事制度の精度が高いと感じています。

そして、私の方は企業様への知識提供や手法提案を全力で実施させて頂きます。人事制度について基礎知識を学びたい社長様には勉強会を開催したり、関係者の方々にも実際に他者事案を見て頂きながらお話したこともあります。

ところが、中にはこの前提知識の底上げの時間を全く必要ないとしてしまう企業様がありました。

また、私のコンサルディングでは、社長様の方針と従業員の方の状況を把握するために準備期間に2~3カ月頂いていますが、その組織分析時間も不可とされました。学んだり、分析したりする時間がないからコンサルに依頼したんだ、ということでしょう。

このようなケースでは、「独自の人事制度は構築できませんよ」というお話をさせて頂きます。人事制度の手間・工数を丸投げしたい場合は、ある程度型にはまった人事制度を導入されることをお勧めします。コピペの人事制度自体が悪いわけではなく、シンプル簡単なものが多いですし、その方が費用対効果の満足度は上がるように思います。

 

人事制度を構築した人の本気度が高くないと独自の人事制度は作れない

コンサルディングとは、企業の風土や状況を初見の者が社外から入ってくるため、双方の努力が必要です。その意識がある企業様では、組織を変えたい本気度が高く、人事制度プロジェクトは必ず成功しています。そのような企業様のために動いていきたいと日々実感しています。


IGNITE HORIZON(イグナイト ホライズン)

50人以下の会社やチームのための成果を出す人事コンサルタント|IGNITE HORIZON
メールアドレス:info@ignite-horizon.com
無料相談承ります。
人事・総務でお悩みなことが御座いましたら、HP内お問合せフォームもしくは上記メールアドレスからお気軽にご連絡ください

物的投資と人的投資

こんにちは、50人以下の中小企業にむけた人事・組織コンサルティング会社「IGNITE HORIZON」です。

先日、商工会議所が主催する「日本経済が抱える課題2025 人手不足経済を紐解き考える課題と展望」というセミナーを受講してきました。

人事として非常に参考になるお話でしたので、備忘録としてのまとめを共有したいと思います。

東京大学大学院 柳川範之先生のご講和でした


人口減少・労働力減少は避けられない

日本の人口減少が避けられないことは、日々のニュース報道などを見ると一目瞭然でしょう。50年後には8700万人まで人口が減少してしまうという統計も出ているほど、日本という国の規模は縮小しています。

それに伴い、労働力人口も大幅に減少しています。特に若手の採用は難しくなるでしょう。ということは、現在のビジネスモデルを顧みるタイミングが来ているということです。

例えば、製造業で若手を採用し、長年かけて熟練工に育てていく+その方たちが長年勤めてくれることで技術力を担保してきた企業があったとします。しかし、今後若手層が採用できなくなるということは、その企業のヒトを使ったビジネスモデルは破綻します。その崖っぷちギリギリのところに我々は位置しているのです。

思うに、人事施策の大半が波が来る予兆があると思うのです。社会の動向や事業現場で起きている課題を捉えていれば肌感覚として感じる方も多いはずです。

しかし、賃上げのように「急に大波が来た、困っている」と中小企業が報道されてしまうのは、対策のタイミングを見過ごしてしまったと言わざるを得ないでしょう。社会変化の前兆は、経営者であれば必ず気付く形で目の前に訪れているのです。


「ヒト」が企業の資産になる時代に

日本の人口減少、労働力減少が目前に迫る中で、人事界隈では人的資本経営が唱えられるようになりました。「ヒト」を持つことが企業の資産となる時代ということです。

これは、ビジネスに必要なもの「モノ・カネ・ヒト・情報」の4つの分野が全て資産になるという考え方で、「ヒト」を物のように扱う印象もあり、資産価値として考えるのは今までは嫌厭されていたのではないかと思います。

また、「ヒト」の資産は金額換算が難しいため、財務諸表に現れない指標になります。にもかかわらず、業績に直結している。同じ業界でも企業風土や組織開発、人材育成の力の入れ具合の差が業績に見事に反映しています。今後、「ヒト」資産の数値化はさらに加速していくでしょう。

「ヒト」が資産になるということは、日本全体で牌を奪い合うということです。このセミナーの中では「知恵の奪い合い」と表現されていました。人的資産の源泉は「知恵」であることを思い知らされます。

新卒市場、転職市場がこれだけ活性化されている中で、従業員側も自分が株のように市場商品であることに気付いてしまいました。「私って、転職市場に出れば売れるんだ」。その価値が従業員側に明るみになってしまった以上、企業と従業員は対等関係になったと認めざるを得ないということです。

従って、「事業成長の見込みが人的資産の投資に現れているか」が今後重要指数になります。人事施策の重要度が急上昇するわけですね。

 


物的資産と同じような投資プロセスを踏むべき

以上のことを踏まえ、本セミナーで一番勉強になった考え方は、物的投資と人的投資を比較し、「物的投資と同じように投資プロセスを踏むべきだ」ということでした。

例えば、ラーメン屋を経営しているとして、ラーメン屋が事業成長するためには新店舗を出店します。新店舗出店のためには、賃貸や設備の準備といった物的投資の必要があります。

この際、仮に現在の店舗で余っている机やいすがあったり、鍋やおたまがあるよ、ということであれば、新しく購入する必要はありません。つまり、現在自分が持っている資産を棚卸して、必要なものを考えるプロセスを踏みます。

これが人にも同じことが言えるという考え方です。タレントマネジメントも同じ考え方で、現在企業が持っている人員の能力やスキル、経験を棚卸しなければどのような組織を作るか戦略は立てられません。

私もこのタレントマネジメントの経験はありますが、大企業で全員がパソコンを持ち、自分のスキルを把握しているような状況でも情報収集は非常に大変でした。(結局終わらなかった)

一番大変だったのは、回収した情報をどのように保管・アップデートしていくかで、これはタレントマネジメントシステムを使ったとしても使い手がこの情報の貴重性・資産価値を感じていなければ、眠れる資産となってしまします。

きっと多くの企業で「ヒト」の情報は回収されず、回収しても投資計画に使われることも無く、お蔵入りしてしまっているでしょう。これが非常にもったいないと私は思うのです。情報を活用して採用計画を立て、従業員のキャリア計画を立てる。これが人的資本の投資計画です。

いつかその手助けになる施策を日本に浸透させたい。そのためにまずは目の前の中小企業様に対して真摯に資本の把握と計画立案をしていこうと考えたセミナーでした。

 

 

3年後の組織を本気で考えられるか

本当に御社を大きくしたいかを問う

事業が大きくなり、会社として成長している中小企業においては、組織体制の悩みが出てきます。最近では、親御様から社長を引き受けた次代の若手社長様が、組織体制をどうしようかと組織体制にメスを入れようとしているところに立ち会う機会が何回かありました。

そこで問われるのは、「本気で組織を大きくする気がありますか」ということです。

先代から事業を引き継がれている社長様は、先代とともに戦ってくれた戦友のような従業員に頭が上がりません。自分よりも事業のことを知っていて、自分よりも年齢も社会人経験もあるとくれば、それはそのような従業員を立てなくてはいけないとなるでしょう。その方たちと一緒にこのままやっていくのも一つの正解だと思います。この会社を選んでくれた従業員の働く場を作り、動きやすい規模・スピード・温度感で進めていくことだって、唯一無二の使命なはずです。

もし、そこから大きく方向転換し、事業や企業を大きくしたいと思うのであれば、社長様本人の意志が必要です。「コンサルが入って心に火が付いた」と言われたら私としてはコンサル冥利に尽きますが、その企業のことを考えるとそれでは継続できず、社長の内側から「企業を大きくしたい」という気持ちがあって初めて人事・組織コンサルが始まると思っています。

そのためにもミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を節目節目で見直すことが重要で、自分の情熱の矛先がどこにあるのか見直しましょう。当社でもMVVの策定のご支援をしていますので、自身の方向性を壁打ちしながらじっくり向き合いたい場合はご連絡ください。

ミッション・ビジョン・バリューの策定

 


めざすべきは3年後の組織

社長の気持ちが固まったら、どのような組織をめざしたいか(事業がどのように大きくなるか)の予想を立てていきます。

大企業では、人員数計画予算、人件費予算を1年に一度立て、また昨年度立てた予算と実推との乖離を確認することをします。中小企業やスタートアップでは予算編成ほどカッチリしなくてもよいかとは思いますが、どのペースで組織を大きくしていくかを検討するために、1年後と言わないまでも3年後の見込みを見ながら組織図を描いていきます。

3年後の組織図を一度描いてみるとわかりますが、現在の組織からの変更が出てくるパターンがほとんどです。新規事業を立ち上げるために誰を選抜するか、その穴をどのように埋めるか。もしかしたら組織を解体させなくてはいけないかもしれませんし、あるいは現在起業を支えてくれているメンバーを横によける必要もでてくるかもしれないのです。現実として組織図に起こしてみると、本当に自分が求める姿なのかがわかりますのでぜひやってみてほしいと思います。

組織を大きく変えるパターンとしては、やはり階層化でしょう。社長直轄で従業員を見ているような組織であれば、リーダー(管理職)ポジションをいれましょう。管理職がすでにいる企業においては、その管理職たちが名ばかりではなく実際部下の面倒を見るように小さなチームを作ります。具体的には、育成と評価の責任をリーダーに付与し、指示系統を整えていきます。リーダーたちもすぐに上手くはできませんから、何度も教育をしたり評価会議の中で査定の不備を確認するなど、何回か実施することで感覚を掴んでいきます。

ここまで読んで頂くとわかる通り、組織図上でパズルのように動かすだけではなく、具体的に「人」に対して実行すべき施策が浮き上がります。リーダーに任用したい人に対してリーダー教育をしたり、新事業に入ってほしい人材に学ぶ場を提供するなど、より3年後の企業規模や人員対応が鮮明になります。私の支援では、この3年後の組織について、図と言語にしながら固めていき、人事施策も明確にしていきます。

 

 


何となく人事制度を入れない

「本気で組織を大きくする気がありますか」

私がこれを問うているのは、何となく人事制度を導入してほしくないからです。

人事制度はあくまでもツールです。人事制度を入れるだけで従業員が自発的に動き出す、会社がしっかりしているように見てもらえる、評価が平等になる…人事制度は一気に組織改善できるような万能なものでは残念ながらありません。導入したら、まずは作業工数が増えてしまったという不満が大きくなるのみでしょう。

手間をかけてでも導入する意志はありますか。これはまさに、「本気で組織を大きくする気がありますか」という問いと同義だと思います。組織を大きくしたい。事業を拡大したい。社長様は常にその考えがあると思いますが、一つ上のステージに行くことの恐怖もあると思います。現在の組織が壊れてしまうかもしれない、従業員からの反発を受けなくてはいけない、退職者がでるかもしれない、そこへの改革を本気で望むならば、人事制度を導入する絶好のタイミングです。

人事制度の効果が出るのは早くても5年後、もっと長期的に見れば20年はかかると思います。それは、人事制度が入っていることが当たり前の世代が評価者側になって初めて制度の本領発揮になります。人を評価するのは、自分が評価されたことがないと難しいからです。つまり、20年後の御社のために今行動できますか、ということです。少し悠長な話になってしまいましたが、20年と言わず、まずは3年後。現在の組織が3年後に変わることに対して取り組みたい企業様がいらっしゃいましたら、本気で支援いたしますのでお気軽にご連絡ください。

 

リーダー育成失敗の本質

コロコロ変わるリーダー像

とある企業様に対して、リーダー教育のためのご提案をしています。そちらの企業様は、近年組織が100人規模に急拡大したことから、組織を盤石にするために大きな予算を割いてリーダー層に対して教育投資をされているとのことです。地方中小企業ですが、ここまでリーダー育成に投資しているのは非常に素晴らしい取り組みで、リーダー育成の難しさをよく理解されているんだなと思いました。

どこの企業でもリーダー育成に失敗された経験はあるかと思います。もしかしたら、ずっと失敗が続いてしまっていることもあるかもしれません。リーダー育成をしたいと考えた時、真っ先に手を伸ばしてしまうのが「研修」かと思います。リーダー層を集め、外部から講師を招き、1日かけた研修を半年に1回行う。定期的な意識付けにはなりますし、現場から離れて現在の自分のチームを見つめなおす時間を設けることは無駄ではないでしょう。

ただし、育成を本気で成功させたいと考えるならば、順番を考える必要があります。下記の図で示すとおり、リーダー育成はステップをすっ飛ばすとうまくいきません。まず、経営層が「どのようなリーダーを求めてるのか」を定義付けし、経営層や育成実行部隊の中で共通認識として持つところから始まります。実は、これが年によってコロコロ変わってしまい、選抜者が毎年のように変わってしまう企業も多数見受けられます。

リーダー育成失敗の本質の一つ目はここにあります。「経営層が数年我慢してでも育成したいリーダー像」を共通認識を持つ必要があります。具体的に人を名指ししてもいいでしょうし、要件をあげてもいいと思います。御社に一番マッチするリーダーの要件、他社の人材との差別化要件を経営層が自覚するということです。

ファーストステップの要件定義は、最初にがっちり固めてしまうのではなく、走り出してから少しずつ修正をかけてもいいと思っています。また、人材育成は長期戦ですので、社会的なスタンダードが途中で変わってしまうということもあるでしょう。実際、リーダーに求められる資質は変化しています。がむしゃらに日本人が働いていた時代は「業績達成」「予算達成」を求められ、効率が重要視されていました。一方的な部下への働きかけです。現在ももちろん売上向上はリーダーの責任ではありますが、それ以外にも部下との信頼関係構築・コミュニケーション・人材開発など、チームマネジメントが求められてきていると実感します。

 


リーダーになれる人材は限られている

リーダー育成失敗の本質二つ目は、リーダー候補人材のポテンシャルの見誤りです。

今までの日本社会は、適性がない人でも年功序列という形で何らかのポジションを与えてきました。適性よりもその会社に深く根差し、その会社について十分理解していることに重きを置いたのです。年功序列・勤続主義の昇給は労働者が勝ち取った権利であり、これに関しては日本に誇る素晴らしい制度であったと思います。しかし、現代は先述のとおりマネジメントの難易度が上がっている。業績を追いかけるだけのリーダーではチームは回らなくなってしまっています。

私の個人的な意見ですが、リーダーに向いているかどうかは入社時点である程度決まっていると思います。それは、性格面の影響が非常に強いからです。例えば、発言しない大人しいタイプの人がミーティングを引っ張っていけるようになるにはかなり時間がかかります。そもそも本人のやる気の要素も大きく、よく一般的に言われるように人を変えるのは非常に難しい。リーダーシップを渇望していない方にトレーニングをしても効果は薄いと思います。

そのため、リーダーになれる人材(どの程度のレベルのリーダーになれるか)を見極めなくてはいけません。ここで道を誤ってしまうのが、「リーダーに必要な素質」は「優秀な部下である素質」とは若干異なります。「上司の言ったことを正確に実行できる力」と「チームをけん引して目標を達成する力」は実は全く別物です。それは、経営者とNO.2人材の性格が異なることを見ればわかると思います。

しかし、「昇格」というものは現在のリーダーから評価されて初めて候補として名前が挙がります。つまり、「いい部下」が昇格していく仕組みになっています。となると、いつまで経っても参謀タイプとリーダータイプが見分けられません。実は、上位の役職まで上がってしまった人の中にも意外と参謀タイプの方も多く、リーダーシップを部下に発揮するのが苦手な方も見受けられます。

また、部下を評価する際、リーダーは自分と似た人を選びます。自分自身が成功事例ですから、成功事例に則ることは人選以外の場面でもやりがちです。このやり方をやっていると、現在のリーダーの下位互換のような方が選ばれていき、組織に新しい風を吹かせることはできません。VUUCAと呼ばれる先行き不透明なこの時代、現在のリーダーが未来のリーダーの最適解とは限りません。むしろ、現在の会社全体に不足している部分から逃げずに向き合い、補ってくれるようなリーダーを育てていくことをする会社が生き残っていくのでしょう。社外にアセスメント(人材評価・分析)を依頼することは一つの策になります。

いかに次のリーダーをポテンシャルから見極めるか。社外に目を向け、社会の流れに沿った人材をピックアップできるか。ここが2つ目の要となります。

 


「経験を積ませる」の責任は誰がもつ?

リーダー育成失敗の本質の最後は、責任の所在がないことだと思います。

リーダーの選抜が終わると、次はどのような経験を積ませるかを計画し、対象者に経験を付与していきます。経験の付与は2つのパターンがあります。一つ目は現在の部署で今よりも負荷のかかるプロジェクトのリーダーを任せる、もう一つは経験を積むことができる部署異動をさせる、この2つです。

そして、どちらにせよ「経験を積ませる」場合、定点観測をする人・部隊が求められます。育成失敗しているときは、この「経験を積ませる」ことをその部署の上長に丸投げしているケースがほとんどです。すると、誰が責任をもって育成するかが分からなくなってしまい、育成されている状況が放置されてしまうことが多々発生します。それで「育成がうまくいかない」と悩んでいるのは非常にもったいない。必ずプロジェクトとして推し進め、責任を受け持つ人・部隊を置きましょう。

これは1つ目の失敗の本質にもつながりますが、実際に育成を任される現場の上司に育成すべきリーダー像が共有されないことも大きく影響します。人は放っておいたら自力で成長することは難しく、上司からの手助け・引き上げがあって初めて階段を登れるようになります。しかし、育成する上司側から考えてみてほしいですが、ただ育成計画を立てさせたり、ただ育成を任せるだけではこの上司に当たる人は何もモチベーションがありません。さらには、上司自身が異動・退職してしまうと育成プロジェクトの熱意を引き継ぐことは難しいでしょう。そのため、育成協力を上司側に説明し、上司のミッションに組み込むようにします。上司自身が評価される仕組みも有効でしょう。

さらには、選抜者本人にも意識付けが必要です。どのくらいの期間で、ここまでレベルアップしてほしいと会社側が期待を示すのです。「経験」という機会を付与していること、その機会を無駄にしないでほしい旨は何度も伝えなくてはいけません。これはモチベーションを上げるための意識付けですが、モチベーションを下げない工夫も必要です。「経験を積ませる」の多くは泥臭いことを経験が多いかと思います。自分のやっていることを見ていてくれるのか、中長期的に評価してくれるのかが気になる点ですので、上司が誰に報告するのかが明確に見える方がよいでしょうし、例えば上司が変わるなど不安要素が強くなる状況でも外部からの定点観測があれば、安心することができます。

 

以上の内容は管理職育成を想定しています。中小企業は限られた従業員数で成果を出し続けなくてはいけません。①まず育成人材の目標(リーダー像)を据える ②リーダーを担える人材を見極める ③経験を積ませている間の定点観測 この3つの本質を間違えなければリーダーは必ず育成できると言えます。これらは自社で具体的な育成内容はまた記事にしたいと思います。

 

書籍紹介(組織デザイン)

<書籍情報>

■書名:組織デザイン

■著者:沼上幹

■出版社:日本経済新聞出版社

■どんな人向けか:組織の骨格を組み立てたい方、組織開発のハード面を学びたい方、分業と調整について学びたい方

 


事業成果を出す者は分業を制する

今回ご紹介する書籍は「組織デザイン」(沼上幹)です。

本屋さんで書籍を探してみると、組織の骨格や構造について端的にまとめられている本が少ないことがわかります(意外とこの分野の研究者が少ないのかもしれません)。そんな中、本書は新書であるにも関わらず組織構造について非常に詳しくまとめられています。本書の内容は、他の「組織論」や「経営論」の本に度々登場し、またか!?というほど引用されています。組織構造の章がまるまる本書の内容だったりするくらい超有名なので、すでにお持ちの方も多いのではないでしょうか。一冊読むだけで組織のハード面について網羅的に学ぶことができますので、組織開発初心者から玄人まで必読の一冊です。

さて、私がこの本を手に取ったきっかけは「組織構造」と「分業」の関連性に気づいたことにあります。現職で一部上場企業に勤めていますが、そこでは数年前から社長肝いりの企画が多数始動していました。社長指針を刷新したり、現場からボトムアップの形で小さな改善を活性化させるような取り組みを導入したりと、経営者が組織を活性化させようとしている雰囲気が社内に広まっていました。これは良い取り組みである一方、社長自身は自分の想いが社員の末端まで行き届いていないことを課題に感じていたはずです。人事として会社全体の組織改編を取り扱う中で、本当に今の組織形態が一番効率の良い形なのだろうか?人事として新しい形を提案できなくてよいのだろうか?と疑問を持つようになりました。

「組織構造」と「分業」は密接に関わっています。しかし、この対応を蔑ろにしているリーダーが意外と多く、チーム成果が出せていない組織ではこのどちらか(もしくは両方)がうまく機能していません。これは大所帯の企業も少人数チーム(私は3人からがチームだと思っています)も本質は同じです。崩れていく組織は布陣が曖昧なのです。なぜ従業員が自分の方針を理解してくれないのか、なぜ従業員は非効率に作業を進めてしまうのか、なぜ従業員同士がすぐもめてしまうのか…実は「組織構造」と「分業」が大混乱している証拠なのです。

最終的に作業や情報が滞りなく組織の末端まで流れていくことがめざすべき形です。そのために経営者やリーダーがやるべきことは何か。まずは「組織の骨格を再設計する」ことです。言い換えると、組織図を描き起こせるようなチームの状態を作ります。これは組織を牛耳る者しか担うことができません。いくらメンバーが組織の形を整理したいと思ってもできないのです。

企業はチームです。事業が伸びている企業は「分業」がうまく機能しています。自然発生的に機能しているのではなく、経営者が分業での成果の出し方を知っているのです。つまり、チームで成果を出す者は「分業」を制していると言えるでしょう。

 


ボトルネック工程を見つけ出せるか

本書は分業の理論的な考え方について学べる良書です。その中で読んでいて感じることは、分業は水のようだということです。作業工程を「フロー」と呼ぶくらいなので、まさに水の流れそのものです。

作業工程もスタート地点からゴール地点へと流れていきます。その過程で、詰まっているところ=一番時間がかかるところがあると途端にフローは滞ります。これをボトルネック工程といいます。皆さんもチームで仕事をする際に、「分担がうまくいかないな」と悩んでしまう箇所はないでしょうか。担当者同士がもめていたり、マンパワーが必要だったり、なぜこの作業をやっているかわからなかったり、そういう箇所や部署はまさにボトルネックなのです。

ボトルネック工程を排除することはできませんので、本書ではボトルネック工程の取り扱い方についても教えてくれています。

 

①ボトルネック作業があまり重要でない作業・部署だった場合 → 作業や存在自体をいかに小さくするか/注力するか/効率化するか

②ボトルネック工程が重要部署・重要作業だった場合 → 周りの作業を効率化し、いかにリソース(時間・優秀人材)を突っ込むことができるか

 

これができるかどうかだけでも組織の動きは全く変わってきます。本書で繰り返し述べられているのは、「ボトルネック工程と非ボトルネック工程を仕分けしてください」ということです。あなたの企業・あなたの組織が抱えている作業や案件を全て棚卸する必要があります。これは、片付けの手法と非常に似ています。片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)さんが提唱されているこんまりメゾッドでは、まず部屋の中央に家の中にあるすべてのものを集めてきて、カテゴリごと(書類・衣服・本・小物など)にどれを残すか選別していくそうです。まさに、工程の棚卸もこの作業と同じことをします。

やり方が分かれば自分で片づけられる人もいれば、片付けコンサルタントに依頼して短時間で一気に片づける人もいます。「組織構造」と「分業」の整理も、短時間で一気に済ませてしまいたい場合は外部へ委託されることをお勧めします。ボトルネック工程が抽出できた後は、リソースの分配まで一気通貫で構築することが可能です。

また、片付けと組織整理の違いは、複数の人や部署が絡み合う点です。自分で決めればよいわけではなく、都度担当者のヒアリングが必要になります。何も聞かずに断捨離されたら現担当者は自分の人格を否定された気持ちになり怒り出す。つまり、気持ちにも配慮しながら進めなくてはいけない非常に繊細な作業です。事業を進めながら組織を整えるのは、難易度がかなり高いことが分かります。

事業が進んでいく中で組織について立ち止まれるか、飛躍するための準備期間を設けられるか。事業の成功は「組織構造」と「分業」を機能させる作業に掛かっている。本書を読んで痛感した気づきでした。

 

 

 

従業員との対話、苦手としていませんか?

対話が苦手な経営者は多い

経営者の皆さんに従業員とのミーティングに要している時間を伺うと、意外と確保されていないことに驚きます。

経営者の方は事業に情熱を持って取り組まれています。事業と向き合うことについては、得意な方が多いと思います。一方で、従業員への関わり、とりわけ「事業を展開するための対話」という点においていえば、見てみぬふりをしているパターンが多い気がします。

とある経営者の方は、従業員の生年月日と兄弟構成から、従業員全員の性格を占いで出してあると仰っており、占いで算出した性格表を手元に置きながら、従業員面談を実施しているとのことでした。そして、占いを導入した結果、「従業員面談の時間を削減することができた」と喜んでいらっしゃいました。占いを導入している賛否は置いておくとして、「対話時間を削減した」ことはいい方向にいかないのではないかと私は予測しています。

経営者の方から「組織がまとまらない」「同じ方向を向いていない」という課題はよく伺いますが、経営者からの発信時間が圧倒的に少なすぎることがあります。その要因は、①経営者の方が従業員に伝えたい理念や事業への想いを言葉にしていない ②対話に時間をかけても効果が得られなかったので辞めてしまった

この2点が当てはまると思っています。

もし、チームとして成果を出したい場合、分業は避けられません。つまり、従業員を信用し、自分がやるべき仕事を移譲していく必要があります。そして、組織を整え、自分の方針を従業員に落としていきます。これは経営者に近い経営層だけではなく、末端の事務員まで、組織の中にいる全員にいきわたらないといけないのです。リーダーからの発信と従業員とのすり合わせの時間は、栄養を全身に運ぶ血液と言ってもよいでしょう。

対話不足は栄養が行き届いていない状態です。陥ってしまったら、やるべきことの一つは「従業員のチーム化」。組織が成熟するまで待つのではなく、経営者主導でチームになるべき要素を整えていく方法です。詳しくは、ブログの別記事にまとめていますのでご参照ください。

なぜあなたの組織はまとまらないのか

 

 


リーダーシップとは「コミュニケーションのタイミングの上手さ」

対話不足の組織でやるべき対策、もう一つは「リーダーシップの見直し」に解決のヒントが眠っています。

事業を成功させる「リーダーシップ」、私の個人的な意見としては「=コミュニケーションのタイミングの上手さ」だと思っています。

「コミュニケーション」というと、雑談や朝礼からメール共有、ミーティングや面談までさまざまなツール・規模のものが対象になります。小さい会社で社長室がないような企業様だと、フロアで従業員といつも顔を合わせるし業務上のコミュニケーションは常に取っている、さらに飲み会は盛り上がるとなると「うちの会社は問題ないよ」と認識される方が多いのはないでしょうか。経営者様ヒアリングのためのアンケートにおいて、「コミュニケーション」の過不足を分析すると、大体の経営者は「問題ない」と回答されます。

しかし、もし感覚的に「従業員がついてきている感じがしない」と違和感を覚えている場合、残念ながらその感覚は当たっていると思います。

何が起きているのかというと、感覚で感じるということは従業員側が面と向かって言えない不満や要望が溜まっている状態です。言葉で言えないので態度に出している。はっきりとではありませんが、それを何となく経営者が感じ取っているのです。最近あの人なんかそっけないな、なぜかわからないけど反応が鈍いな、など。このようなノンバーバルな反応を察知している段階は、経営者と従業員の信頼関係にヒビが入っている状態です。

これが、言語化されて言葉で不満が出てくるようになると実は手遅れ一歩手前の状態です。言葉として不満が噴出する状態は、ヒビではなく断絶になります。こうなってしまったら、事業を前に進めたいと思っても組織を一から立て直す方に時間を掛けなければなりません。

つまり、「言葉として不満が出てきたら対応しよう」と思っていたら遅いわけですね。ここが、マネジメントが上手い(リーダーシップが上手い)方は、違和感をそのままにせず、自分の感覚を拾って対応しています。その違和感がいずれ大きな亀裂になることが分かっているからです。反対に、うまく組織を回すことができない経営者の方は、それをスルーしてしまっています。

私は、経営者の進みたい道を従業員全員に納得してもらったり、不満を持つ人を根絶する必要はないと思っています。そうではなくて、「経営者が何を考えているかわからない」ことに不満を持たれることを極力ゼロに近づける。これが、リーダーシップが上手くいく秘訣かなと思います。あの人の方が給料が高いのはなぜか、あの人の方が大きな案件を任されるのはなぜか、私の仕事がなくなるのではないか、そういう些細な不明点が聞けず、不信感につながるのです。

組織を定点観測していると、おのずとメンバーの違和感が見えてきます。経営者の方には「コミュニケーションのタイミング」、これをキャッチアップできる感覚を磨いて頂ければ、組織を変革していくことはできます。