事業成果を出す組織を作るのお知らせ

ブログ更新(人事制度は車の運転に似ている)

ブログ更新しました。

人事制度は車の運転に似ている

人事制度は車の運転に似ている

ここ最近、「仕組み化」という言葉を目にする機会が増えています。

企業や組織は活動を継続することが求められます。継続するには、誰かがいなくなってもチームが回るようにしておかなければならず、「属人化」は大敵です。そのため、企業では属人化を解消すべく標準的な仕組みを取り入れ、誰が抜けても誰が入っても一定の品質を保ちつつ対応できるようにしようという動きが広まっています。

一見すると正しい方向に見えますが、私はここに「仕組み化」への過信を感じてしまいます。仕組みを導入しただけでは組織は動かず、結局はそれを動かす人にマネジメント能力次第で運用の良し悪しが決まってしまいます。それもそのはず、仕組みはマネジメント能力そのものを上げてくれるものではないため、どうしても使う個人の能力に依存します。仕組み化はハード面の施策のようで、実はソフト面が非常に大きく影響するということです。

人事制度はまさに「仕組み化」に該当するわけですが、ご支援する中で「人事制度が先か、マネジメントが先か」という問いを頂くことがあるので、記事にまとめてみました。

 


結論、マネジメントが先

「人事制度が先か、マネジメントが先か」という問いですが、結論から言うと私は「マネジメントが先」だと思っています。

全国の中小企業から人事コンサルのご依頼を頂く際、ご支援先の現状はまちまちです。多くは2パターンあり、①全く何もないところから人事制度を作ってほしいと依頼されるパターンと、②随分前に作った制度があるものの形骸化してしまって全く機能していないパターンがあります。

①のパターン(人事制度がない)についてもよくお話を伺うと、実は以前に担当者や経営者が独学で人事制度(特に評価)の設計を試みたり、人事制度まではいかなくても社内規範になるようなルールを作り、導入を試みている形跡があります。①②ともに「自分たちでやってみたけどできなかった」という挫折経験を経て、私のところへお声がけ頂くことが多いことが分かりました。

では、自分たちでやってみたけどできなかった要因は何でしょうか。

個人的には、多くの企業でこの挫折経験の原因特定がやや粗いように感じます。

まず、企業様から聞かれる原因は「仕組みが悪かった・古い」点です。確かにこれも原因としては考えられると私も思っています。というのも、人事制度はそもそも非常に難解です。人事未経験者が独学で人事制度を組む場合は、人事人材として専門的に労力を注ぐ必要があります。(ちなみに、我々コンサルが設計しても、設計期間は1年以上頂きます。)また、メンテナンスが必要な仕組みでもあるので、毎年課題と修正点を定点観測していないとあっという間に実態にそぐわない基準になってしまいます。歪んだ枠組みを使っていても成果が出ないのはその通りで、それ故に私も仕組みの重要性を説いている訳です。

ですが、途中まで手掛けた制度や規範を見せてもらうと、既存制度のクオリティが非常に高いので驚きます。漏れの無いスキルマップや業務マニュアル整備、売上目標の評語化、評価基準の洗い出し、手当の検討などもあったりします。私が修正をせずともそのまま使えるレベルで作られていており、驚くことも少なくありません。

では、なぜ失敗してしまうのか。それは、その企業様に「仕組みを運用できる力がないから」です。そして、この「仕組みを運用できる力」こそが、評価する側のマネジメント能力に当たります。

 


車を運転するにはドライバーの運転能力が必要

「人事制度」と「マネジメント」の関係は「車」と「ドライバー」の関係に似ているなと感じています。

人事制度を作ることは、車を作ることと同じです。要するに、ハードの設計という訳ですね。消費者のニーズに合わせてデザイナーが格好良い車にデザインすると、車の構造やしくみを熟知しているエンジニアが設計図を引き、現場では技術者たちが各パーツや素材の知識と技術を駆使して車を形成していきます。そのような専門性の集合体として、車が出来上がっています。

しかし、車が完成しても動かすことができなければただのガラクタです。車を運転するにはドライバーの運転能力が必要です。アクセルとブレーキとは何か、どのくらいの感覚で踏むと車が発進したり停止したりするのかという動作能力だけでなく、道を覚えたり、駐車場のスペースに合わせて停車したり、道路標識などのルールも覚えます。車の運転はライセンスが必要ですから、皆さん自動車学校に通って免許を取って初めて一般道で運転できるということです。

人事制度をこれに当てはめてみると、車=人事制度、ドライバー=評価者であるマネージャー、運転能力=マネジメント能力ということになります。デザイナーやエンジニアに当たる部分は自前でやる場合は人事部門、外部に発注する場合は我々コンサルタントとなります。

そして、車が欲しいと思ったら、お金を出せば買うことができます。F1に出ない人にF1カーを売るか?という問題があり、ただ眺めているだけのディスプレイ用であればそれもあり得ますが、人事制度はディスプレイするわけにはいきません。組織が小さかったり、運転者の能力が低かったりと、組織のレベルに対してオーバースペックだと判断した場合は、私は人事制度を売ることはできません。

ここでのポイントは、運転をしたことがない人は練習が必要なのと同様に、人事制度を扱うにはある程度のマネジメント能力を事前に実装して頂くことが必要だということです。卵が先か鶏が先かという話ではありますし、もちろん実践で習得できる部分も大きいと思います。もし運用していくうちにマネジメント力を向上させるという方針であれば、効果がでるまで3年は期間を見て頂きたいと思っています。

 

 


人事制度はマネジメント能力がある人が使うツール

「仕組み化」が語られるとき、その響きの中に「仕組みは自動的に動く」という感覚が含まれている気がしています。

それを指摘すると、もちろん皆さん「そんなことできないと思っているよ」という反応をされるので理屈ではご理解されているのですが、では具体的に仕組みをどのように使っていきますか?と問われると、手順や状況の場合分けがイメージがついていないのです。

私の考えとして、「人事制度はマネジメント能力の自動向上装置ではない」とお伝えしています。

人事制度は「評価制度」を以って回していきます。直属の上長と部下が目標設定→ミッション推進→評価を面談で握っておき、全社全体の相対評価を経て、確定した評価を本人へのフィードバック、という流れです。これを見ただけでもコミュケーションの機会が意図的に増えることが分かります。が、マネジメント能力のある方は必要工数だということを理解しているため、これらを既に実施しているのです。そこに標準的な実施プロセスである「仕組み」が導入されればさらにやりやすくなるでしょうし、自分なりのアレンジを加えてマネジメントすることもできます。しかし、実施していないケースでは、制度によってコミュニケーション機会を増やしたとしても、部下と何について話せばいいか分からず、雑談で終わってしまうのがオチです。

当たり前ですが、マネジメントは信頼関係によって成り立ちます。そして、信頼関係は日々の業務の中で作られます。ここで問題なのは、仕事ができる=信頼しているではないということで、現場から離れている上長(特に社長様が一手に評価を担う場合)は、評価者としての信頼という点では不足していることがあります。ここで次の手が打てているかが重要で、マネジメント能力のある人はその点に気付き、業務としての接点を日々持とうとします。これは、雑談や飲み会などプライベートな形式ではありません。上長自身の業務の手を止め、部下のために面談時間を確保し、対話やヒアリングを「業務として」行います。仕組みではなく、「上長の想いで」実施してくれるということに部下は嬉しいのです。つまり、面談の内容ではなく、面談時間を持ってくれる(自分を必要としてくれる)事実に信頼が発生するわけです。一方、多くの方はこの視点に気付けないか、気付いていても後回しにしています。ということは、いつまで経っても信頼は築かれないということです。このように、マネジメント能力は「仕組み」では自動的に向上しないことが分かって頂けると思います。

部下との信頼の大きさと上長のマネジメント能力は表裏一体です。逆に言うと、信頼を大きくする行動を上長が取っていれば、マネジメント能力は必然的についてくることになります。人事制度をうまく運用できず、悩んでいる方や企業様がいらっしゃいましたら、実は仕組みの外に要因があるかもしれないと考えてみてほしいと思います。

 

 

 

 

実績紹介(森のチームビルディング研修 (スマート・フォレスト様主催))

実績紹介を更新しました。

実績紹介(森のチームビルディング研修(スマート・フォレスト様主催 ))

実績紹介(森のチームビルディング研修(スマート・フォレスト様主催 ))

■ 研修概要

森のチームビルディング研修(株式会社スマート・フォレスト様主催)

場所:檜原村(高尾)

お客様概要:外資系企業約50名

お客様要望:在宅が多く、普段お互いの人となりを知る機会がないため、対面での作業を通じてチームの信頼関係を深めたい。

当方役割:外部講師(ファシリテーター)

 


当方では、個人・法人のお客様に対して、セミナーをご提供しています。その中で、株式会社スマート・フォレスト様主催のチームビルディング研修に外部講師(ファシリテーター)としてお誘いいただき、参加してきましたので、共有させて頂ければと思います。

スマート・フォレスト様の研修は非常に面白く、木々を使ってベンチを作ることでチームビルディング(チームが組まれ、衝突を経てチーム形成していくプロセス)を疑似体験し、日々の業務にも活かしてもらうというものです。

まず前半は山の中を散策しながら、専門家から木や林業について簡単にレクチャ―頂きます。私も初めて知ったのですが、高尾の山々は昔全て木を伐採してしまい、すべて禿山になってしまったそうで、そこから地元の方が手作業で植樹されたそうです。今となってはこんなに青々と木々が成長していますが、今度は間伐作業の人材が不足してしまい、栄養が一本一本の木に行き届かず、現在では売ることができないような細い木々になってしまっているとのこと。何事もバランスが難しいんですね。日本は木々に覆われている本当に自然豊かな国で、山や水源の秩序は木々が保ってくれています。本当にこの豊かな自然が維持されていくことを願います。

そして、午後は、いよいよベンチ作りです。

5~6人で一つの班を作り、役割分担やコンセプト作りから決めていってもらいます。ここでのポイントは、資材や道具に限りがあるため、作り始めると当初のコンセプトではうまくいかないところが必ず出てきます。そのため、作りながら設計やコンセプトを修正していく必要があり、その辺りのコミュニケーションと全体統制をどのように追っていけるかが肝となります。

このような状況では、あまりにも個人プレーや好き勝手に作業する人がいると、ベンチはたちまちチームの総意とはかけ離れたものになってしまいます。皆のイメージから離れすぎず、ここまでなら変えてもいいよねと納得できる範囲を探りながら調整をしていくことになります。

そして、この調整のプロセスが班ごとに全く異なっていたのが個人的にも気づきになりました。つまり、コンセプトを全体で決めたはずでも個人が脳内にイメージしている完成図が一人一人異なるということです。

ベンチだとイメージしやすいですが、なぜか日々の業務の中だとこの「完成形のイメージの相違」を見落としてしまいます。折角進めてしまったのに後から修正されたり、顧客からやり直しを食らったりという経験は誰しもあるのではないでしょうか。分業体制の中では、メンバーの人数が増えれば増えるほどイメージのずれが発生しますので、その修正に手間を惜しまないことの重要性に改めて気付かされました。

 

 

 

そして、ベンチ作りが終了した後は、ベンチが完成するまでのプロセスを振り返って頂きます。

ベンチ作りの最中は皆さん熱中しており、目の前のベンチを完成させることに集中していますので、チームのことを考える余裕などない場合が多いですが、焚火を囲み、コーヒーを飲みながらリラックスした環境で振り返ってもらうと、自分たちの行動やチームワークを内省することができます。

この振り返りの時間が重要で、私含め複数人のファシリテーターが進行役として入り、問いを投げかけることで改めてチームビルディングに意識を向けて頂きます。

今回のお客様は、日々一緒に作業しているメンバーで班を作ったとのことで、意志疎通が非常にスムーズに取れていました。皆様積極的に働いており、自分ができそうなことをいち早く見つけてチームに貢献していました。そのプロセスを振り返っている中で、「いつも阿吽の呼吸で仕事ができているんだなということに気付けた」と仰っている方がいました。いちいち確認しなくても、「この人だったらこのレベルの仕事はこなしてくれる」だろうという信頼は、仕事の質とスピードに非常に関わります。今回の研修で背中を預けられる仲間に気づけたことは、今後の業務においても非常に大きなアドバンテージになると思います。

また、チームビルディングでは意見がぶつかり衝突する時間をどのように捉えるかということが重要だと私は考えています。ベンチ作りでいうと、コンセプト作りと作業中の方向転換がこれに当たります。心理的安全性、というと平たい言い方になってしまいますが、考えを発言すること、他人の意見とのバッティングを恐れないこと、チームにとって最善の策か否かを客観的に判断することはチーム強化に非常に重要です。成果が出たあとにこの時間を冷静に振り返えると、どのくらいの加減で人と意見をすり合わせるとアイディアが転がっていくか(強すぎても弱すぎてもだめ)が意識できるようになると思います。

普段の業務では、成果が出た後はプロジェクトの動きなどを反省する時間はないと思いますので、ベンチ作りは疑似体験としてよいトレーニングだと思います。

 

 

私は組織を作る立場として、分業について深く学んでいます。付加価値を作るためには一人で事業をやるよりも、人々が集まって分担を決め、その集合体として企業活動をした方が、何倍もの成果を出すことができるからです。つまり、分業を上手くコントロールできる方が組織力を強めることができるのです。

分業というのは一連の流れをメンバーで分けることなので、作業の前後でメンバー同士の調整が必要になります。ですが、昨今では在宅や時短勤務等の働き方が多様になり、全員が顔を合わせずとも働けるようになりました。それはそれで良い側面もありますが、チームで一つのものを作るという実感が以前より減っています。このような研修が人気なのは、その疑似体験をすることで、人と協働するという人間の感覚を取り戻すことができるからなのかもしれません。研修が終わった後の皆様の晴れ晴れした様子を見て、「協働」を実感いたしました。

ご参考に、分業については下記書籍が非常に参考になりますので、ぜひご一読頂ければと思います。

 

書籍紹介(ハイアウトプットマネジメント)

 

ブログ更新(基本給の個性)

ブログ更新しました。

基本給の個性

基本給の個性

毎回ご説明するときに困るのですが、実は「人事制度」という名称の制度はありません。一般的に人事制度とは、等級制度・評価制度・報酬制度の3つの制度を総称してそのように呼びます。

「自社独自の人事制度を作りたい」と考える会社は多いように感じますが、では各社の独自性はどこに出るのでしょうか。設計の際に、カスタマイズしなければならない部分はどこなのでしょうか。

私は報酬制度、特に「基本給」に個性が大きく出ると思っています。

基本給の構成は各社によってこんなにも違うかという特徴があり、非常に面白いです。例えば、大卒初任給が基本給20万スタートという会社が2社あったとしても、基本給の構成要素(どのような要件で昇給していくか)が全く異なるのです。そこを押さえて制度設計することが重要だと感じたので、記事にしてみました。

 


基本給には各社の個性がある

改めて基本給の定義を見てみます。

基本給とは、給与・賞与・退職金計算のすべてのベースとなる基準賃金のことで、個人の労働の対価として会社から支給されます。労働契約は、会社と従業員がこの等価交換のやり取りをすることを契約しています。因みに、役職手当や住宅手当のように個人の状況に応じて支給する手当は該当しません。

労働の対価ということは、基本給は対象者の従業員としての労働レベルを示すことになります。労働レベルとは、単純に作業レベルのみならず、その会社への貢献度合い、重要人物度など、その会社独自の基準を含んでいます。新入社員の基本給が低くて重役の基本給が高くなるのは、「重要人物度」の差が基本給に反映しているためと言えます。

そしてこの「重要人物度」というのがポイントで、どういう人物を「重要人物」とするかという基準こそが人事制度の根幹であり、基本給の個性となる訳です。

この基準は会社ごとに異なります。いわゆる年功序列の基準、つまり年齢や勤続を重視する企業であれば、新卒でその企業にずっと勤めている人と中途入社で入ってきた人とで基本給が異なるでしょう。近年多くの企業で取り入れられているジョブ型人事制度は、ポジションや部署役割に重要度を割り振り、基本給を変えていこうと言う仕組みです。また、転職者においては前職の年収も基準の一つになっています。これは、前職での「重要人物度」を次の会社でもある程度信用して引き継ぐということになります。

自社にフィットした人事制度を作る場合、基本給を読み解いてみるとその会社のことがよくわかります。労働の対価としてどのような基準を重要視しているか、ここを無視して新しい制度を作ることはできません。一方で、自社のみで人事制度を構築・刷新しようとする際に、この基本給の個性を意外と見落としがちです。その会社にいる人にしてみると、当たり前の基準すぎてそれこそが人事制度のセンターピンであることに気付けないのです。

人事制度を作るか、もしくはメンテナンスする際は、基本給の基準を読み解いてみることをお勧めします。

 


年功序列と評価給

基本給に個性があることがお伝え出来たところで、具体例を見ていきたいと思います。

まず、先ほども挙げた例として、大卒初任給20万スタートの会社が2社あったとします。両者とも同水準かなと思いきや、基本給の構成要素が下記の通り異なっています。

 A社… 基本給(20万) = 年齢給 + 役職加算

 B社… 基本給(20万) = 等級 + 評価給

この基本給の構成要素は残念ながら求人票にも出ていませんし、社内でも公表していないことも多いため、数年働いてみて昇給を観察してみたいと分からないところではあります。(面接で質問すれば答えてくれるかもしれません)

A社の場合、まずスタートの基本給は年齢で決まります。新卒も中途もその基準は変わりません。若手時代はほぼ一律で基本給が上がっていき、若手時代は同年代で差がつきにくいしかけです。いわゆる「年功序列」は年齢給のことで、年齢に応じて毎年昇給していく制度のことです。どのレベルの従業員でも平等に歳を取りますので、良く言えば一般社員でも全員毎年の昇給していく、悪く言えば能力や貢献の高低に関係なく基本給が決まってしまいます。しかし、A社事例ではここから差がついてくるのは役職に就いてからで、役職に応じた加算があるため、昇格するとぐっと基本給が上がると予想できます。「年功序列」というとあまり差がつかないイメージかもしれませんが、年齢給と役職加算の比率や役職加算の金額傾斜によってはかなり差をつけることもできます。

一方、B社は年齢に関係なく、スタートの基本給から等級と評価によって基本給が上がっていく仕組みにしています(スタートの基本給の決め方は年齢・前職・既存社員とのバランスなど)。この基準では、等級制度できちんと等級・役職の役割を決め、担える人物かどうかを見定めて基本給を昇給させていくことになります。どの年齢の人でもやる気と実力があれば評価し、基本給を上げていく姿勢が表れています。しかし、こちらも気を付けなければならないのは、一見A社の例に比べると評価が入ってくるので成果主義に感じるかもしれませんが、結局等級制度が機能していないとどうしても年功的に上がっていってしまいます。どのくらい制度運用がうまくいっているかは厳密にチェックしなければいけません。

どちらの基準でも、昇格者の厳選が重要です。「年功序列」の一番の課題は、年齢が来たら一斉に昇格する昇格基準(等級定義・役職定義)にあり、せっかく基本給の構成に役職加算を入れていたとしても、等級制度の運用が甘いと報酬制度ではコントロールできないケースも多くあります。

下記に昇給イメージをグラフにしてみました。こうすると一目瞭然で、基本給が同じ金額だった時点を切り取って比べても、その基本給がどのような構成要素を持っているか調べてみて初めて個性が見えてくるのです。

 

 


中小企業は基本給に個性を出すべし

先日、ご支援先の企業様で組織分析が終了し、年に1回の経営者方針説明会でその結果を社長様から発表して頂きました。

その中で、評価制度について深く言及して頂き、今後は求める人物像(=人事ポリシー)に当てはまる人をきちんと評価していくことを宣言して頂きました。従業員面談の中で、社員様からはこの会社で頑張りたいという前向きな発言とともに、報酬についての要望が数多く挙げられていました。そのため、今回の方針説明の内容は社員様の心に非常に響いたことと思います。この会社でもう一歩頑張っていこうという火が灯るのです。

直近の最低賃金と初任給高騰の影響で、どこの企業も原資の捻出とベースアップでの還元に必死です。2025年度の東京の最低賃金は1,226円、前年から63円も上がっています。

企業においては、原資が無限に出てくるわけではありません。全員一律のベースアップとは別で、昇給する部分・減給する部分を明確にしておかなければ原資はいくらあっても足りないでしょう。そのため、報酬制度を見直すことで根拠もなく人件費が高騰してしまうことを防ぐ必要があります。ここについては、また別のブログで解説したいと思います。

何を持って基本給を昇給させていくか、経営者の皆様には今一度考えてほしいと思います。それはつまり、従業員に何を求めるかと同義語です。他社や社会の基準からずれないように設定したいのか、特有の尖った基準を設けたいのか、そこに各社の価値観が反映されます。報酬制度の構築は自社の個性を磨く工程だと考えてもらえればと思います。

そして、個人的には、中小企業は大企業に比べて個性を出しやすいと思っています。反対に言うと、個性を出さないと隣の同業他社との違いが従業員に伝わりづらく、だったら転職して別会社に行けばよいという発想が生まれてしまいます。その会社にしかない基準で基本給を上げていくことができれば、従業員はその会社で評価されることが特別なことになります。他社で再現することはできません。それこそが、その会社でずっと働き続けたいと思える理由になりうると私は思います。

また、先述のとおり、今後はできる人・頑張る人を上げていかなければ将来を担う従業員が勤続することは難しいでしょう。評価制度と組み合わせ、その結果を評価給として給与に反映させることで、やる気のある従業員を逃がさないほしいと思います。

 

メディア掲載(マイベストプロ朝日新聞)

ビジネスの先生である新井一さん(【起業18フォーラム】会社員のまま起業【副業/複業】できるコミュニティサロン

より取材をして頂き、インタビュー記事を掲載頂きました。

ぜひご一読下さい。

【IGNITE HORIZON】環境変化を乗り越えられる「強い組織」はどうつくる? 最強の組織で最高の成果を出す仕組みのつくり方|新井一

 

 

 

 

ブログ更新(書籍紹介(「「学習する組織」入門」(小田理一郎))

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書籍紹介(「学習する組織」入門」(小田理一郎))

書籍紹介(「学習する組織」入門」(小田理一郎))

■書名:「学習する組織」入門

■著者:小田理一郎

■出版社:英治出版

■どんな人向けか:複雑に絡み合う組織内の相互作用を整理したい人、組織改革のレバレッジポイント(てこ入れするポイント)を見つけたい人

 


「学習する組織」(ピーター・M・センゲ)が発売されて10年以上経過していますが、未だに本屋さんで平積みになっています。組織開発のバイブルとして紹介されており様々なところで見かけますので、手に取られた方も多いのではないでしょうか。

本書はその「学習する組織」の入門編として噛み砕いて説明されている本です。本家は非常に難解であると聞いたことがありましたが、こちらは分かりやすかったので入門編を読んでから本家の方を読まれるのがいいのではないかなと思います。

我々は組織について話をするとき、人格を持った一人の人間のように話をします。「あのチームはモチベーションが高いよね」「あのチームはまとまりがないから駄目だ」、そのような評価は一度は耳にしていると思います。その人格を紐解くと、実は所属する一人一人のメンバーの行動や性格の集合体で、それらがお互いに作用し合っている結果が「組織の人格」を形成していると気付かされます。

本書の表題に関して、組織が「学習する」という表現が面白いと思いました。個人の集合体である組織が、まるで一人の人間かのように、組織は過去の出来事を吸収して未来に成長していけるのでしょうか。

 


学習する組織になるための要件

私は組織論について、理論と現場でのギャップを毎回感じています。

まず、「学習する組織」という題目から、理論上は「優秀な組織は自発的に学びだす」と認識してしまいそうになりますが、私の経験上、自発的に学びだす組織は本当にごく僅かです。つまり、一般的な現場では何もなければ停滞していることの方が多いように思います。組織は、学習を欲する環境に組織が置かれない限り、動き出しません。

では、学習を欲する環境はどのような状況か。

上記のとおり、企業や組織を一人の人格のように捉えることが面白いという話をしました。人がどのようなときに学習せねばと感じるか、また知識や技術を身に付けるために本腰を入れられるかというと、「必要に駆られたとき」だと思います。

一方、組織が必要に駆られて学習するタイミングは2つあると思っています。1つは「メンバーが「自分がこの組織リーダーになり得る」と感じているとき」、もう一つは「組織が潰れそうなとき」です。この状況のどちらに自分の組織が近いか、まずは捉えてみて下さい。あるいはどちらにも当てはまらなければ、その組織は学習するフェーズではないと思います。その場合は、そのタイミングまで組織を誘導する必要があるので、環境づくりから始めるべきと思います。

 

次に、本書では組織に必要な学習能力として以下の3つの要素を挙げています。

(参照:「「学習する組織」入門」(小田理一郎)を基に作成)

 

個人的には、ここで補足が必要かと思っています。この3つの学習能力は、一人で醸成できるものではないように思えるからです。本書を読んでやる気になったメンバーが一人で奮闘しても、組織内に広まっていきません。特に、「1.志を育成する力」と「3.競争性に対話する力」はリーダーの働きかけが非常に重要になります。そのため、いきなりこの3つの要素を取り入れいることはできず、まずはリーダーがこの3つの学習能力を持っているか、持っていなければ研修などで外部からてこ入れをすることになります。

一方、「2.複雑性を理解する力」についてはある程度自己学習が可能だと思います。本書はその手助けになる考え方を教えてくれています。

 

 


複雑性を理解する力(システム思考とループ図)

この本の中で、初めてシステム思考とループ図を知りました。

システム思考とは、「ある事象が因果関係の連鎖によって、表面的には何も関係なさそうな事象を引き起こす」ことを考えることで、ループ図はその流れを見える化する図式です。絡み合う事象同士を構造の問題として書き出して繋げ、全体像を見てみようということです。

例えば、本書ではネガティブは発言が組織の雰囲気に悪影響を及ぼす事象について、システム思考とループ図を用いて説明しています。

(参照:「「学習する組織」入門」(小田理一郎)P.125 を基に作成)

 

この分析の良い点は、要因同士の「ループ」を浮き彫りにできる点です。

その事象の一つ一つは前の事象の結果であり、次の事象の原因になっていて、因果がぐるぐる回っています。そして、好循環・悪循環という言葉があるように、ループは良い方向にも悪い方向にも螺旋状にブーストが掛かります。

私個人の話ですが、実はブレストがあまり好きではなく、頭の中を整理できた試しがありませんでした。ブレストは「点」での洗い出しなので、作用の流れやどのように周辺へ影響しているかは一旦置いておくことになります。そのため、一つの事象を箇条書きで出したとしてもそれは氷山の一角を出しているだけで、根本原因まで到達できる気がしませんでした。会議や打ち合わせでの議論も同様に、関連性を無視した論点一点突破の話し合いでは、いくら時間を割いたとしても無駄に終わってしまっている感覚がありました。その点、ループ図の考え方は非常に納得することができました。

さらにもう一つ、ループの中にループが入っている(ダブルループ)になっている点も重要です。

添付のループ図でいうと、シングルループは「ネガティブ発言の数」→「メンバーのネガティブ発言への意識」→「ネガティブ発言の数が増える」・・・・という部分です。見て頂くと分かる通り、シンプルループは個人~少人数での活動であり、シンプルな事象に絞ったループです。

しかし、ここで言えることは、そのシングルループはさまざまな外的要素に影響を及ぼしてしまうということです。添付のループ図でいうと、シングルループ内で回っているはずだった「メンバーのネガティブ発言への意識」から派生し、「メンバーの無力感」、そして「できていないことの数」が増え、「ネガティブ発言が増える」という外側のループへと移行しているのが分かります。これがダブルループです。

そして、本書の本題である「深い学習サイクル」はダブルループになっていると言います。

例えば、P→D→C→Aは典型的なシングルループです。トライアンドエラーをぐるぐる回すことで、プロジェクトや作業を効率や質を高める(あるいは低下していく)活動になります。ですが、その活動は個人で完結するものではなく、そこからプロセスや結果がチームに影響・貢献し、広がっていきます。ということは、P→D→C→Aのシングルループのその外に2つ目の組織全体ループが存在しているということです。

前述の組織の学習能力で挙げられいた「2.複雑性を理解する」については、この2重のループを用いて自分のチームのシステム(構造)を知ることで、組織開発に大いに活かせると思います。私は組織は構造が7割だと思っています。構造が絡み合った状態の組織では、どんなに「1.志を育成する力」と「3.競争性に対話する力」を育もうと思っても機能しません。そういった意味でも、システム思考とループ図で構造から捉えることは重要だと思います。

 


システムの抵抗とレバレッジポイント

「学習する組織はダブルループ」という話が出ましたが、ダブルループであることによる弊害というものがあります。

まず、組織改革で必ずと言っていいほどぶつかる壁は「メンバーからの反発」だと思います。

ここで重要なことは、変化や行動のパターンに影響を及ぼしているものは「構造(システム)」だということです。

システム思考の重要な原則は、構造がパターンに影響するということであり、構造を変えないまま結果やパターンを変えようと資源や努力を投入しても、システムの抵抗によって結果が相殺されたり、かえって悪化したりしてしまいがちです。つまり、複雑なシステムにおいては、構造そのものを変えない限り、パターンを変えることは難しいのです。

(「「学習する組織」入門」(小田理一郎)P.157)

本書でも「システムの抵抗」という考え方が解説されています。

下記の例は、溜まっている仕事がなぜなぜなくならないかという議題をループ図に起こしているものです。「仕事をこなすことで評価や信頼が上がる」という一見良い事象がループを発生させています。しかし、このループがブーストすればするほど、この方へ依頼される仕事の量は上がっていきます。好循環がバランスを崩すことがループ図を描くとよくわかります。

では、この課題をどう解決するか。一定内の仕事は業務時間内に終わるでしょうが、終わらなかった業務が消えるわけではありません。そのため、一般的には残業や休日出勤といったプライベート時間の投入により残務消化していくことになります。しかし、時間は有限ですし、法令の問題や体調面もあるため限界が訪れます。すると、そこからまた仕事が溜まっていくということになりますので、システムの抵抗ループが仕事を依頼されるというループをストップさせる形になります。

(参照:「「学習する組織」入門」(小田理一郎)P.153 を基に作成)

 

ということで、組織の改革には構造(システム)へのアプローチが必要であり、システム思考とループ図が役立つことが理解できます。

そして、もう一つ重要な考えは、レバレッジポイントです。

レバレッジポイントとは、組織改革のてこ入れ箇所で、まさにてこの原理(レバレッジ)の力点のような部分だと思います。できる限り小さな力を力点に送り、作用点に最大の効果発揮させるということです。本書では、レバレッジポイントの探し方として下記が掛かれています。

1.物理的な構造(ストック、フロー、リードタイム、バッファなど)

2.各ループの相対的な強さ

3.情報の流れの構造(誰が、いつ、どの情報にアクセスできるのか)

4.制度上の構造(目標、ルール、インセンティブ、罰則など)

5.組織に所属するメンバーの心情(メンタルモデル)

(参照:「学習する組織」入門(小田理一郎)P.160~162)

ということは、組織開発をする上で、上記5つについて分析しなくてはいけません。ずれたレバレッジポイントに対して施策を実施してしまうと、大きな労力を使うとともにメンバーからの信頼を失ってしまうことと思います。

 

以上、私が本書を読んでみて勉強になった点や気になる点をまとめてみました。

学習する組織の要件である「1.志を育成する力」「2.複雑性を理解する力」「3.競争性に対話する力」、これら3つの要素は椅子の脚に例えられており、一つでも欠けると椅子として立たせることができないと本書に書かれています。私も組織は構造で決まるという考えですので、今回重点的に取り上げたシステム思考とループ図は構造分析に非常に有効だと感じました。

組織の構成メンバーが増えるほど、ループする事象も増えていきます。本書を読んで感じるのは、「学習する組織」はシンプルな構造の中で生まれるものだと思いました。そのため、複雑な事情を持つ企業トップや組織リーダーは、それらを紐解き、整理することが今後ますます求められていくことと思います。

 

ブログ更新(等級制度は人材育成の概観図)

ブログ更新しました。

等級制度は人材育成の概観図