2024年05月01日
■実績紹介
会社名:株式会社エコ・ブレーンズ
設立:2008年
所在地:静岡県静岡市
従業員数:10名
事業内容:補助金申請代行業
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を定めよう
株式会社エコ・ブレーンズ様に人事コンサルティングのご支援に入らせて頂いております。こちらの企業は従業員数10名の小さな企業様ではありますが、過去に従業員との関係がうまく発展できず、チーム崩壊に近い経験をされているため、今後そのようなことがないように組織の診断と早いうちからの対策をご希望されており、今回の支援に至りました。
チームは10人を超えたあたりから、階層を意識する必要が発生します。今までは、全員平等として扱ってきた従業員同士の関係性も、評価に差を与えるかどうかを決断していく一つのターニングポイントになります。
10人程度ですと従業員の皆様は社長様に直接物申せる距離にいますので、不公平を感じる従業員からの異変は肌で感じることが多いと思います。とはいえ、不公平を訴えている従業員が求められているパフォーマンスを発揮しているとも限らないのが難しいところです。このまま平等を貫くか、評価制度を導入して階層をつけるかというところは、正直今後の企業のなりたい姿によるところがあるので一概には言えません。
そのため、私は人事制度を導入する際は、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の策定から入らせて頂きます。社長様を中心とした経営層の皆様が持つ会社への考えを固めていくのです。会社をどうしたいか、事業をどのように発展させていきたいか、従業員はどのように働いてほしいかなど、普段は言葉にする機会がないような事項に関して、納得できるまでお話を聞かせて頂きたいと思います。私自身もその会社の文化や働きがいなど、実際に中に入ってみないとわからないことを把握していく必要がありますので、この経営層の方々とのお話は非常に大切な時間です。具体的には、オリジナルの質問シートを用意しておりますので、事前に記入頂き、そちらを基に私とミーティングを繰り返します。
もうすでに企業理念のようなものが定まっている企業様は今あるものを活かして進めていきますので、そこまでお時間は頂戴しません。但し、策定されてからあまりにも時間が経ってしまっているものですと経営層の考える実態とずれてくる場合がございますので、その場合は同じように時間をかけて話を伺うプロセスをはさむようにしています。
経営者のためのミッション、企業のためのビジョン、従業員のためのバリュー
株式会社エコ・ブレーンズ様の社長様との打合せの中でも、「ミッション・ビジョン・バリューの区別が分かりづらい」とのお話を受けましたので、今一度整理したいと思います。
ミッション・ビジョン・バリューは山登りに例えられることが多いです。逆算的な説明になりますが、下記のようになります。
まず山登りをする人、これが従業員です。「山を登る」=「事業の成果を出す」ということです。それに対して、どのようなプロセスやマインドで頂上までいくのかということが「バリュー」=「その会社の価値」になります。簡単な道から行くのか、険しい道を行くのか、はたまたヘリコプターで行くのか、従業員の方の取り組む姿勢や組織文化などについてを文言にしますので、会社の価値観が出る部分だと思います。
次にビジョン、これは「どのような山を登っているのか」「山を登り続けると、我々はどのようになるのか」というめざしたい姿を表現しています。この「山を登り続ける」というのは事業を継続するということで、5~10年後くらいの中長期的な目標です。現状維持でもよし、組織が大きくなる途中でもよし、支店を出したいでもよし。従業員の方が入社してからギャップを感じる部分はこのビジョンの認識がずれている場合に起こると思います。そのため、「この企業はこのようになりたいと思っています」という自己紹介的な部分でもあります。
最後にミッションですが、「大前提として、なぜ山を登るのか。なぜ頂上をめざすのか」を掲げていきます。これは事業を立ち上げ、継続している社長様の中にしか答えがないものなので、対話の中で言語化して頂く必要が出てきます。最初はまとまらない内容を話す方や、反対にきれいごとのような上辺を話す方もいらっしゃいますが、私との壁打ちをしていく中で「ここが原動力だ」というポイントが見えてきます。そこが出てくるまでは、少し苦しいですが同じような問いを何度もさせて頂き、ご本人も気づかなかったような部分を見つけていきます。
MVVは人事施策のみならず、企業のすべての事業施策に紐づいてきます。さらには、「このMVVに賛同してくれる従業員」が入社基準になれば、企業と従業員のマッチングもそこまで外れることは少ないはずです。組織を作り、事業をドライブさせていくうえで、MVVは必要不可欠なのです。
従業員への浸透と対外的アピール
MVVを策定しただけでは何の意味もありませんので、従業員へ浸透させることが必要になってきます。特に、ミッションについては、企業の根幹であり従業員がその企業で働く理由にもなりますので、ぜひ周知・浸透にも心掛けてほしいと思います。
株式会社エコ・ブレーンズ様の例ですと、社長様が事務所の一番目立つ場所にミッションを印刷して掲載してくださいました。
こちらの企業は地域密着型で従業員の皆様も地元を愛しており、地域のために役に立ちたいという想いが強いことが分かりました。また、補助金事業という、ものづくり大国日本を支える中小企業にも貢献できるという点も踏まえ、ぴったりのミッションだと思います。
掲示以外にも、当方にてHPや会社パンフレットに掲載する素材も作成しております。対外的にアピールすることも先述の理由から効果的です。組織作り、そして人事施策へ入る前の土台作りとして、MVVを策定から始めてみることをおすすめします。
興味のある企業様、経営者様、ぜひお気軽にお問合せ下さい。
カテゴリ:実績紹介
2024年04月08日
マネジメントは理論を学ばないと身につかない
私は、個人のお客様向けにチームビルティング講座を開催しております。
そこで受講者の方にお話を聞いてみると、リーダーがマネジメントについてどこにも相談できない状況だとわかりました。上司が自分のリーダー性を認めて昇格させてくれたのですから、「で、リーダーってどうやればいいんですか?」とは聞けませんよね。また、40代で初めてリーダーポジションを任される方も非常に多いのですが、その年齢になってしまうと「マネジメントって何をやったらいいんですか」とは今更聞きたくても聞けないのです。「若手でもないんだから、大体わかるでしょ」というわけです。経営者も同じです。組織や人に悩んでいる経営者の方も非常に多く、そのような経営者の素質に直結するような悩みを社内に相談することなどできません。
しかし、実際にマネジメントって何をしたらいいのでしょう。上位職制の皆様、部下に聞かれたら答えられますか?
今までの「マネジメント」というのは、独学で身に付けていくことが一般的でした。それがなぜ可能だったかというと、一つは終身雇用が当たり前の社会では、会社のためにチームや会社のために身を粉にして働くことが当たり前だったのだろうと思います。そのため、マネジメントなんかしなくても、チームのまとまりは高かったものと想像できます。もう一つは、マネジメントにはそれぞれの方が元来持っている性格や幼少期からの人生経験なども関係するので、一概にこうすればよいという方法論が確立していないのです。そのため、本を読んで理論を勉強するというものではなく、現場で身に付けていけという感じだったのでしょう。
すると、それぞれのマネジメントというものが存在しますので、どの上司にあたるかによって自分が吸収できるマネジメントの手法に限界が出ます。特に、ワンマンタイプのリーダーもしくはプレーヤー気質のリーダーにあたってしまったときには、そのチームの中でマネジメントというものはほぼ実施されていないはずです。そのようなチームは、メンバー各自の貢献意欲によって成り立っているという状況も多いのではないでしょうか。
現代は、転職市場の活性化に伴い、途中でやめる・新しい会社に入るということが昔より簡単になりました。そのため、同質性の中でチームを運営するということが難しくなり、急に背景の違うメンバーが入ってくる、会社やチームの人数が常に変動するということが増えました。ということは、マネジメント感覚が身についているリーダーが渇望されているのです。
しかし、リーダーとの関係が希薄に育てられてしまった人は、マネジメントというものがよく分からない状態でリーダーになってしまいます。自分がそうだったことから「メンバーたるもの、チームの維持に努めて当然」という考えの方や、自分の上司同様プレーヤーから抜け切れない方、メンバーとの接し方が分からない方、様々なパターンの「マネジメントができない」上司が誕生します。
そのような方は、いざチームが大量離職に見舞われたり、若手がなかなか成長しなかったり、自分のチームが崩壊し始めると原因が自分にあることに気付くことができません。私の周りでも「なぜ自分のチームのメンバーが退職していくのか分からない」と発言しているリーダーを何人も見てきました。
そうなる前に、リーダーに就任する前後からマネジメントを少しずつ練習していくべきだと思います。また、実践と同時に、マネジメントの理論や体系も学んでいきましょう。本を読んでもいいですし、Youtubeで無料で学ぶこともできますし、何でもよいと思います。もし、伴走者や壁打ち相手が欲しいときには、当方が提供している講座を受講して頂ければ状況を伺いながらマネジメントの理論を共有します。理論で学んだことを現場で実践する、そのサイクルを回していくことで身に付けるものだと思います。
リーダーに求められる2つの役割
では、リーダーは何をしなくてはいけないのか、理論から見ていくとどうなるでしょうか。
リーダーは「チームの切り盛り」を任されています。メンバーを与えられ、「この労働力を使って成果を出すように」という成果に対する責任も発生します。つまり、メンバーにできる限り効率的に働いてもらわないと、労働力と成果が見合わない状態になるのです。
リーダーの役割について、現在読んでいる書籍にて下記のようにまとめられていましたのでご紹介します。
リーダーとして部下を持つ、あるいは経営者として社員を持つということは、自分自身に課されているタスクの他に上記の2つの責任が自動的に付け加えられるということです。マネジメントの理論を学ぶと、今まで手探りだった「リーダーの役割」というものが見えてくるので、部下を持たない状態と持つ状態の大きな違いが生じることが実感されるかと思います。そうすると、リーダーは自分の時間の使い方をがらりと変える必要に迫られていると感じ、自分一人で成果を出すところから部下を巻き込んで成果を出す方法へシフトチェンジを模索する必要性が分かるかと思います。
昇格や配転の際に、この部分を説明してくれる経営層や上司はどのくらいいるでしょうか。経営者の方は上司がいないので、自分で気付くまで時間を費やすことになります。大方のリーダーはチームが崩壊し、メンバーが次々と離職していき、業務が回らなくなり、誰も自分についてきていない状態になって初めて今までの自分のマネジメントが0点だったことに気付くのです。しかし、それでは時すでに遅し、そこからチームを立て直すには新しくチームを作るよりも何倍もの工数と労力が掛かります。
リーダーに求められる精神的サポート
私が考えるに、上記の役割をもう少し具体的にしてみると、「部下にある程度仕事を任せ、部下が躓いている部分やうまくいっていない部分をフォローする」ところにあるのだと思います。そのため、私は業務の棚卸というものをリーダーの方にやってもらうべきだと考えており、チームビルディング支援をさせて頂いております。
そして、リーダーの役割を全うしていくうえで、目標管理制度は非常に有効だと私は思います。
多くの会社で制度として導入されていることと思いますが、なかなか自発的に実施しているリーダーは少ないのではないでしょうか。月に一回部下と面談して、目標設定して、愚痴を聞いて、フィードバックしてみる・・・このくらいの手順しか会社や上司から概要は伝えられないはずです。リーダーも時間がない中ででも、それでは部下は動きません。会社に言われたから面談しているリーダーに誰がついていきたいと思うでしょうか。
リーダーは+αで部下にサポート姿勢を見せる必要があります。先程の書籍に、リーダーの役割の中で「精神的サポート」についてさらに詳しい解説がありました。
これもよくご相談頂くのが「1on1の時に会話がなくなってしまって何を話したらいいかわからない」というお悩みです。このようなケースでは、支援ポイントが不明確な状態で部下に業務を振っていることが多いように思います。理論を学ぶと、部下たちは上記のような点で支援を求めていると予測できるので、面談の際にずれたことを確認してしまうことはなくなります。また、各人が分担している業務に当てはめることで、そこに対する取り組み方を伝えたり、スケジュールを引きなおしたり、振っている業務の分量を調整したりしていくのです。
このように、マネジメントで悩んでしまっているリーダーの方には、マネジメントに関する知識や理論が圧倒的に不足しているように感じます。まずはリーダーになった時から独学ではなく理論的にマネジメントを学んでいくということ、また会社やチームが回り出してからも自分のチームが沈む前にリーダーとしてどのような支援ができるかということを導き出し続けることがリーダーの役割かなと思います。お悩みの方がいらっしゃいましたら、お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。無料相談も実施していますので、何かヒントになるようなことをお伝えできればと思います。
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2024年02月04日
■書籍名:人材マネジメント入門
■著者:守島基博
■出版社:日本経済新聞社
■どんな人向けか:人事の全体像を把握されたい方(ある程度実務を経験されている方)、文章に抵抗がない方
7~8年目でようやく理解できた”人事”の全体像
人事を経験される方に最初にお勧めする本として、本書を挙げたいと思います。
本書は私が4~5年目の頃に当時40歳くらいの課長が人事課内で勉強会を開いてくれており、その際に指定図書になっていたものです。その課長は、「みんな前提知識がないだろうから、まあ新書だし、薄いし、このくらいの本でいいか」という軽いノリで選択していたように記憶しているのですが、当時の私は全く太刀打ちができず、途中で挫折してしまいました。
それもそのはず、私がその当時所属していた部署は500人ほどの地域を管轄する小さな人事総務で、自分が何をやっているのかわかりませんでした。携帯の手配、退職金の計算、部長会の設営や資料準備、人員計画などなど…。要は業務が分類されておらず、人事・労務・総務・庶務・教育などがごちゃ混ぜになっていたのです。後から考えると、それはそれで経験にはなったのですが、当時は闇雲に仕事をしている感覚でした。
その後、明確に人事分野を担当し始めて、”人事”と呼ばれる範囲が分かるようになってきました。そして、7~8年目になると自分の部下ができ、人事の経験が浅い方に対して人事勉強会を毎週1時間開くことにしたのですが、その際に本書を読み返してみると、人事の業務範囲について網羅されており、我々の役割を整理するのに非常に役に立ちました。そのため、本書はある程度実務を経験されている方がよいかなと思います。また、新書につき、図表があまりないため文章に抵抗がない方におすすめしたいです。もう少しかみ砕いた内容の本については、またご紹介したいと思います。
人材の流れ(フロー)を意識する
人事・労務・総務・庶務・教育などの業務を一貫性なく雑多に経験している中で、人事についての特徴を理解することができました。人材フローとは、人が入社してから退職するまでの時間の流れのことです。従業員が企業に在籍する年数はその業界や企業によってさまざまですが、一度雇用すればあとはそれで放ったらかしでよいということではありません。まさに、この本に書かれているのですが、人事に携わるには「人材フロー」を頭に思い浮かべ、どの点・どの線に対して施策を講じているかを意識することが重要になります。
例えば、「人を育てる」ということにフォーカスを当てた場合、下記のようにどこを対策したいかによって講ずべき策が変わっていくことが分かると思います。
①日々の業務の中で従業員同士の成長を促すのか→OJT
②日々の業務では学ぶことができない分野や視点について補填するのか→外部研修
③昇格前後で求められる役割を認識させるのか→階層教育
③リーダーに部下の成長を促させるのか→リーダー育成
④早い段階から会社として期待していることを表し、自己研鑽させるのか→次世代経営層の抜擢
⑤若年層に対して仕事の基礎を教えたり、企業カルチャーへの定着を図る→メンター制度
この焦点がぶれてしまったり、ピントを絞らずに何となく全体的に…と実施してしまうと、具体的な結果を何も得ることができず、「人事は実績作りだけ」と揶揄されることになりかねません。必ず、自組織の分析とフォーカスすべき層の特定は実施した方が良いわけです。そして、どのようにフォーカスすべき層を特定するかにおいて、本書が非常に役立ちます。
本書を読むことで、人が雇用されている間のフェーズも分解し、上記の分析結果と照らし合わせることで、その企業独自の人事施策を組み上げることができます。ぜひ、ご参考にされてみてください。(分析方法が分からない方は無料相談が御座いますのでお気軽にご連絡ください)
人事部はいらないのか
本書の中に「人事部はいらないのか」という項目が存在します。
最初に本書を読み始めた4~5年目の頃は、自分の仕事に自信が持てず、会社のために何が貢献できているかが分からない状態だったので、この章を見た時にはどきっとしました。ですが、現在人事12年目を迎える段階で、そしてさらに人事コンサルタントとして活動しているので尚更ですが、「人事部は必要だ」とはっきりと明言することができます。
但し、個人的には、人事部が念頭におかねばならない条件があると思っています。人事部が一番忘れてはいけないのは「人事施策を導入することを目的にしてはいけない」ということです。常に知識を刷新し、自分が今担当している施策は「社員にとって有益な施策になっているか」「会社にとって成果を導ける施策になっているか」という最終結果を常に自分に問いかけることをしてほしいです。きれいごとだけではない人事の仕事ですが、そこだけは軸をぶらさないように進めて頂ければと思います。
小さな施策で視野がいっぱいにならないように、本書によって”人事”の中の自分の立ち位置を把握しましょう。そうすれば、他にもっと有益な施策が見つかるかもしれませんし、他の分野から手を付けた方が良い場合にも気付くことができます。例えば、確固たる目的もない状態で例年通りということで「階層教育」を計画している担当者が、人事全体が見渡せるようになることでピントが絞られ、「リーダー育成」にフォーカスすることだってできるわけです。
先述しましたが、私はよく他部署の従業員から「人事は実績がほしいだけ」と言われていました。それは、当時の人事部門において、この人材フローの全体像が見通せるメンバー・リーダーが少なかったことが原因だと反省をしています。これから人事としてプロフェッショナルを目指される方は、ぜひ本書を読んで頂ければと思います。
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2024年01月08日
リモートワークで部下が感じる不安
直近で、完全リモートワークの企業にお勤めの方から「リモートワークでのチームビルディングについて教えてほしい」というご要望を頂き、カスタマイズセミナーを実施しました。リモートの状況下で若手社員が定着せず一気に辞めてしまった時期があり、このままではだめだとマネジメントをどうしたらよいかというお悩みでした。
実はこのテーマのご要望は今回が初めてではなく、ちらほら頂いています。コロナもほぼ落ち着いて出勤を求める企業が増えてきた中でも、現在でもリモートワークでの働き方を選択している企業もいるわけですね。エンジニアの方や育児中の方などにとっては柔軟な働き方を提示できれば採用につながる一方で、入った後にコミュニケーションが取りにくいことによる「チームの一体感」が出ないことについて悩まれているようです。
一番重要なポイントは「物理的な距離=心の距離を埋めることに手間をかけられるか」どうかだと思います。
これは完全出社の企業でもフリーアドレスなどの状況でも同じことが言えます。私も週に1~2回ほど在宅勤務をしますが、部下の立場での話をすると、自分の作業の進捗状況や働きぶりをリーダーが本当に見ていてくれているのか不安になるのです。下手すると、在宅勤務の日は丸一日リーダーとコミュニケーションを取らない日もあります。それが毎日リモートワークとなると、特に入社して歴の浅い新入社員や中途入社社員は不安が募ることでしょう。業務指示は降ってくるけどこちらの進捗は確認されない、自分の成長具合も計画されている感じがしないとなると、存在意義が見いだせなくなることは容易に想像できます。まさに、心の距離が遠くなっていく状態です。
リモートワークでは、「部下の心の距離を埋めること」がマネジメント層に求められます。マネジメントの義務としてプラスされていることを自覚しましょう。これはつまり、心の距離を埋めることができないリーダーはマネジメントスキルが不足しているということになります。若手のころはそこまで手をかけてもらっていない層が、自分たちがマネジメント層になったら部下との積極的なコミュニケーションを求められるというのは、押し付けられている感はあります。厳しい言い方をするとリーダーになる方は必ず評価される項目になると思います。
雑談は「このチームの一員である」というシグナル
心の距離を埋めるということは、「見ているからね」(見守りの意味でも監視の意味でも)ということをリーダー自身が発信しなくてはいけません。そのような状況であれば、雑談は非常によいツールであることを改めて考えてみてください。
実は、私も雑談をするのがそこまで好きなわけではありません。重要な打合せが重なっている日はそのシミュレーションで頭がいっぱいになり、雑談どころではなくなってしまいます。必要事項だけ打合せしてすぐにオンラインミーティングから退出したいという方の気持ちもわかります。
ただ、雑談が好きなリーダーと嫌いなリーダーは下から見ていると明白で、後者については「この人、人やチームに興味がないんだな」と部下は簡単に感じ取ることができます。すると、そのリーダーに対してついていこうという気持ちは全く起きず、貢献意欲などは湧きません。そして、リーダーのみならずチーム全体に対して心が開かない状態になってしまいます。これでは、チームビルディングのスタートラインにも立てていません。
雑談は「あなたはこのチームの一員」だというシグナルです。
雑談がないチームというのはビジネスライクが強い=心を開かなくてもよいチームということになります。個人的な感覚ですが、人間の本能として「雑談を日常的にかわしている人=味方」という安心感があるように思うのです。反対に、雑談がない=味方がいないとなるわけです。これは雑談の持つ効果を軽視できません。単純にフレンドリーな空気を作るということではなく、「このチームの一員かどうか」をお互いが判断するものなのです。
それに伴い、もう一つ意識して頂きたいのは、「リーダーきっかけで」雑談が始まることだと思います。まずはリーダーがこのチームに心を開いていることを示さないとメンバーに心を開くことを強要するのは到底無理でしょう。特にオンラインミーティングでは、出社している時のように突発的な会話が起きにくいので、その時は意図せずできていたコミュニケーションのハードルが格段に高くなります。リーダーがもしこの状況を脱したいのであれば、要所要所に雑談をはさんでみるということを実施してみてください。
スキマ時間を利用して小さな話をすればよい
雑談というと何かネタを用意して話を盛り上げなくてはいけないのかとか、プライベートで起きた情報を切り売りしなくてはいけないのかなどというイメージもありますが、そんな準備はしなくてよいと思います。また、相手から何か聞き出してあげなきゃ、相手を喋らせなきゃという時間でもないと思います。
要するに、雑談の話題自体が重要なのではなく、小さな話題(天気とか、ランチとか、通勤とか、社内イベントの話とか)がぽっと出せる雰囲気か+それに反応してくれる雰囲気かどうかの方が気にしてほしいポイントです。ここを面倒くさがっていてはいつまでたってもリモートワークでのマネジメントは確立していきません。
また、タイミングについては、オンラインミーティングのスキマ時間を利用しましょう。わざわざ雑談のために集まる必要はありません。ミーティングの開始・中断・終わりで少しでも時間が残っていれば、スキマ時間を利用してミーティングに関係するようなことから話すとよいと思います。業務についての話でも「ちょっと聞きたかったこと」であれば、それは「雑談」として話すことは可能です。
リモートワークのみならず、在宅勤務・フリーアドレスなどメンバーが離れて業務を行っているチームでは、リーダーは「物理的な距離=心の距離」を埋めることができなければ務まらないと思います。チームでの成果を出すためには、離れていてもチームが瓦解していないかを確認する必要があり、さらに結束するためにはどうしたらよいかを考えるのがリーダーの役目です。これを機にチーム内の「心の距離」を考えてみる一助になれば幸いです。
- カスタマイズセミナー内での資料抜粋(IGNITE HORIZON 2023)
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2023年12月24日
はじめまして、小瀬木と申します。
HPが公開されまして、今後ブログについても更新していこうと思います。ご興味がありましたら読んで頂けますと幸いです。
さて、初回のブログ更新ということで、まずはご挨拶と私がなぜ人事コンサルとして活動するに至ったかをお伝えしたいと思います。
”人事って何やってるの?”という質問は100万回聞かれます(人事あるあるですよね)。自分の会社でも何しているかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。私もその一人で、全く希望していないところからいわゆる”配属ガチャ”で人事に配属になりました。
人事というとなんだか裏方で冴えないイメージが強くて、配属されたときは本当にショックでした。配属後の懇親会でショックすぎて隅っこでうなだれていましたし、私は会社の花形にはなられない、”縁の下の力持ち”として終わっていくのだろうなという絶望感すらありました。働き始めて、管轄する地域内に点在する支社の人たちともやり取りが始まりました。「人事はいいよな、予算も業績もないし。」「人事は現場のこと全然考えないもんな」という皮肉を言われ、あはは…と苦笑いしながらやり過ごしていました。悔しかったですけど、でもいつからか「なぜ現場と管理部門はお互い嫌い合うような状況なのだろう?」「現場のニーズと人事施策の間に何か大きな分断があるのでは」という疑問が生まれました。「こんな嫌味を言われずに事業現場や従業員のためになる施策はどういうものなのだろう。」人事施策という手段が目的になってはいけない。あくまでも組織に何かしらのメリットがなくてはならず、そうでなければ辞めてしまった方がマシだ。何か施策を実施するときに今でも自分に問いかけています。この時期、現場から割と近い部署に配属されたことで事業現場の生の声を聴くことができ、ニーズ感覚が養われました。
配属から10年以上経ち、日本はいよいよ人材不足という大きな課題に悩まされる状況になりました。減少の一途を辿る労働人口、年功序列の崩壊、転職市場の活性化。つまり新卒を大量に採用して使い捨てるという時代は終わり、”人”という資源が会社にとっていかに重要か、”組織”というシステムが機能させることでいかに成果を出すかというフェーズに入っていったのです。これは、私も10年以上の実務の中でひしひしと感じていきました。が、残念ならが”人”や”組織”をうまく扱えている企業やリーダーは少ないように思います。今後は、”人”や”組織”をうまく扱えるということが会社が持続的に成長していく前提条件(当たり前)になっているのです。それに伴い、人事としての役割も比例して大きくなっています。私は”人”と”組織”のポテンシャルを最大限に引き出し、それにより成果を達成できるような企業を日本に一つでも増やしたいと考えています。このように、事業の成果を出すためには”人”や”組織”の重要性を痛いほど感じているけれど、制度・昇格・報酬設定・組織改編などの施策についてどうしたらよいかわからないという経営者の方や人事部門の方のために、伴走相手としてお手伝いさせて頂きたいです。
もう一つ、”人”や”組織”に関する重要な経験をしました。大企業ではいくつもの人事機能が存在するため、人事としての全体像を把握することができませんでした。一つの会社に対して人事として責任をもって関与したいと考え、子会社に出向しました。ですが、出向した先でのチームが困ったものでした。そこでは、上司から部下に教えるということは全く存在せず人材育成などまるでなし、メンバーはロボットのように言われたことだけを実施するという働き方をしていました。業務の改善なんてしない、他の人の業務範囲にも興味がない、新しい企画など生まれるわけもない生産能力のない組織です。そんな状況なので「会社をブーストするために人事施策を!」なんて考えている人は一人もいませんでした。これは困ったな、と思いました。味方が一人もいない状況で、まずは自分のチームをどうにかしなければと感じ、必死になってチームの再建に努めました。その時に、人を動かすポイント、個人の集まりをチームとして機能させるための方法などを試行錯誤したことで、時間はかなりかかりましたがチームは生まれ変わったように自走するようになりました。このような事例で悩んでいる悩んでいる経営者やリーダーの方、多いのではないでしょうか。チームにてこいれしたい、組織開発に取り組みたいのに味方がいない、マネジメントの方法が分からない、そのようなマネジメントやチームビルディングへの疑問・質問に対して、アドバイザーや個人メンターのような形でお手伝いできればと思います。
チームは生ものです。放っておくと意図しない方向から腐ってしまいます。事業発展したくても、組織に足を引っ張られるということがあります。少しずつできるところから、自分の会社やチームに向き合いましょう。その際に、分からないことやお役に立てることがありましたら、お気軽にお声かけ頂ければ幸いです。
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