事業成果を出す組織を作るの実績紹介

人事制度の構築に現場見学は必要?設計に影響する物理的距離

先日、ご支援先の企業様にお願いし、1.5時間ほどかけて現場見学させて頂きました。

当初、企業様側では事業現場の見学は想定されていなかったようで、私からの依頼も少々驚かれていたようでした。「人事コンサルがなぜ作業着を着て作業場へ?」という戸惑いを感じましたが、私にとって現場は事業そのもの、従業員の皆様の働き方や連携を見ることができる最重要ポイントです。

なぜこのようなお願いをしたかと言いますと、それは、私の前職が物流会社だったという原体験が大きく影響しています。

入社当時から、「現場に行け」「現場をしっかり見てこい」と何度も上司から言われてました。メーカーのように商品があるわけではなく、サービスや作業工程を売っている事業において現場は非常に重要視されます。そこで発生する作業そのもの(付加価値)が商品で、現場が売上を上げる場所だからです。

物流の現場で繰り広げられている日常は、フォークリフトが目まぐるしく走り回り、怒号に近い連携の声が飛び交う世界です。私たち人事部門が本社ビルの中で一日を終えるのとは全く別の世界があります。人が現場に行かないと終わらない、拘束時間が長い、人と人とが顔を合わせて話さないと解決しないなど、社会行動学の塊のような場所です。

今回の現場見学においても、多くの気づきがありました。人事制度を作るときに、これらの現場感覚を含めなければその企業にマッチした制度とは言い切れません。人事制度を使うのはこの現場で働く従業員の皆さんだという終わりを意識して人事制度を作る必要があります。

 


事業現場の「物理的距離」が人事評価を狂わせる

現場見学において、私がまずチェックするのは「人の配置と接点」、そして「業務の流れ(動線)」です。

今回の現場は、狭い場所に多くの機械と薬品が配置されていました。組織における人の配置は、どうしてもこうした「機械や設備の配置」に依存せざるを得ません。

そのため、同じ部署であっても担当する作業機械が違う階にあれば、顔を合わせる機会はぐっと減ります。端らから見ると簡単に作業しているようですが、実は熟練の技が必要な工程ばかりだそうです。そして安全の徹底。機械や薬品による事故や労災と隣り合わせの職場で常に安全意識が要求されるのですが、人間不思議なもので隣に劇薬が置いてあっても慣れてきてしまう。きっと私も1週間と立たずして気の緩みが出てしまうだろうと考えていました。

ここで、経営者やリーダーの皆様に考えていただきたいことがあります。 「このような過酷な現場で、日々命がけで作業をしている従業員の『正しい評価基準』とは、一体何でしょうか?」

どのような目標を立て、どのように上司と部下が目標達成にむけたコミュニケーションをとればよいでしょうか。一つの工程に一人の作業員ということは、上長と同じ作業場にはいません。その状態でどうやって評価をすればよいでしょうか。


評価基準とは、「現場」のコミュニケーションや行動のプロセス

この問題は、工場や倉庫を持つ企業に限った話ではありません。IT企業やデスクワーク中心の、いわゆる「現場を持たない企業」であっても、まったく同じ観点を持つ必要があります。従業員がパソコンに向かって作業するオフィスフロアや会議室が「現場」であり、そこで作業のような付加価値やプロダクトが生まれているのです。

オフィスの立地、デスクの間取り、リモートワークの環境が違えば、人と人との連携の仕方は180度変わります。コミュニケーションの取り方も、情報の伝達方法やスピードもすべて変化します。同業他社で同じ事業をしている企業同士を比較しても、もしくは同じ企業内においても、全く異なる組織運営がなされているという意識を持ちます。

私は、評価基準とは日々作業している中で出現するコミュニケーションなのだと思います。技能検定のように個人の能力を測る試験は別ですが、基本的には人がいるところにコミュニケーションがあり、つまり評価基準が存在します。

例えば、管理職の評価基準として「リーダーシップ」や「業務遂行力」を設定したとします。「リーダーシップ」は部下や後輩がいて初めて露見されますし、「業務遂行力」は発注した企業からのニーズを受けて社内の人材リソースに作業を割り振り、最後に統合して納品するのですから何人もの人が絡み合っていることは想像に容易いでしょう。

つまり、私たちコンサルタントが事業現場を生で見ることの最大の意義は、「組織のどこに人と人との接点(ボトルネック)が発生しているのか」「現在の環境は、上司と部下が適切な調整をしやすい状況なのか」を、この目で確認することにあるのです。

綺麗なオフィスで組織図や評価シートを眺めているだけでは、現場の「本当の課題」は見えてきません。機械の配置、オフィスの間取り、メンバー間の距離感といった「現場のリアル」に徹底的に適応した評価制度を作ることこそが、従業員の納得感を高め、組織を強くする唯一の方法です。


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