2026年09月28日
先日、人事図書館様(東京・人形町)にて、セミナーに登壇してきました。
テーマは「事業と組織体制から逆算する「本質的な人事施策のつくり方」にしました。

テーマ設定は悩みましたが、せっかく人事図書館という人事に悩んでいる方たちが集まる場所でお話できるということで、私が13年間人事に従事する中で、ずっと疑問に感じていたことを出してみようと思いました。
それが、「人事と事業は、なぜこんなにも切り離されているのだろう」という疑問です。
すでにそうなりつつありますが、今後企業は人的資本経営がマストになると思います。
事業と人事が連動しなければならない時期が必ずきます。これができない会社はつぶれると言っても私は過言ではないと考えています。「人事」は経営だという確信があります。
しかし、現実にはまだ、人事と経営が十分につながっていない会社も少なくありません。
企業では、毎日のようにさまざまな組織の課題が発生しています。採用がうまくいかない、管理職が育たない、若手が辞める、評価制度に不満が出ている。そして、課題が持ち込まれると、私たちはつい「何をやるか」を真っ先に考えてしまいます。採用なら求人票を作らなきゃ。育成なら研修をしなきゃ。評価なら評価制度を改定しなきゃ。
しかし、このように課題が起きてから処置をしていたら、いつまでたっても行き当たりばったりの組織づくりになってしまいます。
経営者は人事以外にも考えるべきことがたくさんありますから、人と組織に向き合える時間は限られています。そのため、人事担当者が専門家として、目の前で起きている人事課題を処理するだけではなく、「なぜこの問題が起きているのか」を原因を発掘しなければなりません。
その際に重要になる視点は、「事業」と「組織」です。
今回のセミナーでは、この二つを中心にお話ししました。
組織体制は、気付かぬうちに会社をがんじがらめにする
そもそも、なぜ会社には組織があるのでしょうか。
会社の存在目的の一つは、「社会にサービス・付加価値を提供すること」です。事業はサービス・付加価値そのものです。
そして、事業を一人ですべて実行することはできないので、雇用されている人で仕事を分担します。
営業、製造、開発、管理。
会社が大きくなればバックオフィスの必要性も出てきますし、さらに仕事が増えればその中でも仕事を分ける必要が出てきます。
私は組織体制を、「事業を実行するための分業の形」と捉えています。そして、この組織体制の根底にある「事業」を意識してみると、すべての部署が「事業を実行する」ことをめざして動いているということが見えてきます。

こう考えると、本来、組織体制は事業と切り離して考えられるものではありません。
ところが、実際の会社の組織体制は、最初から完成形を描いてつくられるわけではありません。
特に50人、100人と社員が増えてきた会社では、事業の成長とともに少しずつ組織が継ぎ足されていきます。新事業や顧客が増えるにつれ、事業部を一つ足したり、新しい部門を置いたり、班を作ったりしていきます。経費の管理のしやすさを重視している組織もよく見かけます。その時々では、そのような組織にしようという決定は必要な判断だったはずです。
しかし、それを何年も積み重ねたり、メンテナンスをしないでいるうちに、
「この人は両方分かるから兼任してもらおう」
「部長にする人がいないから、とりあえず社長が見よう」
「この部署だけ人数が増えたけれど、今の体制のままでいこう」
と、少しずつ無理を強いることになります。
すると、いつの間にか、
「この部署があるから」
「この役職があるから」
「昔からこの分け方だから」
と、今ある組織体制に会社の方が縛られてしまう。
事業を動かすためにつくった組織体制に、逆に会社ががんじがらめにされていく。
組織体制づくりの難しさは、ここにあると思っています。
その組織体制で、意思疎通とマネジメントはできるのか
組織体制を考えるとき、事業や業務の効率性だけではなく、もう一つ見ておきたいことがあります。
その組織体制で、人と人との意思疎通やマネジメントが本当に機能するのかということです。
例えば、退職者がたくさん出ている部署があったとします。「最近の若手はすぐ辞める」「管理職のマネジメント力が足りない」と考える前に、その部署の組織体制を一度見てみます。
一人の管理職が20人、30人を管理している。
管理職自身もプレイヤーとして大きな売上目標を持っている。
部下が複数の拠点に分かれている。
その上の管理職も別の部署を兼任している。
このような体制で、「もっと部下とコミュニケーションを取ってください」「一人ひとりを育成してください」と求めても、そもそも難しいことがあります。
人の問題に見えているものが、実は組織の構造によって起きていることがあります。
ここを見ないまま、人にだけ「もっとマネジメントを」「もっと連携を」「もっと主体的に」と求めても、なかなか改善しません。
では、自社の組織体制が人を動きにくくしていないかを、どうやって確認すればよいのでしょうか。
私は、その共通言語として「組織図」を使っています。
セミナーの話になりますが、実施後の参加者アンケートを見て私自身が少し驚いたことがあります。
参加者から一番多くの反響をいただいたのが、「組織図」のパートでした。
具体的には、
「人事の前提として組織がある」
「組織図を眺めることが本当に大事だと実感した」
「改めて自分で組織図を作ると、いかに歪かが分かった」
「構造から考える足がかりとして組織図を見る視点が大きな学びだった」
といった感想があり、個人的にも改めてこの視点を今後も伝えていきたいと感じました。
この「組織図を見る」という非常にシンプルな行為ですが、実は以外と人事担当者でもそこを怠ってしまうことがあります。というより、その会社にいると当たり前すぎて改めて組織図を見ることが無くなってしまうんですね。
しかし、私はこの「可視化された図表を見る」ことの重要性を感じています。
人間の脳は、とても都合よく処理しています。「組織が大きくないから、組織図なんか見なくても把握できている。」と思っていても、自分の認識が事実と異なることはいくらでもありますし、大きな問題を無意識的に見ないようにしていることもあります。
複数人のプロジェクトメンバーの認識を揃え、課題を事実として受け取るために、「組織図」に起こしてみてほしいと思います。
組織図を見るときの2つの視点
ここからはテクニック的な話になります。
組織図を見るとき、私は大きく「縦の視点」と「横の視点」で確認します。
縦の視点は「誰が誰を管理するのか」、横の視点は「仕事をどう分けているのか」を見ます。
可視化したものは分析しなければ意味がありません。まずは違和感や疑問を持ったところを拾うことが重要。その際に、「縦の視点」と「横の視点」で見て頂ければ、網羅的に確認することができます。
具体的な視点は以下の通りです。
縦の視点では、
- 階層はいくつあるのか。
- 誰が誰を管理しているのか。
- 一人の管理職が何人を見ているのか。
- 意思決定はどこで行われているのか。

横の視点では、
- 仕事をどのように分けているのか。
- なぜこの部署が存在しているのか。
- 似た仕事が複数部署に散らばっていないか。
- 事業上重要な機能がどこに置かれているのか。

このような点で、「なんでこうなっているんだろう?」を洗い出してみてください。
ここからすぐに正解を出す必要はありません。むしろ大切なのは、体制的に動きづらい部分を見ること、そしてその当事者に話を聞いてみるという行動につなげることです。
その組織が作られた一つひとつの経緯を聞くと、その時点では必要な対応だったものばかりだと思います。しかし、それを何年も積み重ねていくと、いつの間にか「今ある組織体制を前提に、人や仕事を当てはめる」ようになります。
さらに、組織に組み込まれている当事者(チームのメンバー)の立場からは、構造を改革することは非常に難しい。骨組みの組み替えはボトムアップでは進められないのです。
事業を動かすためにつくったはずの組織体制に、逆に会社が縛られていく。
これが組織体制づくりの難しいところです。
だからこそ、ときどき今ある組織体制を疑ってみる必要があります。
必要であれば、役割や仕事の分け方、権限、組織体制そのものを見直していく。
組織体制を事業に合わせるのであって、事業を組織体制に合わせるのではありません。
ここから脱するためには、組織体制を事業・マネジメントのしやすさを起点に組み替えること。これが遠回りなようで事業が加速するポイントになります。
冒頭に戻りますが、人事が事業を熟知しなければならない理由はここにあります。事業と連動した人事施策を作る。そのために、人事の専門家を置く。事業を見て、組織を見て、そのうえで人と組織に何が必要なのかを考える。これが中小企業に求められる人事の役割だと思います。
今の組織体制、一度外から見直してみませんか?
「管理職がうまく機能していない」
「部署間の連携が悪い」
「社員が増えてから、社内の意思疎通が難しくなった」
「人事制度や研修を実施しているのに、なかなか組織が変わらない」
組織体制は、長くその会社にいるほど「これが普通」と感じてしまい、自社だけでは違和感に気づきにくいものです。
IGNITE HORIZONでは、人事制度ありきでご提案するのではなく、事業・組織体制・現場の状況を整理したうえで、本当に必要な人事施策を一緒に考えています。
「今の組織体制のままでいいのだろうか」と少しでも気になることがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。




