事業成果を出す組織を作るのブログ

管理職の大降格時代を考える

管理職ポスト保障時代の終焉

先日、日経新聞を読んでいたところ、このような記事を見つけました。

「管理職に大降格時代 スキルないと2軍、でも実はチャンス」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC288QD0Y5A120C2000000/

管理職の大降格時代、なんとも怖ろしいタイトルですが、実際に私も前職では48歳以上の管理職を対象に早期退職制度を実施していましたし、私自身も管理職降格の仕組み作りに携わっています。

10年前と比べて、管理職というポストの在り方が変わったように感じますが、その変遷について追ってみました。


管理職に昇格する=生活の保障だった

大企業では、過去の年功序列体制により、膨らみに膨らんだ管理職のやりくりに頭を悩ませています。

私も前職がプライム一部上場企業でしたので、状況はよくわかります。現在の大企業では、人員の適正構成と一般的に言われているピラミッド型(年齢層が上がるほど役職のポスト数が減る)にならず、管理職よりも一般社員の方が少ないケースも多く見受けられます。一人の一般社員に対して複数の管理職が作業員の取り合いになり、指示があちらこちらから出される。一体だれの指示を聞けばいいのだろう、若手社員の疲弊はもはや当たり前になっています。

日本の管理職が増えてしまった要因として、給与の支給基準が変化したことが挙げられます。

一昔前まで、給与は「生活給」「勤続給」という性質が強くありました。年功序列という考え方はまさに「生活給」をベースに報酬が設計されており、40歳男性であれば家庭があり子どもが2~3人いることを想定します。中学生くらいになり、学費も高くなるころだろう。一般的な生活のロールモデルが描きやすいですし、従業員の大半はそのロールモデルの通りのライフスタイルだったというわけです。

給与が生活費という側面を抱えている以上、会社側にも従業員の生活を保障する責任が発生します。そのため、会社側もよっぽどのことが無い限り、管理職のポストを用意します。そうなると永久的に管理職が増えていくことになりますが、若手が大量に採用できた時代はいくら管理職がいても困らないとも言えました。

毎年大量に入ってくる新人に対して、現在のような手厚いサポートもないため、即戦力になるまで時間が掛かる。管理職が多数いれば、パフォーマンスの上がらない若手を大量に抱えていても部署の実績をあげることができます。日本の新卒一括採用を支えていたのは、一般社員の仕事を一人でかつハイクオリティで対応できる管理職で、その方たちは一定数必要でした。

つまり、この時代の管理職に求められることは、同じ仕事をハイクオリティ(職人的・正確・早い・顔が利くなど)で対応できるようになることだったのです。

 

日本全体での人事異動

上記の日経新聞の記事で述べられている「管理職降格時代」。

生活給としての管理職ポジションは一転し、全員が管理職に就ける時代は終了しました。

現在、人材の価値は転職という名の市場に委ねられています。転職では、個人の持つ「能力」「経験」「役割」が切り売りされ、その希少性・汎用性の高さに比例して需要が増し、高い給与が払われるようになります。会社側は従業員と外部採用候補者のレベルを比べることができる。従業員は、社内ではなく社外の人(他の会社で「能力」「経験」「役割」を身に付けた人)と戦うことを余儀なくされているのです。

日経の記事によると、大降格時代は日本にとって「チャンス」だと言います。

それは、中小企業やスタートアップなど、ここから拡大・発展しなければならない企業において、大企業で培われた高い専門性は喉から手が出るほど欲しいからです。大企業で降格になった、あるいは早期退職に引っかかったからといって知識や経験を腐らせてしまうのは、日本としては非常に痛手です。本人的にも降格してまでも大企業に居続けるより、いっそ環境を変えるチャンスと捉えるほうが良いと記事は述べていました。

私もこの意見には賛成です。労働力がますます減少する中、さらに効率的に生産することを求められる日本にとって、日本全体での人事異動はてこ入れしてでも実施すべきでしょう。

個人の人生を見ても、この日本全体での配置転換の流れに飛び込めた方が幸せなのではないかと思うのです。つまり、今までは一度管理職に上がってしまえば、能力が頭打ちになった人材も窓際族として高給が保証されていたところから、その保証が外され降格・降給が当たり前になるのです。それであれば、同じ規模の給料になることが目に見えているのですから、必要とされる場所へ移った方がよいのではないでしょうか。

私がご支援する中小企業においても、大企業での経験やノウハウを欲していることをひしひしと感じています。(だから私のようなコンサルタントへ発注がある訳です)

例えば、前職が大企業の子会社役員や管理職だった人材が定年後に再雇用先として地元の中小企業へ転職しているケースは本当によく見受けられます。定年前に転職に慣れていた方ばかりではありませんが、自分の知識や技術が活かせる環境に60歳過ぎてから身を投じ、活躍されています。

条件があるとすれば、そのような人たちは自分の培ってきた技術や知識に絶対的な自信があります。そして、その技術や知識を横展開できるように言語化し、マニュアルに落とせるレベルまで標準化されています。理想的なレベルの新しく就職する企業の改善点を見つけ出し、臆せずに行動や発言をされている印象があります。これはおかしいよ、これは変だよ、こういう風にやっていこうよ、と問題提起されています。

あるいは、黙々と個人主義で働くということもできます。大企業に居る限り、どこまで昇進したとしてもマネジメントされる側から逃れることはできません。それが、中小企業へ移ることで自分の作業だけに集中する(個人プレーポジション)で働くこともできます。高い専門性とスキルがあるため、それが許されるのです。また、私は、社長の右腕や二番手ポジションが性に合っている人は意外と多いと思っており、そのような自分に合った働き方も叶うようになるのです。

組織はその大きさや事業のレベルに応じて必要な人材が変わっていきます。日本という国を大きな企業と見立てた時に、今まではマンパワーをかけて成長してきた、それがここからは少数精鋭で利益を出していかなくてはいけなくなるのですから、いかに国全体で効率のよい人員配置できるかがカギとなります。今まで大企業が手放さなかった人材が、この大降格時代に放出されるようになったこの状況を「大降格時代」と悲観せず、日本の人事異動として捉えられたらより発展するだろうと思います。

物的投資と人的投資

こんにちは、50人以下の中小企業にむけた人事・組織コンサルティング会社「IGNITE HORIZON」です。

先日、商工会議所が主催する「日本経済が抱える課題2025 人手不足経済を紐解き考える課題と展望」というセミナーを受講してきました。

人事として非常に参考になるお話でしたので、備忘録としてのまとめを共有したいと思います。

東京大学大学院 柳川範之先生のご講和でした


人口減少・労働力減少は避けられない

日本の人口減少が避けられないことは、日々のニュース報道などを見ると一目瞭然でしょう。50年後には8700万人まで人口が減少してしまうという統計も出ているほど、日本という国の規模は縮小しています。

それに伴い、労働力人口も大幅に減少しています。特に若手の採用は難しくなるでしょう。ということは、現在のビジネスモデルを顧みるタイミングが来ているということです。

例えば、製造業で若手を採用し、長年かけて熟練工に育てていく+その方たちが長年勤めてくれることで技術力を担保してきた企業があったとします。しかし、今後若手層が採用できなくなるということは、その企業のヒトを使ったビジネスモデルは破綻します。その崖っぷちギリギリのところに我々は位置しているのです。

思うに、人事施策の大半が波が来る予兆があると思うのです。社会の動向や事業現場で起きている課題を捉えていれば肌感覚として感じる方も多いはずです。

しかし、賃上げのように「急に大波が来た、困っている」と中小企業が報道されてしまうのは、対策のタイミングを見過ごしてしまったと言わざるを得ないでしょう。社会変化の前兆は、経営者であれば必ず気付く形で目の前に訪れているのです。


「ヒト」が企業の資産になる時代に

日本の人口減少、労働力減少が目前に迫る中で、人事界隈では人的資本経営が唱えられるようになりました。「ヒト」を持つことが企業の資産となる時代ということです。

これは、ビジネスに必要なもの「モノ・カネ・ヒト・情報」の4つの分野が全て資産になるという考え方で、「ヒト」を物のように扱う印象もあり、資産価値として考えるのは今までは嫌厭されていたのではないかと思います。

また、「ヒト」の資産は金額換算が難しいため、財務諸表に現れない指標になります。にもかかわらず、業績に直結している。同じ業界でも企業風土や組織開発、人材育成の力の入れ具合の差が業績に見事に反映しています。今後、「ヒト」資産の数値化はさらに加速していくでしょう。

「ヒト」が資産になるということは、日本全体で牌を奪い合うということです。このセミナーの中では「知恵の奪い合い」と表現されていました。人的資産の源泉は「知恵」であることを思い知らされます。

新卒市場、転職市場がこれだけ活性化されている中で、従業員側も自分が株のように市場商品であることに気付いてしまいました。「私って、転職市場に出れば売れるんだ」。その価値が従業員側に明るみになってしまった以上、企業と従業員は対等関係になったと認めざるを得ないということです。

従って、「事業成長の見込みが人的資産の投資に現れているか」が今後重要指数になります。人事施策の重要度が急上昇するわけですね。

 


物的資産と同じような投資プロセスを踏むべき

以上のことを踏まえ、本セミナーで一番勉強になった考え方は、物的投資と人的投資を比較し、「物的投資と同じように投資プロセスを踏むべきだ」ということでした。

例えば、ラーメン屋を経営しているとして、ラーメン屋が事業成長するためには新店舗を出店します。新店舗出店のためには、賃貸や設備の準備といった物的投資の必要があります。

この際、仮に現在の店舗で余っている机やいすがあったり、鍋やおたまがあるよ、ということであれば、新しく購入する必要はありません。つまり、現在自分が持っている資産を棚卸して、必要なものを考えるプロセスを踏みます。

これが人にも同じことが言えるという考え方です。タレントマネジメントも同じ考え方で、現在企業が持っている人員の能力やスキル、経験を棚卸しなければどのような組織を作るか戦略は立てられません。

私もこのタレントマネジメントの経験はありますが、大企業で全員がパソコンを持ち、自分のスキルを把握しているような状況でも情報収集は非常に大変でした。(結局終わらなかった)

一番大変だったのは、回収した情報をどのように保管・アップデートしていくかで、これはタレントマネジメントシステムを使ったとしても使い手がこの情報の貴重性・資産価値を感じていなければ、眠れる資産となってしまします。

きっと多くの企業で「ヒト」の情報は回収されず、回収しても投資計画に使われることも無く、お蔵入りしてしまっているでしょう。これが非常にもったいないと私は思うのです。情報を活用して採用計画を立て、従業員のキャリア計画を立てる。これが人的資本の投資計画です。

いつかその手助けになる施策を日本に浸透させたい。そのためにまずは目の前の中小企業様に対して真摯に資本の把握と計画立案をしていこうと考えたセミナーでした。

 

 

リーダー育成失敗の本質

コロコロ変わるリーダー像

とある企業様に対して、リーダー教育のためのご提案をしています。そちらの企業様は、近年組織が100人規模に急拡大したことから、組織を盤石にするために大きな予算を割いてリーダー層に対して教育投資をされているとのことです。地方中小企業ですが、ここまでリーダー育成に投資しているのは非常に素晴らしい取り組みで、リーダー育成の難しさをよく理解されているんだなと思いました。

どこの企業でもリーダー育成に失敗された経験はあるかと思います。もしかしたら、ずっと失敗が続いてしまっていることもあるかもしれません。リーダー育成をしたいと考えた時、真っ先に手を伸ばしてしまうのが「研修」かと思います。リーダー層を集め、外部から講師を招き、1日かけた研修を半年に1回行う。定期的な意識付けにはなりますし、現場から離れて現在の自分のチームを見つめなおす時間を設けることは無駄ではないでしょう。

ただし、育成を本気で成功させたいと考えるならば、順番を考える必要があります。下記の図で示すとおり、リーダー育成はステップをすっ飛ばすとうまくいきません。まず、経営層が「どのようなリーダーを求めてるのか」を定義付けし、経営層や育成実行部隊の中で共通認識として持つところから始まります。実は、これが年によってコロコロ変わってしまい、選抜者が毎年のように変わってしまう企業も多数見受けられます。

リーダー育成失敗の本質の一つ目はここにあります。「経営層が数年我慢してでも育成したいリーダー像」を共通認識を持つ必要があります。具体的に人を名指ししてもいいでしょうし、要件をあげてもいいと思います。御社に一番マッチするリーダーの要件、他社の人材との差別化要件を経営層が自覚するということです。

ファーストステップの要件定義は、最初にがっちり固めてしまうのではなく、走り出してから少しずつ修正をかけてもいいと思っています。また、人材育成は長期戦ですので、社会的なスタンダードが途中で変わってしまうということもあるでしょう。実際、リーダーに求められる資質は変化しています。がむしゃらに日本人が働いていた時代は「業績達成」「予算達成」を求められ、効率が重要視されていました。一方的な部下への働きかけです。現在ももちろん売上向上はリーダーの責任ではありますが、それ以外にも部下との信頼関係構築・コミュニケーション・人材開発など、チームマネジメントが求められてきていると実感します。

 


リーダーになれる人材は限られている

リーダー育成失敗の本質二つ目は、リーダー候補人材のポテンシャルの見誤りです。

今までの日本社会は、適性がない人でも年功序列という形で何らかのポジションを与えてきました。適性よりもその会社に深く根差し、その会社について十分理解していることに重きを置いたのです。年功序列・勤続主義の昇給は労働者が勝ち取った権利であり、これに関しては日本に誇る素晴らしい制度であったと思います。しかし、現代は先述のとおりマネジメントの難易度が上がっている。業績を追いかけるだけのリーダーではチームは回らなくなってしまっています。

私の個人的な意見ですが、リーダーに向いているかどうかは入社時点である程度決まっていると思います。それは、性格面の影響が非常に強いからです。例えば、発言しない大人しいタイプの人がミーティングを引っ張っていけるようになるにはかなり時間がかかります。そもそも本人のやる気の要素も大きく、よく一般的に言われるように人を変えるのは非常に難しい。リーダーシップを渇望していない方にトレーニングをしても効果は薄いと思います。

そのため、リーダーになれる人材(どの程度のレベルのリーダーになれるか)を見極めなくてはいけません。ここで道を誤ってしまうのが、「リーダーに必要な素質」は「優秀な部下である素質」とは若干異なります。「上司の言ったことを正確に実行できる力」と「チームをけん引して目標を達成する力」は実は全く別物です。それは、経営者とNO.2人材の性格が異なることを見ればわかると思います。

しかし、「昇格」というものは現在のリーダーから評価されて初めて候補として名前が挙がります。つまり、「いい部下」が昇格していく仕組みになっています。となると、いつまで経っても参謀タイプとリーダータイプが見分けられません。実は、上位の役職まで上がってしまった人の中にも意外と参謀タイプの方も多く、リーダーシップを部下に発揮するのが苦手な方も見受けられます。

また、部下を評価する際、リーダーは自分と似た人を選びます。自分自身が成功事例ですから、成功事例に則ることは人選以外の場面でもやりがちです。このやり方をやっていると、現在のリーダーの下位互換のような方が選ばれていき、組織に新しい風を吹かせることはできません。VUUCAと呼ばれる先行き不透明なこの時代、現在のリーダーが未来のリーダーの最適解とは限りません。むしろ、現在の会社全体に不足している部分から逃げずに向き合い、補ってくれるようなリーダーを育てていくことをする会社が生き残っていくのでしょう。社外にアセスメント(人材評価・分析)を依頼することは一つの策になります。

いかに次のリーダーをポテンシャルから見極めるか。社外に目を向け、社会の流れに沿った人材をピックアップできるか。ここが2つ目の要となります。

 


「経験を積ませる」の責任は誰がもつ?

リーダー育成失敗の本質の最後は、責任の所在がないことだと思います。

リーダーの選抜が終わると、次はどのような経験を積ませるかを計画し、対象者に経験を付与していきます。経験の付与は2つのパターンがあります。一つ目は現在の部署で今よりも負荷のかかるプロジェクトのリーダーを任せる、もう一つは経験を積むことができる部署異動をさせる、この2つです。

そして、どちらにせよ「経験を積ませる」場合、定点観測をする人・部隊が求められます。育成失敗しているときは、この「経験を積ませる」ことをその部署の上長に丸投げしているケースがほとんどです。すると、誰が責任をもって育成するかが分からなくなってしまい、育成されている状況が放置されてしまうことが多々発生します。それで「育成がうまくいかない」と悩んでいるのは非常にもったいない。必ずプロジェクトとして推し進め、責任を受け持つ人・部隊を置きましょう。

これは1つ目の失敗の本質にもつながりますが、実際に育成を任される現場の上司に育成すべきリーダー像が共有されないことも大きく影響します。人は放っておいたら自力で成長することは難しく、上司からの手助け・引き上げがあって初めて階段を登れるようになります。しかし、育成する上司側から考えてみてほしいですが、ただ育成計画を立てさせたり、ただ育成を任せるだけではこの上司に当たる人は何もモチベーションがありません。さらには、上司自身が異動・退職してしまうと育成プロジェクトの熱意を引き継ぐことは難しいでしょう。そのため、育成協力を上司側に説明し、上司のミッションに組み込むようにします。上司自身が評価される仕組みも有効でしょう。

さらには、選抜者本人にも意識付けが必要です。どのくらいの期間で、ここまでレベルアップしてほしいと会社側が期待を示すのです。「経験」という機会を付与していること、その機会を無駄にしないでほしい旨は何度も伝えなくてはいけません。これはモチベーションを上げるための意識付けですが、モチベーションを下げない工夫も必要です。「経験を積ませる」の多くは泥臭いことを経験が多いかと思います。自分のやっていることを見ていてくれるのか、中長期的に評価してくれるのかが気になる点ですので、上司が誰に報告するのかが明確に見える方がよいでしょうし、例えば上司が変わるなど不安要素が強くなる状況でも外部からの定点観測があれば、安心することができます。

 

以上の内容は管理職育成を想定しています。中小企業は限られた従業員数で成果を出し続けなくてはいけません。①まず育成人材の目標(リーダー像)を据える ②リーダーを担える人材を見極める ③経験を積ませている間の定点観測 この3つの本質を間違えなければリーダーは必ず育成できると言えます。これらは自社で具体的な育成内容はまた記事にしたいと思います。