事業成果を出す組織を作るの実績紹介

『作業者』と『管理職』の間には高い壁がある。「昇格候補者」の正しい育成タイミング

当社へのお問合せの中で、「人事制度がうまくいかなくてね…」というご相談よりも、組織のお悩みを頂くことが多いです。

「社員が定着しない」
「権限委譲が進まない」
「社長しか判断できない」
「組織が大きくならない」

このような組織のお悩みの中で、最終的に行き着くテーマがあります。「管理職が育たない」というお悩みです。

「管理職が育たない」と一概に言っても、状況はさまざまです。そもそも人がいないのか、後継がいないのか、レベルが低いのか。社長様と現場の状況をヒアリングして、正しい状況を把握します。

このうち、「人はいるけど管理職レベルまで至っていない」に関しては、本人要因だけでなく、育成要因も大きいと私は考えています。もっと具体的に言うと、『作業者』と『管理職』の間には高い壁があるにもかかわらず、それを乗り越えさせるような育成になっていないことに関して私は長年問題に感じており、人事コンサルとしてそこを乗り越えていきたいと思っています。今回はその件についてじっくり考えてみようと思います。


「昇格」というシステムに隠されたボトルネック

人はいるけど管理職レベルまで至っていない」状況は、「育成計画をたてていない」「研修をやっていない」という単純な話ではありません。

まず、「昇格」というシステムについて考えてみます。

昇格は、「役職を担えるようになったらポストに就かせる」しくみです。人事制度を作る際には、昇格者をどのように選んでいくかといった昇格審査のプロセスについても作っていきますが、そこで出るのは「どのレベルで次のポジションへのGOを出すか」という話です。

昇格者を選ぶ側としては従業員の潜在能力までは読み取ることはできないため、「役職が人を作る」という考えで従業員を昇格させるのは非常に怖いものがあります。役職者が増えれば人件費が上がる、それは経営に直結します。今頑張ってくれている人に期待はしたいけど、確信がないと昇格させられない。そのため、結果的に「人が役職を作る」企業が多いのが現状です。

「人が役職を作る」組織では、その職位に就く前に昇格ポジションレベルの仕事を任せ、成果を発揮してもらわなければなりません。そして、この「昇格前の試されている期間が発生してしまう」ことこそが「昇格」システムのボトルネックなのです。

この期間は、報酬が上がらないにもかかわらず、現在の役職より重い責任(マネジメントも含めて)が任されてしまうため、「会社は一体何を考えているんだ」「このまま昇格がなくて責任だけ増やされていったらどうしよう」と本人としては非常にもやもやします。もしくは、昇格を控えている時期にもかかわらず一向に責任が大きい仕事を任せてもらえない場合にも同じことが言えます。上のポジションに進みたいのにマンネリした業務ばかりやっている。これも本人のモチベーションが削られます。

この評価者と本人の認識のずれは、退職を招いてしまうことを理解してほしいと思います。「あのエースが退職するらしい」「これからというところだったのにもったいない」という話がよくあると思いますが、多くの場合はこのような意識付けがうまくできないことが原因です。

どちらにせよ、「昇格を控えている(期待している)」こと、「昇格するまでは一つ上のポジションを想定して仕事を振る」こと、「そこで成果をだせればきちんと評価して昇格を申請する」ことを評価者と部下と約束し、置かれている状況を握ることが重要になります。ここまでやって初めて人間は見る方向を揃えることができます。

 

評価されない不安については、別の記事に書いていますのでご興味あれば御覧ください。↓

「何が評価されているかわからない虚しさ」を社員が嘆く理由

 

 


『作業者』が『管理職』として機能しない理由(カッツモデル)

現場での「作業者」としての卓越した能力と、チームを動かす「管理職」としての能力は、全くの別物です。

それを裏付けている理論を一つご紹介します。ロバート・L・カッツが提唱した「カッツモデル」というフレームワークです。

カッツモデルでは、従業員をロワーポジション、ミドルマネジメント、トップマネジメントと3階層に分け、それぞれに必要なスキルの移り変わりを見ています。ロワーポジションでは、テクニカルスキル(技術・業務遂行など)の分量が多いのに対し、トップポジションはコンセプチュアルスキル(リーダーシップ、企画提案力などの概念化)が必要になると言っています。

では、ロワーポジションからトップマネジメントまで上がっていく中で、どのようにスキルを変化させていけばよいでしょうか。

カッツモデルでは、ロワーからミドル、ミドルからトップに上がるスキルの習得は断絶しているという点が特徴的です。昇格するにはコンセプチュアルスキルを習得し、テクニカルスキルを手放していかなければなりません。

ここでのポイントは、ロワーポジションの仕事をずっとやっていてもコンセプチュアルスキルが身につかないということです。上の職位に上がるためには、どこかで別の経験を積んだり座学で理論を学んだり、自分のマネジメント方法を確立させるなど、日々の業務から少し離れて実践を体系的に学ぶことが必要になります。

皆さんの企業の等級定義はロワーポジションとトップマネジメントのスキルが一連になってしまっていないでしょうか。

私が構築支援する人事制度では、等級制度はカッツモデルの考え方を基に構築します。具体的には、「作業者」と「管理職」の壁を乗り越えてもらうことで、等級が上がっていくようにします。等級制度は要するに昇格要件です。「~~ができる人が○○というポジションに就く。」という基準を文章にしたものです。この階層間での「スキルの断絶」を包括した等級制度を作ることが私は重要だと考えています。


昇格させてから育てるでは遅い、管理職育成

ここまで書いてわかることは「昇格してから育成する」では遅いということです。

昇格候補者は昇格前に成果を出さなければならない。そしてカッツモデルでいうところの「スキルの断絶」を乗り越えなければ次の階層に行けない。それはつまり、育成は昇格前から始めなければならないということです。

  • 昇格してから育成してしまう。
  • 昇格候補者に大きな役割を与えてしまい、本人が混乱する。
  • 昇格候補者のはずなのに役割が増えず、育成してもらえない。

これが多くの会社で間違えている人材育成の過ちです。これは育成がうまくいかない。だからこそ、会社として「昇格」フローを見直し、育成のプロセスを根本から設計し直す必要があります。

優秀なプレイヤーに突然重い荷物を背負わせ、野放しにするのでもなく、かといって「まだ早い」とチャンスを与えずにモチベーションを削ぐのでもありません。昇格というイベントをただの「結果発表」にするのではなく、そこに至るまでのプロセスを設計し、本人と会社の間で「何を期待し、どこを乗り越えればそのポジションに立てるのか」を正しく握る。

それができて初めて、現場に「管理職が育つ土壌」が生まれます。

プレイヤーの延長線上にマネージャーはありません。だからこそ、その高い壁を会社がどう設計し、どう伴走して越えさせるか。そこに目を向けられた企業から、組織の停滞は確実に解消されていくはずです。

 

「管理職が育っていない」と感じたら

プレイヤーからマネージャーへの脱皮は、個人の努力だけで達成できるものではありません。会社が明確な「育成の設計図」を用意してあげる必要があります。

管理職が育っていないのは、育成開始のタイミングが遅いからなのかもしれません。貴社の組織に、次世代を育てるための「仕組み」をインストールしませんか。評価制度の健康診断から、管理職昇格審査の設計まで、組織を次のステージへ引き上げるための伴走支援をいたします。

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