事業成果を出す組織を作るの実績紹介

1on1で本当にやるべきこととは?「傾聴」だけでは機能しない理由

「1on1では、まず傾聴しましょう。」

これは本当によく聞く言葉です。しかし、私は「1on1=傾聴」という説明には少し違和感があります。

そして、実は、私は部下としては1on1の時間が好きではありませんでした。

上長と何を喋ったらいいか分からないですし、それでも定期的に時間だけはやってくる。人事制度の運用の時間として、義務的に消費されているようにしか感じませんでした。

しかし、自分自身が上長として1on1をやるようになってから、この時間の重要性を実感するようになったのです。今では、この対面の時間なくしてマネジメントはできないと確信しています。

なぜ、あれほど1on1が好きではなかった私が、そう考えるようになったのか。

結論から言えば、私は1on1を「上長が部下の状況を把握し、必要な情報を集め、次のマネジメントにつなげるための時間」と考えています。傾聴はそのために必要な手段の一つですが、傾聴そのものが1on1の目的ではありません。

今回は、私自身の1on1に対する認識がどう変わったのかも振り返りながら、1on1を何のために行うのかを考えてみたいと思います。


1on1の始まりとなぜ「傾聴」が強調されるようになったのか

1on1はどこが起源なのでしょうか。時系列で見ると以下のようになっています。

アメリカ1970年代~1980年代

  • Andrew Grove が、部下との定期的な1対1の面談をマネジメントの基本として実践。
  • 1983年に出版された High Output Management では、マネジャーと部下の「定期的な1on1」が詳しく紹介されています。
  • 当時の目的は「評価面談」ではなく、情報共有・課題解決・部下の育成でした。

人事コンサルの読書メモ:ハイアウトプットマネジメント(アンドリュー・S・グローブ)

High Output Managementついては、上記ブログで書籍紹介をしていますので、ご参照ください。

 

アメリカ1990年代~2000年代

  • GoogleIntelMicrosoft などのテック企業で一般化。
  • 「上司が答えを与える」のではなく、「部下の成長を支援する対話」の場として発展しました。

アメリカ2010年代

  • エンゲージメントやコーチングの考え方が広まり、欧米企業で急速に普及。
  • 「評価面談とは切り離して、毎週・隔週で実施する」という運用が定着していきました。

日本では2015年前後から

  • ヤフー株式会社 が積極的に導入し、書籍や講演で発信したことで一気に認知度が上がりました。
  • その後、IT企業だけでなく一般企業にも広がりました。

 

私が社会人になったのは丁度その頃でしたが、1on1という考えは日本にまだ浸透していませんでした。そこから数年たって、1on1の施策が取り入れられていきましたが、当時、「1on1なんてまた横文字の変な概念が入ってきた。こんなのただの面談でしょ」と思ったのを覚えています。既存の「面談」と区別するために「1on1」という呼称を使うことで、日本全体に広まっていったと推測します。

その当時を状況を思い出すと、日本全国でメンタル不調が注目され、各社で休職社員が一気に増えた時期でした。私もいち人事課員として、毎月一定数の健康保険の傷病手当の申請を手続きしていた記憶があります。パワハラ防止法が施行したのが2020年とのことなので、「パワーハラスメント」という単語を徐々に聞くようになっていったのもこの頃からではないでしょうか。

そこで、上長と部下の関係性が見直されていきます。上長は一方的に部下を怒鳴りつけたり、意見を押し通すのではなく、部下の考えや意見を上長が聞きながらチームメンバー全員で目標達成にむけて動いていこうという流れになったのです。

そうなると、上司が部下に武勇伝や訓示を喋りすぎる「面談」という形が好ましくなくなっていきます。「1on1」では上長と部下双方向のやり取りをベースにしますので、話すのではなく「聴く」(「門構えの聞くではなく耳偏に心の「聴く」で」という説明も何回も聞きました)を意識しましょう、となっていったのだと思います。私の肌感覚ですが、当時の潮流はこのような方向に向かっていました。

今振り返ると、日本企業にも以前から上司と部下が1対1で話す「面談」はありました。そう考えると、1on1によってまったく新しい場が生まれたというより、それまでの「面談」に染みついていた上司主導の型をアンインストールするために、「1on1」という新しい名前と「傾聴」という新しい作法が必要だったのではないか。

これはあくまで、当時人事としてその変化を見ていた私なりの解釈です。

そして私は、この「アンインストール」は必要だったと思っています。

ただし、その結果として「1on1=傾聴」という新しい型に、今度は私たちが縛られてはいないでしょうか。


次の一手を打つための「現場のリアルな変数」を得る

私は、この「傾聴」という姿勢について、受ける側としても実施する側としても常に疑問に思ってきました。

まず傾聴を受ける側の場合、こちらが話をしなければならなくなりますが、そもそもその上長のことを信用していなければ話そうという気が起きません。ましてや、「この人、この時間を埋めるために傾聴しているのか」と感じ取ったときには部下側も時間を潰すための話しかしなくなります。逆に、傾聴する側に回った時は、雑談や文句を否定せずに受け取る余裕を用意しなければならないため、たった30分でも非常に疲れます。「傾聴すること」そのものを1on1の目的にしてしまうと、上司にとっても部下にとっても苦しい時間になると思っています。

では、1on1では何をしなければならないか。1on1は上長の情報収集の場と定義しています。

少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、私は1on1は上長のための時間としています。

管理職が1on1で集めるべき情報の一つ目は、日報や定例会議では決して見えてこない部下の「本音」と「違和感」です。

現場で実際に手を動かしているからこそ、部下たちは様々な小さなひっかかりや「このままでいいのか?」という違和感を抱えています。しかし、大勢の前やギスギスした雰囲気の中では、その声を吸い上げることはできません。

傾聴はそのための「入口」にすぎません。部下が安心して本音を話せる状態をつくり、現場で起きているリアルな不協和音や課題の芽をいち早くキャッチアップすること。それが、組織のトラブルを未然に防ぐマネージャーの最初の仕事です。

<ご参考:1on1で管理職が把握したい4つの情報>

①現在の仕事の状況
何に取り組み、どこで困っているのか。業務量や進捗だけでなく、本人が仕事をどう捉えているかも確認します。

②本人の本音や違和感
仕事や職場に対して感じている小さな違和感、不満、周囲との関係など、会議や日報では出てこない情報です。

③上長が考える期待に対する反応
育成計画や今後の取得してほしいスキル(マネジメント含め)を伝え、その時に本人のポジティブ/ネガティブな反応を見る。

④ずれに対する対策と認識すり合わせ
上長の上の職制者に上申する、上長が調整に入るなどの対策を伝え、それでも認識がずれる場合は話し合いですり合わせられる状態か確認する。


1on1は人事制度と日常業務をつなぐ接続点

人事制度の運用において、1on1は「会社が社員に期待すること」と「社員が日々行っている仕事」をつなぐ接続点です。この文脈で言うと、1on1は運用フェーズの核心であり、人事制度が陳腐化して頓挫しないためには1on1が不可欠です。

人事制度は「等級」「報酬」「評価」を連動させる施策ですが、その中でも特に「評価」については、

  • 上長が部下のやることを管理している。
  • 部下の期待値/乗り越えてほしい壁を事前に伝える。
  • 日頃の仕事を見ているよという場を作る。

これらの下地が必要で、これらの前提ができていて初めて評価が成り立ちます。

つまり、評価は「評価するとき」だけでは成立しないのです。

日々の仕事の中で、

「今、何をやっているのか」
「どこで困っているのか」
「次に何を乗り越えてほしいのか」
「会社はあなたに何を期待しているのか」

を上長と部下が共有している。

その積み重ねがあって、初めて評価面談で「この半年をどう評価するか」という話ができます。

逆に、この過程がないまま評価の日を迎えれば、

「半年間そんなこと一度も言われていない」

「そんなことを期待されていたなんて知らなかった」

ということが起こります。

これは、評価基準だけの問題ではありません。人事制度と日常のマネジメントが切れてしまっている状態です。

もちろん、中小企業ではこのような1on1施策は肌に合わないことも多く、特に職人肌の会社様では1on1の定着は難しいのは正直なところです。しかし、人事制度に失敗している多くの企業様では、1on1を疎かにするあまり、この評価制度を成り立たせる上長と部下の関係性を築くことが難しい。結局「人事制度って面談ばっかり増えて面倒くさくない?」「そんなに話すこともないし」となって運用されなくなってしまうことが多いと思います。

実際、私も1on1という形式そのものを導入することが正解だとは思っていません。

大切なのは、「1on1を実施すること」が目的になるのではなく、上長が部下の状況を継続的に把握し、期待を伝え、必要な軌道修正をする機会があることです。

1on1は、人事制度のためではなく、マネジメントのために使ってほしい時間です。

このように、評価の側面から見ても、傾聴は目的ではありません。部下を知り、会社や上長の期待を伝え、そこで得た情報を次のマネジメントにつなげる。そのための手段の一つが傾聴です。もし1on1で「何を話せばいいのか分からない」と感じているなら、話題を探す前に、「この部下をマネジメントするために、私は何を知る必要があるのか」から考えてみてはいかがでしょうか。


人事制度の運用にお悩みの方へ

「評価制度をつくったけれど、うまく運用できていない」
「管理職によって、評価や部下との関わり方にばらつきがある」

人事制度と日常のマネジメントがつながって、初めて制度は機能します。IGNITE HORIZONでは、制度設計から管理職による運用・定着まで一貫してご支援しています。まずは、現在感じている組織・人事のお悩みをお聞かせください。

株式会社IGNITE HORIZON(イグナイト ホライズン)

<人事制度・組織づくりの無料相談はこちら>