事業成果を出す組織を作るの実績紹介

中小企業の業績連動報酬を見直すべき理由「報酬制度は組織風土」

今回は、多くの中小企業の社長様からご相談をいただく「業績連動報酬」や「売上手当」のあり方について、最近の大きな時事ニュースを交えながら考えてみたいと思います。

少し前になりますが、プルデンシャル生命の金銭詐欺問題で、経営陣の謝罪会見がありました。現時点では、100人を越える社員等が約500人の顧客から計約31億円をだまし取っていたとされています。
なぜこのようなことが発生していたのか。プルデンシャル生命の報酬体系から、考察してみたいと思います。


報酬制度と組織風土の不都合な関係

プルデンシャル生命といえば、歩合制での報酬体系で有名です。
私の周りでも、「もっと稼ぎたい」「自分の実力を試したい」という野心の高い同僚が転職していったように記憶しています。

プルデンシャル生命に応募する人は、このような自分の実力を試したくてたまらない猛者たちが集まっているところに入っていこうとするわけですから、自信があるか刺激がほしい人材が集まってくるのは容易に想像できます。そしてそのような人材が集まれば、個人の戦闘力を重視する「ソルジャーマインド」の組織が出来上がるのは当然と言えます。

このように、報酬制度と組織風土は非常に連動性が高い特性があります。従業員が労働するのは報酬を得るためですから、インパクトが大きいのは想像が容易いと思います。報酬を支払う基準やルールが人材を呼び、マッチしないと判断すれば退職していくので、結果的に組織風土が出来上がる流れです。

しかし、中小企業にてお話を聞いていると、多くの中小企業の社長様とお話ししていると、この「報酬制度と組織風土の連動」を認識できていないケースが多いように感じます。

よく耳にするのは、以下のような組織課題です。

  • 「組織が指示待ちで動かない」

  • 「社員が昇格したいと思っていない」

  • 「もっと能動的になってほしい」

「組織が指示待ちで動かない」「昇格したいと思っていない」「能動的になってほしい」という課題ですが、内部を分析してみると評価給を取り入れていなかったり、定期昇給のように全員一律での昇給方式を取っているケースが多く見受けられます。要するに、報酬が頑張りと連動していない。これでは、いくら従業員に能動性を促しても、従業員が能動的になるメリットはないので組織は変わらないでしょう。「報酬制度をそのままにして従業員を頑張らせたい」というご要望が意外と多いのですが、それは難しいということです。

これは、人件費を上げたくないという経営的視点以外にも、「報酬制度と組織風土は連動している」という基本について社長様の認識が薄いケースが多いように私は感じています。そのため、人事制度構築の伴走をしている中で、組織を変えたいのであればその組織風土に合わせて報酬制度を改定しなければならないことを徹底してお伝えしています。これは組織作りのポイントの一つですので、ぜひ頭の片隅に置いておいて頂ければと思います。


安易な「業績連動型報酬」や「売上手当」ががもたらす副作用

そして、もう一つ気付いたことがあります。中小企業において、目的もなく業績連動報酬を取り入れている企業様が意外といらっしゃることです。

しかも、営業会社や営業部署ではない従業員にも業績連動を求めていることと、賞与ではなく毎月の給与に業績連動金額が設定されていることに驚いています。導入目的を確認してみると、「従業員の能動性を促したい」と伺います。

個人的な意見ですが、毎月の給与に関して言えば、安易に業績連動型報酬を導入するべきではないと私は考えています。その理由をまとめてみました。

① 営業部門以外のモチベーション低下

まず、従業員の能動性は営業部隊でない限り、業績に影響が生じる明確な基準を設けることはできません。間接的なKPIはあるにせよ、新規案件を受注できる部署ではない限り業績を直接上げることは難しいはずです。そして、給与は毎月支給されます。単月で業績を切って給与に反映させてしまうと、目の前の作業に必死になり、長期スパンでの企画やプロジェクトに入るモチベ―ションが下がってしまいます。

② 目先の数値を追うことで「見えない仕事」が放置される

目先の数値を追わせるようなKPI設定も組織を壊す原因になります。KPIはたかが目標、されど目標です。その影響は思っている以上に大きく、単月という短いスパンで業績を切って給与に反映させてしまうと、従業員はどうしても「今月の目の前の数値」を稼ぐことに必死になってしまいます。そして、業務の優先順位がすべてKPIに縛られて動く組織が作られるという訳です。

例えば、美容室で新規顧客受注数をKPIとし、毎月の給与に反映させるとします。そうすると、従業員は新規顧客にしか目がいかなくなります。既存のお客様を蔑ろにしてしまったり、顧客獲得に直接つながらないような、清掃業務や用具の買い出しなどの見えない仕事(削れない雑務・共通業務)を誰もやらなくなります。

③ 組織のマネジメント崩壊とギスギス化

極めつけはマネジメントです。マネジメントは長期的な取り組みですので、単月の業績KPIへの即効性が薄いのです。新規顧客をKPIに設定されたマネージャーがマネジメントにどれだけ工数をかけるようになるかという点については疑問が残ります。

また、先述の内容で言うと、報酬制度が組織風土を作ります。ということは、業績連動報酬を望んでいるような人材が果たして本当に御社の求める人材かどうか、というところも考慮した方がよいでしょう。他部署を蹴落として自部署に売上を立てるような人材が社内にいれば、組織は一気にギスギスし、協働意識を失います。家族経営的にやっている中小企業は、こじんまりしているアットホームさが強みのはずです。そこに競争原理を導入してしまっては、折角の強みが活かせないどころは消失してしまう。組織風土は一度消失してしまったら復活させるのは至難の業です。人事制度を慎重に進めなくてはいけない理由はここにあります。


すべては「報酬制度」という引き金から始まっている

プルデンシャル生命では、この業績連動報酬の副作用が行くところまでブーストしすぎてしまい、顧客に対して詐欺を働いてまで業績を上げることに従業員が注力してしまったのです。そして恐らくですが、それを良しとする組織風土があったはずで、すべての起点は報酬制度から始まっています。上記に添付した日経新聞の中でも、記者会見にて下記のように言及されています。

プルデンシャル生命は、営業成績が給与に連動する「フルコミッション(完全歩合)」に近い報酬体系を取ってきた。平均報酬は年収換算で1300万円強に達する一方、実績次第で収入が激減するリスクもある。得丸氏は「金銭に過度な執着を持つ人を引きつけるリスクがある」と述べ、報酬制度を見直すと言明した。

(日経新聞2026年1月23日朝刊より引用)

中小企業の業績連動はここまで過激なものではないにせよ、業績連動報酬にはこのような劇薬的作用があることは忘れてはいけません。手を出すかどうかは慎重に決定されるべきと思います。

 


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