2025年04月21日
人事制度を導入するために組織診断をしていると、トップダウンとボトムアップという話にぶつかります。
多くの経営者様が「どちらが良いのだろうか?」と悩まれますが、結論から言えば、どちらか一方が正解というわけではありません。大切なのは、組織の必要な部分に、必要な手法を正しく使い分けられているかどうかです。
今回は、大企業との構造的な違いを紐解きながら、中小企業においてボトムアップが機能しない本当の理由と、それを打破する条件について解説します。
「自称トップダウン」な中小企業の意外な真実
従業員面談において、会社のネガティブな社風として、従業員様から「うちは完全なトップダウンだから…」というお話をよく伺います。
もちろん、中小企業は社長が自己実現するために存在します。とくに、創業者が社長に就任している企業ではトップダウンの傾向が強く出るでしょう。また、中小企業では社長と従業員の物理的・心理的距離が近いため、そのように感じることは多いかもしれません。社長の指示がダイレクトに個人に向かうことは大企業ではあり得ないことで、良くも悪くも受け取る側からしてみると言葉の重みは大きいものがあるでしょう。
また、一挙手一投足社長に見られてしまうわけですから、それでは従業員が息苦しくなるのは非常に理解できます。特にコア事業は社長の一番の得意分野であることが多く、社長の考えが色濃く反映されることは間違いないです。社長がいちいち口を出してくる、新しい取り組みを潰されるといった状況に従業員が疲弊してしまいます。
しかし、大企業と比べると、実は中小企業のほうが、皮肉にも「現場の裁量(依存度)」がはるかに大きいのが現実です。
小さい会社では、担当範囲を細分化することができないため、社員一人一人がある程度広い範囲を担当しなければなりません。社長も現場のことは意外と分からないことも多く、そうなると一定の権限の範囲内であれば、自由に動き回ることができます。
一方、上場企業などの大企業こそ、社長を中枢とした強烈なトップダウン組織です。各部署における業績ノルマの達成/未達成は厳しく評価され、優秀かどうかは噂が一気に回ります。加えて、フジテレビの件が分かりやすいですが大企業におけるトップの意向は絶対です。出世競争や社内政治も蔓延し、トップの意見を確実に実行できる人材(イエスマン)が権力を握っていきます。人事権も社長にあるため、意向に沿わない人は異動させることで辞めさせずともその人材を一瞬で組織から外す(いわゆる左遷)ことが可能です。
その点、中小企業においては(一部の行き過ぎた企業を除き)、ここまでの冷徹で強烈なトップダウン組織を作ることは構造的に難しいと思います。
まず、部署が少ないので人事権をチラつかせた「左遷」が実質的に機能しません。さらに、それどころか、現場の実務を特定の従業員が取り仕切っているため、「今ここで辞められては会社が回らない」という弱みを社長側が握られています。無意識だとは思いますが、それを逆手に取った方はある場面では社長よりも発言権が大きくなったりもしているとお見受けしています。
中小企業の社長の皆さんは、会社を大きくしたいと考えていると思います。それはつまり、組織をさらにトップダウンに変えて締めていくという意味になります。しかし、従業員側は現在のレベルでさえトップダウンに対するアレルギーを感じている。この「構造のねじれ」をいかにして突破するかが、組織開発の大きな壁となっており、いかにして突破できるかを考えていく必要があります。
社長が求めるボトムアップは自然発生的には生まれない
現場から「うちはトップダウンすぎる」という声が上がる一方で、社長の側からは「うちの社員にボトムアップを期待しても無理だ」という真逆の嘆きを同じくらいよく伺います。
社長様の立場からしてみると、「自分が指示をしないと従業員は何も動かない」と感じられています。ある意味その通りで、企業は社長が一番熱量を持っている組織体です。そのため、理論上は社長の期待以上に働いてくれる人はいないことになります。
なぜトップダウンが難しい中小企業において、ボトムアップも難しいのか。
ここで問題なのは、社長の立場からは現場が見えなくなっていることです。経営者として立場が上がり、視野が広がるほど未来の事業計画や数字に意識が向きます。経営者は未来を作るのが仕事ですから、これは当然と言えます。と同時に、同じオフィスにいるはずの従業員の様子、足元の組織の塞感には気づきにくくなります。つまり、「現在の様子」を拾う感覚が鈍くなります。
例えば、
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なぜ、これほど退職者が止まらないのか?
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なぜ、自分の方針が末端の社員まで届かないのか?
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なぜ、チームが一丸となっている感覚が持てないのか?
このような組織内の問題があるにもかかわらず、根本的な原因が同じフロアにいる社長は分からないというわけです。もしくは、気付いているが後回しにしていると言った方がいいかもしれません。
すると、従業員の間には「言っても無駄」「指示を待つのが一番安全」という閉塞的な雰囲気が一因としてあります。そして社長は「従業員は指示待ちだ」と落胆し、自ら指示を出す。指示が出てくると、従業員は「私たちの意見は聞いてもらえない」と壁を作ってしまう。多くの企業様を見せて頂くと、中小企業はこの悪循環が置きやすい環境だと私は感じています。組織拡大のためにさらなるトップダウン体制を作っていくことは必要ですが、どこかでこの循環を断ち切り、ボトムアップ要素を入れておかないと組織は息ができなくなり、従業員は働く場所としてその企業を選ばなくなります。
ボトムアップは自然発生的には生まれません。そのため、意図的にボトムアップを取り入れる必要があります。ボトムアップが根付くことで社風も変えていくことができます。
ボトムアップを成立させる「2つの絶対条件」と人事制度の役割
では、組織の中に意図的にボトムアップを成立させるにはどうすればいいのでしょうか。 私は、以下の2つのステップが絶対条件になると考えています。
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① トップからの具体的な「問いかけ」
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② 意見を安全に「汲み上げる場の設定」
これまで数多くの企業の組織診断を行ってきましたが、この①と②が両方とも正しく機能しているケースは非常に稀です。
①の「トップ」とは社長様だけを指しているのではありません。リーダー(管理職)→メンバー、さらに下位組織でも主任・係長→後輩も当てはまります。小さなユニットになっても同じように①②が実施できて初めてボトムアップが可能な組織と言えます。
そして、この①②を作るところからボトムアップでやらせようとするリーダーが非常に多いです。よくあるマネジメントの失敗として、「この①(問いかけ)と②(場の設定)を作ることから、ボトムアップ(部下の自主性)でやらせようとするリーダー」がいます。「何か意見があったら、自分たちでミーティングを企画して持ってきてよ」というスタンスです。
しかし、これは明確に間違いです。下位の立場(部下)から、上の人間を巻き込む場を自主的にセッティングすることはハードルが非常に高いです。これを上の立場の人は自覚せねばなりません。
ボトムアップはトップの熱量から始まります。トップが本気で皆さんの意見を聞きたいかどうか、従業員には透けて見えてしまいます。ボトムアップが自然発生的に生まれない要因はまさにこれで、求めるだけではだめだということです。
言い換えれば、トップの熱量があればボトムアップの組織に変えていくことは可能で、上手くできていない場合はこの「①トップからの問いかけ」と「②汲み上げる場の設定」を改善すればよいだけだと思います。ここは研修や伴走次第でいくらでも実施を促すことができます。
そして、「人事制度(特に目標管理と連動した評価制度)」こそが、このボトムアップの壁を乗り越えるための最強のインフラになります。
人事制度を正しく導入・運用することで、面談やフィードバックという形で「①問いかけ」と「②汲み上げる場」が組織の公式なルーティンワーク(仕組み)として強制的に組み込まれます。結果として、社内のコミュニケーションの量は格段にアップするのです。
(※ただし、その対話の「質」を高めるためには、仕組みの導入とセットでリーダー教育・運用トレーニングが不可欠です)
現在ご支援中の企業様では、評価のみならず組織体制を整えるための人事制度を導入すべく伴走しております。
中小企業の人事制度・組織開発に関する無料相談を承ります
「うちの会社はトップダウンすぎて社員が冷めている」「ボトムアップの仕組みをどう作ればいいか分からない」など、組織のコミュニケーションや体制づくりでお悩みの経営者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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