2025年02月17日
本来、人事制度は独自のものなはず
当社にご依頼頂くご相談事項で必ずと言っていいほど言われるのが、「コピペではない、独自の人事制度を作ってほしい」という内容です。
私の感覚では、人事制度はその企業独自のものであるのは当たり前だと思っています。それは、その企業の事業・風土・従業員を理解しないとそもそも制度を作ることができないからです。
にもかかわらず、どうして「当社独自の制度を作りたい」というニーズがあるのか。
それは、「人事制度=コピペ」というイメージを作っている何か要因があるのではないかなと感じています。ケースとして、大きく2つあります。
過去に外部に依頼して人事制度導入を失敗した場合
企業様にご提案している中で、意外にも多くの企業が人事制度導入に踏み切ったことがあるんだなと感じます。これは、企業規模に関わらず、小さい企業様でも聞かれる話です。
そして、その後運用をやめてしまったケースのほとんどが、過去に外部委託して人事制度を作ってもらっていました。外部とは、別の人事コンサル会社、県や区が派遣している専門家、社労士、キャリアアドバイザーなどです。
そういったところでは、恐らくですが「○○メゾッド」や「●●人事制度」のような一律の構築方法があり、コンサル内で使っている手法やフォーマットを判を押したように使用しているでのはないかなと推測されます。
これはコンサル側の視点に立つと合理的です。人事コンサルタントを養成するのは非常に難しく、人事や事業会社を経験していない新米コンサルタントでも標準化された手法を使えば一定の質を担保できるように開発されたものでしょう。
しかし、このやり方は柔軟性がないのが一番のデメリットです。
メゾッドやフォーマット自体は悪いわけではなく、これを使うコンサルタントが人事制度の余白をどこまで理解しているかによって完成形が変わってしまいます。もし、一点突破でごり押ししてくる方だと、たちまちコピペの人事制度が出来上がってしまいます。
私はコンサルタントの経験は重要だと思っています。それは、人事制度の「構築経験」ではなく、「運用経験」があるかが見極めポイントです。人事部に所属し、運用を苦慮した経験があるかどうか。コンサル経験だけでは、人事制度が自社にフィットしていない影響や従業員からの不満がイメージできず、調整を進めることが難しいと考えています。
「早い・安い・簡単」を打ち出していたり、制度の効果を最初から打ち出している(自己実現、自律分散型など)専門家は、少しメゾッドがきっちり決まっているだろうなという印象を受けます。
企業様が独自の人事制度構築の難しさをイメージできていない場合
これは一度だけ私が体験したケースです。
「独自の制度を作る」ことについては、企業様と私が対話を重ねながら制度の細かい部分を設計していくになるので、企業様の方でも相当な努力が必要です。人事制度のことを勉強し、そこから派生してどのような人事課題に影響が及ぶかをイメージし、自社を分析し、落としどころを探ることに悩むことになりますので、多くの時間を費やして頂くことになります。
多くの企業様はこれを理解してくださり、社長様もしくはご担当者様が人事制度に関して積極的に学んでくださいます。こちらが驚くようなところまで知識がある方もいらっしゃり、そうするとさらに込み入ったレベルの高い話ができるようになってきますので、完成した人事制度の精度が高いと感じています。
そして、私の方は企業様への知識提供や手法提案を全力で実施させて頂きます。人事制度について基礎知識を学びたい社長様には勉強会を開催したり、関係者の方々にも実際に他者事案を見て頂きながらお話したこともあります。
ところが、中にはこの前提知識の底上げの時間を全く必要ないとしてしまう企業様がありました。
また、私のコンサルディングでは、社長様の方針と従業員の方の状況を把握するために準備期間に2~3カ月頂いていますが、その組織分析時間も不可とされました。学んだり、分析したりする時間がないからコンサルに依頼したんだ、ということでしょう。
このようなケースでは、「独自の人事制度は構築できませんよ」というお話をさせて頂きます。人事制度の手間・工数を丸投げしたい場合は、ある程度型にはまった人事制度を導入されることをお勧めします。コピペの人事制度自体が悪いわけではなく、シンプル簡単なものが多いですし、その方が費用対効果の満足度は上がるように思います。
人事制度を構築した人の本気度が高くないと独自の人事制度は作れない
コンサルディングとは、企業の風土や状況を初見の者が社外から入ってくるため、双方の努力が必要です。その意識がある企業様では、組織を変えたい本気度が高く、人事制度プロジェクトは必ず成功しています。そのような企業様のために動いていきたいと日々実感しています。
IGNITE HORIZON(イグナイト ホライズン)
50人以下の会社やチームのための成果を出す人事コンサルタント|IGNITE HORIZON
メールアドレス:info@ignite-horizon.com
無料相談承ります。
人事・総務でお悩みなことが御座いましたら、HP内お問合せフォームもしくは上記メールアドレスからお気軽にご連絡ください
カテゴリ:ブログ
2025年02月03日
こんにちは、50人以下の中小企業にむけた人事・組織コンサルティング会社「IGNITE HORIZON」です。
先日、商工会議所が主催する「日本経済が抱える課題2025 人手不足経済を紐解き考える課題と展望」というセミナーを受講してきました。
人事として非常に参考になるお話でしたので、備忘録としてのまとめを共有したいと思います。
東京大学大学院 柳川範之先生のご講和でした
人口減少・労働力減少は避けられない
日本の人口減少が避けられないことは、日々のニュース報道などを見ると一目瞭然でしょう。50年後には8700万人まで人口が減少してしまうという統計も出ているほど、日本という国の規模は縮小しています。
それに伴い、労働力人口も大幅に減少しています。特に若手の採用は難しくなるでしょう。ということは、現在のビジネスモデルを顧みるタイミングが来ているということです。
例えば、製造業で若手を採用し、長年かけて熟練工に育てていく+その方たちが長年勤めてくれることで技術力を担保してきた企業があったとします。しかし、今後若手層が採用できなくなるということは、その企業のヒトを使ったビジネスモデルは破綻します。その崖っぷちギリギリのところに我々は位置しているのです。
思うに、人事施策の大半が波が来る予兆があると思うのです。社会の動向や事業現場で起きている課題を捉えていれば肌感覚として感じる方も多いはずです。
しかし、賃上げのように「急に大波が来た、困っている」と中小企業が報道されてしまうのは、対策のタイミングを見過ごしてしまったと言わざるを得ないでしょう。社会変化の前兆は、経営者であれば必ず気付く形で目の前に訪れているのです。

「ヒト」が企業の資産になる時代に
日本の人口減少、労働力減少が目前に迫る中で、人事界隈では人的資本経営が唱えられるようになりました。「ヒト」を持つことが企業の資産となる時代ということです。
これは、ビジネスに必要なもの「モノ・カネ・ヒト・情報」の4つの分野が全て資産になるという考え方で、「ヒト」を物のように扱う印象もあり、資産価値として考えるのは今までは嫌厭されていたのではないかと思います。
また、「ヒト」の資産は金額換算が難しいため、財務諸表に現れない指標になります。にもかかわらず、業績に直結している。同じ業界でも企業風土や組織開発、人材育成の力の入れ具合の差が業績に見事に反映しています。今後、「ヒト」資産の数値化はさらに加速していくでしょう。
「ヒト」が資産になるということは、日本全体で牌を奪い合うということです。このセミナーの中では「知恵の奪い合い」と表現されていました。人的資産の源泉は「知恵」であることを思い知らされます。
新卒市場、転職市場がこれだけ活性化されている中で、従業員側も自分が株のように市場商品であることに気付いてしまいました。「私って、転職市場に出れば売れるんだ」。その価値が従業員側に明るみになってしまった以上、企業と従業員は対等関係になったと認めざるを得ないということです。
従って、「事業成長の見込みが人的資産の投資に現れているか」が今後重要指数になります。人事施策の重要度が急上昇するわけですね。
物的資産と同じような投資プロセスを踏むべき
以上のことを踏まえ、本セミナーで一番勉強になった考え方は、物的投資と人的投資を比較し、「物的投資と同じように投資プロセスを踏むべきだ」ということでした。
例えば、ラーメン屋を経営しているとして、ラーメン屋が事業成長するためには新店舗を出店します。新店舗出店のためには、賃貸や設備の準備といった物的投資の必要があります。
この際、仮に現在の店舗で余っている机やいすがあったり、鍋やおたまがあるよ、ということであれば、新しく購入する必要はありません。つまり、現在自分が持っている資産を棚卸して、必要なものを考えるプロセスを踏みます。
これが人にも同じことが言えるという考え方です。タレントマネジメントも同じ考え方で、現在企業が持っている人員の能力やスキル、経験を棚卸しなければどのような組織を作るか戦略は立てられません。
私もこのタレントマネジメントの経験はありますが、大企業で全員がパソコンを持ち、自分のスキルを把握しているような状況でも情報収集は非常に大変でした。(結局終わらなかった)
一番大変だったのは、回収した情報をどのように保管・アップデートしていくかで、これはタレントマネジメントシステムを使ったとしても使い手がこの情報の貴重性・資産価値を感じていなければ、眠れる資産となってしまします。
きっと多くの企業で「ヒト」の情報は回収されず、回収しても投資計画に使われることも無く、お蔵入りしてしまっているでしょう。これが非常にもったいないと私は思うのです。情報を活用して採用計画を立て、従業員のキャリア計画を立てる。これが人的資本の投資計画です。
いつかその手助けになる施策を日本に浸透させたい。そのためにまずは目の前の中小企業様に対して真摯に資本の把握と計画立案をしていこうと考えたセミナーでした。
カテゴリ:ブログ
2025年01月17日
■実績紹介
会社名:株式会社エコ・ブレーンズ
設立:2008年
所在地:静岡県静岡市
従業員数:10名
事業内容:補助金申請代行業
御社で何が起こっているのか、オリジナルアンケートで炙り出す
支援させて頂いている企業様にて、組織サーベイとして従業員アンケートを実施いたしました。まず、当方が用意しているオリジナルアンケートを基に、社長様と事前に設問に対するすり合わせを行い、従業員アンケートを完成させます。私が確認したいことに加え、社長様が気になっていることをこのタイミングで確認できた方が良いので、併せて設問に盛り込みます。
また、事前に社長様とはメンバーの業務内容・過去のキャリア・性格特徴・強み弱み・将来性などについて打合せをしております。ある程度組織の情報を私もインプットできた状態でアンケートを調整しておりますので、最終目的である人事制度を作るために知りたいこと、例えば「評価制度のための評価基準」「人財育成基準」「経営者と従業員の温度差・方針のずれ」などをまとめていくための設問を的確に用意することができます。
実は、アンケート実施直前にこちらの企業様にて入退社が発生してしまい、社長様が非常に疲弊していらっしゃいました。社長様としては誠心誠意従業員を巻き込んできたわけですから、辛い部分は心中察することができます。その出来事を踏まえ、アンケート内容を一部更新することにしました。社長様としては「社員の不満を聞いてほしい」とのご要望が新たに出てきたため、そこも診断できるよう設問を工夫した一方、あまりにも「不満抽出」に固執してしまうと本来の組織診断から離れてしまうので、アンケート内では軽く触れる程度にとどめ、メインは私が面接時に口頭で確認することにしました。
このように、企業様の状況に合わせて柔軟に設問を変更し、集めたい情報を確実に吸収できるようアジャストできることは当社の強みかと思います。
↓アンケートサンプルです *全体で4枚(20問)ほど
組織の核を探る従業員面談
アンケート集計後、企業に訪問して従業員面談を実施しました。一人1時間、10人実施しましたので1日で10時間面談していたことになります。
従業員面談は、「従業員の方が心を開いてくれるか」が重要ポイントです。どこの人事コンサルでも従業員面談を実施しているかと思いますが、面談はインタビュアーの力量がものすごく出る部分になります。そのような状況で、従業員の方の「大丈夫です、何もありません」という言葉を間に受けてしまうようなコンサルタントは組織実態を捉えることは難しく、その言葉の裏にあるような人間関係・性格・状況・熱量などを総合的にみて、瞬時に質問を調整していく必要があります。
今回、従業員面談を実施してみて、外部の人間がヒアリングに入ることが組織にとって大きなプラスになると改めて実感しました。
㈱エコ・ブレーンズ様では、当初社長様が「急に外部の人と面談しても、みんなあんまり喋らないんじゃないかな」と言っており、一人30分のタイムスケジュールにしていました。ところが、面接を初めて見ると、組織のこと、プライベートなこと、今までの経歴のこと、将来のキャリアのこと、事業展望のこと、地域のことなど、様々な話題が出てきて一人1時間かかりました。10人いましたので、面談日は10時間面談を実施しました。(最後の方は声がかれてきました…)
社長様が驚いていたのは、従業員の方がすぐに心を開いてくれたことと、私が従業員の方の性格や特徴を掴むことができ、社長様の思っていた印象と一致していたことです。それは、手前味噌ではありますが、私が事業現場とのやり取りがとても多く、300~900人の地域の従業員の人間模様を見てきたことが活きているのだと思います。実際に会わなくてはその人の性格がわからない、というのも、遠隔地にある事業現場に訪問する中で身についた感覚です。メールや電話では冷たかった人も、実際に対面してみると攻略すべきポイントが見えてきます。
組織は閉塞感があります。特に、中小企業は小さい箱の中に人間関係が押し込められているようなものなので、社長様・従業員様ともに相談相手がいないための行き場のないストレスはあります。意外にもコミュニケーションの範囲(話題・対人)が狭いのです。そこで、利害関係のない第三者が入ることで、皆様多少なりともほっとしたような顔をされます。毎回この瞬間に面談をやってよかったなと感じます。
私の感覚的は、8~10人面談すると大体従業員の意見が一致してきます。もう少し規模の大きな組織でしたら、キーパーソンを8~10人ピックアップして頂き、その方たちと面談していきます。面談はWEBではなく直接企業様へ訪問し、生の感覚を吸収してきます。(地方企業も大歓迎です。)
但し、1時間愚痴大会にしないようには気を付けています。また、「この話は社長に報告します」というスタンスでヒアリングを行いますので、ただすっきりして終わりではなく、今後のためになるような発言を従業員様にも心掛けて頂きます。
そして、そこで出てきた意見や話をふるいにかけ、どこを社長様に報告するか私の方で見極めていきます。
フィードバックで見えてきたビジョンと社長様の覚悟
従業員アンケート・面談に加え、その前段で実施していたMVV策定・人事ポリシー策定の内容を合わせ、最終結果をご報告します。ここが一番コンサルタントの頭の悩ませどころで、社長様の性格や従業員の方との関係性に応じて報告レベルを変えていきます。(従業員の方の意見を聞いて、さらに関係性が悪化してしまうと本末転倒なので、そこは私の方で調整いたします)
今回の企業様は社長と従業員の関係が比較的良好だったので、問題なくご報告いたしました。
さらに、今までの調査で課題がいくつか出てきます。しかし、すべて同時に実施というわけにはいかないため、優先順位をつけてお渡します。その順位を見て頂き、今後取り組むべき人事・組織施策の推進スケジュールを一緒に組んでいきます。必要に応じて、調査に協力頂いた従業員の皆様に報告会を開くことも可能です(その場合は、私も同席させて頂きます)。従業員の方にフィードバックがないと、毎回調査だけ協力してあの手間と時間は何だったのだと不満につながりかねません。コミュニケーション施策の一環にもなりますので、最後の報告会までアレンジさせて頂きます。
㈱エコ・ブレーンズ様では、当初社長様のご意向は「人事制度を導入してほしい」というものでした。そのため、その方向で私も準備を進めていたのですが、従業員アンケートと面談を通して、従業員から「(後継者探しも含めて)社長にビジョンがない」との声が多数聞かれました。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は立ててあったのですが、従業員の方が感じる実態と理念が一致していなかったのです。また、MVV策定のためのセッション(私との壁打ち面談)の中で、社長様から「5年後はどうなるかわかならい(そのため、臨機応変に適応していく)」という発言が所々でありました。社長様としては前向きな姿勢で挑んでいくという気持ちでしたが、従業員のもとにはそのポジティブさは伝わっておらず、反対にネガティブに感じ取られていたということです。(従業員の前で社長様が発言していたわけではなく、あくまでも従業員が空気を察していたということです)
そこで、私からのご報告では、最優先事項としてMVVの立て直し(浸透)を提案いたしました。この土台がぐらついた状態で制度を導入しても、従業員がついてこないことが明白だったからです。
<報告書サンプル>
ここから施策に突入するわけですが、ここまでで3カ月かかります。
これが私の支援の特徴です。早い・安い・簡単、これを謳っているコンサルタントはいくらでもいますが、そんな制度を導入して本当に御社が10年後に伸びるのでしょうか。私は、本当に御社の成長を考えて施策を練ります。そのためには、社長の方針や御社の雰囲気、従業員のポテンシャルなどをインプットし、御社の社員のように気持ちを入れる必要があります。私はじっくり・丁寧・御社にフィットするコンサルタントをめざしています。そのため、御社の重要なお時間ではありますが、施策開始前に3カ月の準備期間を頂いております。
ここに賛同頂ける企業様は、施策実施~運用伴走まで中長期的に伴走させて頂くことも可能ですので、ぜひご相談ください。
因みに、㈱エコ・ブレーンズ様では、この従業員アンケート・面談が社長様・従業員様の両者から好評で、今後も定期的に実施させて頂くことになりました。組織は生き物なので、定点観測は必要です。人財育成の面からも従業員アンケート・面談は非常に有効ですので、ここだけスポットで支援を受けたいという企業様も大歓迎です。お気軽にご連絡ください!
カテゴリ:実績紹介
2024年12月26日
本当に御社を大きくしたいかを問う
事業が大きくなり、会社として成長している中小企業においては、組織体制の悩みが出てきます。最近では、親御様から社長を引き受けた次代の若手社長様が、組織体制をどうしようかと組織体制にメスを入れようとしているところに立ち会う機会が何回かありました。
そこで問われるのは、「本気で組織を大きくする気がありますか」ということです。
先代から事業を引き継がれている社長様は、先代とともに戦ってくれた戦友のような従業員に頭が上がりません。自分よりも事業のことを知っていて、自分よりも年齢も社会人経験もあるとくれば、それはそのような従業員を立てなくてはいけないとなるでしょう。その方たちと一緒にこのままやっていくのも一つの正解だと思います。この会社を選んでくれた従業員の働く場を作り、動きやすい規模・スピード・温度感で進めていくことだって、唯一無二の使命なはずです。
もし、そこから大きく方向転換し、事業や企業を大きくしたいと思うのであれば、社長様本人の意志が必要です。「コンサルが入って心に火が付いた」と言われたら私としてはコンサル冥利に尽きますが、その企業のことを考えるとそれでは継続できず、社長の内側から「企業を大きくしたい」という気持ちがあって初めて人事・組織コンサルが始まると思っています。
そのためにもミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を節目節目で見直すことが重要で、自分の情熱の矛先がどこにあるのか見直しましょう。当社でもMVVの策定のご支援をしていますので、自身の方向性を壁打ちしながらじっくり向き合いたい場合はご連絡ください。
めざすべきは3年後の組織
社長の気持ちが固まったら、どのような組織をめざしたいか(事業がどのように大きくなるか)の予想を立てていきます。
大企業では、人員数計画予算、人件費予算を1年に一度立て、また昨年度立てた予算と実推との乖離を確認することをします。中小企業やスタートアップでは予算編成ほどカッチリしなくてもよいかとは思いますが、どのペースで組織を大きくしていくかを検討するために、1年後と言わないまでも3年後の見込みを見ながら組織図を描いていきます。
3年後の組織図を一度描いてみるとわかりますが、現在の組織からの変更が出てくるパターンがほとんどです。新規事業を立ち上げるために誰を選抜するか、その穴をどのように埋めるか。もしかしたら組織を解体させなくてはいけないかもしれませんし、あるいは現在起業を支えてくれているメンバーを横によける必要もでてくるかもしれないのです。現実として組織図に起こしてみると、本当に自分が求める姿なのかがわかりますのでぜひやってみてほしいと思います。
組織を大きく変えるパターンとしては、やはり階層化でしょう。社長直轄で従業員を見ているような組織であれば、リーダー(管理職)ポジションをいれましょう。管理職がすでにいる企業においては、その管理職たちが名ばかりではなく実際部下の面倒を見るように小さなチームを作ります。具体的には、育成と評価の責任をリーダーに付与し、指示系統を整えていきます。リーダーたちもすぐに上手くはできませんから、何度も教育をしたり評価会議の中で査定の不備を確認するなど、何回か実施することで感覚を掴んでいきます。
ここまで読んで頂くとわかる通り、組織図上でパズルのように動かすだけではなく、具体的に「人」に対して実行すべき施策が浮き上がります。リーダーに任用したい人に対してリーダー教育をしたり、新事業に入ってほしい人材に学ぶ場を提供するなど、より3年後の企業規模や人員対応が鮮明になります。私の支援では、この3年後の組織について、図と言語にしながら固めていき、人事施策も明確にしていきます。
何となく人事制度を入れない
「本気で組織を大きくする気がありますか」
私がこれを問うているのは、何となく人事制度を導入してほしくないからです。
人事制度はあくまでもツールです。人事制度を入れるだけで従業員が自発的に動き出す、会社がしっかりしているように見てもらえる、評価が平等になる…人事制度は一気に組織改善できるような万能なものでは残念ながらありません。導入したら、まずは作業工数が増えてしまったという不満が大きくなるのみでしょう。
手間をかけてでも導入する意志はありますか。これはまさに、「本気で組織を大きくする気がありますか」という問いと同義だと思います。組織を大きくしたい。事業を拡大したい。社長様は常にその考えがあると思いますが、一つ上のステージに行くことの恐怖もあると思います。現在の組織が壊れてしまうかもしれない、従業員からの反発を受けなくてはいけない、退職者がでるかもしれない、そこへの改革を本気で望むならば、人事制度を導入する絶好のタイミングです。
人事制度の効果が出るのは早くても5年後、もっと長期的に見れば20年はかかると思います。それは、人事制度が入っていることが当たり前の世代が評価者側になって初めて制度の本領発揮になります。人を評価するのは、自分が評価されたことがないと難しいからです。つまり、20年後の御社のために今行動できますか、ということです。少し悠長な話になってしまいましたが、20年と言わず、まずは3年後。現在の組織が3年後に変わることに対して取り組みたい企業様がいらっしゃいましたら、本気で支援いたしますのでお気軽にご連絡ください。
カテゴリ:ブログ
2024年11月20日
■実績紹介
会社名:株式会社エコ・ブレーンズ
設立:2008年
所在地:静岡県静岡市
従業員数:11名
事業内容:補助金申請業
従業員への情熱がそこにあるか
以前から支援させて頂いている企業(株式会社エコ・ブレーンズ様)で評価制度を導入することになり、そのためにまずは人事ポリシーの策定と組織診断を実施することになりました。
人事に携わっていない方におかれては「人事ポリシーって何?」と疑問に思われるかもしれません。人事ポリシーとは、その会社の重要資源である「人」について、経営者や人事責任者の方がどのように考えているかを言葉にした方針のことです。採用基準、昇格基準、組織風土に合う人の特徴、人材育成のスパン、どこまで従業員を育てたいか、人材のためにどのようなリソースを割けるか、等々。この方針を人事施策の運用をする担当の方や場合によっては社内全員に共有していきます。
ルールを決める際には必ず価値観が必要です。これは会社ごと異なっていて当たり前で、事業によっても異なるかもしれません。私がコンサルとして入る際、この人事ポリシーが具体的になるまでお話を聞きます。そして、この「人事ポリシー」を明確にする前に制度を作ってしまうと制度がコピペのような薄っぺらいものになり、必ずと言っていいほど形骸化するか潰れてしまいます。
人事制度を導入する最終判断は、「経営者の方が従業員に対して情熱があるか」です。
これは組織の責任者でなければ発生しない熱意です。まずは経営者の方、そしてそれに準じて経営層の皆様・人事責任者が熱意をもっていることが大切で、この組織に対する熱を組織の中に伝播させていくことが人事制度の確固たる役目です。ということは、はじめの熱意がどれだけ高く熱することができるか、ここに運用のポイントなのです。
制度は設計2割、運用8割と言われています。
ぴかぴかの制度を作ることは簡単で、人事経験などまるでない(正直はったりの)人事組織コンサルタントでも作ることだけでよければできます。しかし、それを長年にわたり運用していく、そして事業成果の伸びまで発展させていくことができるか、ここは実際に運用を経験していたコンサルタントでないと担当できないと思っています。
人事や組織の領域は、作業が目的化しやすいと思っています。つまり、本来手段だったはずの制度導入が目的になってしまい、社内稟議を通すことや制度を導入することが使命になりやすいため、本来の目的である「なぜこの制度を導入するのか」「導入した後にどのように変わっていきたいか」という本題の部分が薄くなってしまいます。
経営者の皆さん、ぜひ情熱を制度にぶつけて下さい。諦めかけている方、大丈夫です。
独自アンケートと対話で人事ポリシーを固める
人事ポリシーの固め方は、①必要資料(組織図や従業員名簿など)を提供頂く ②独自アンケートに回答頂く×2回 ③アンケートを基に当方とセッション×2回 という3段階構成になっています。
事業拡大のために走り抜けてきた経営者の方にとっては、組織についてここまで立ち止まってじっくり見直す時間がなかったと皆さん仰られます。入退社も激しいため、自分の企業であっても意外と実態がふわっとしている感覚もお持ちのようです。エコ・ブレーンズ様におかれましても、設立から10年経過していますが、社長様自身が人や組織に対して自分の価値観を初めて棚卸されたとのことでした。自問自答を繰り返すのでかなりタフな作業だったらしく、「なかなか大変だったよ」と仰っていました。でも、組織を大きくするうえではここが重要なのです。自分が今まで目をつぶっていた点、人の好き嫌いの傾向、従業員への考え方などを自覚するためには、少々つらくても一度見直してみましょう。
さらに、私とのセッションの中でどういう組織を作っていけばよいかという未来像は固まると思います。実は、こちらの企業様では経営層がおらず、実質社長様一人で経営を担われておりました。そのため、このような経営や組織の相談は社内の人間にはできない、話せなかったようで、そのようなときに私のような第三者の存在が役に立ちます。一度言葉に出してみる、それを聞いた相手からの質問に対してさらに考えてみる、このやり取りは一人ではできないので人事コンサルを導入して頂く一番のメリットです。
但し、人事ポリシーの確定は従業員アンケートと面談を実施してからになるので、このアンケートと対話は下準備ということになります。従業員アンケートと面談については、また次の記事でご紹介したいと思います。
↓一部アンケートサンプルのご紹介です
企業がどこまで成長できるかは人事ポリシーでわかる
エコ・ブレーンズ様において、当初の社長様の価値観は組織構造をフラットのままにすることでした。社長様が組織内をまとめていく方向でずっと維持していきたいというものです。私は、そのやり方もこの規模の企業ではありだと思います。人事ポリシーの策定で重要なのは「うちのチームをこのように動かしていきたい」という方針があることです。ということで、第一ステップはクリアされていると判断していました。
そこから、第二ステップとして「組織を大きくしていくことに本気を出せるか」ということを見つめなおして頂きます。
事業を大きくしたいという想いは社長様は皆さんお持ちだと思います。但し、エコ・ブレーンズ様のケースでいうと「組織を大きくしたい」想いはありつつも、リーダーを置いてマネジメント権限を委譲していくことに社長様の中で抵抗が最後まであるように感じました。見えていた従業員の様子が少なからず見えなくなるわけですから、不安になるもの当然だと思います。
しかし、私との2回のセッションの中で、当初は組織体制や人事制度を変更するつもりはなかったそうですが、私との会話の中で人事制度の必要性を感じるようになったとのことで、踏み切ることとなりました。
従業員は組織の人間関係に敏感です。しかも、表向きには「階層なんかないよ」と伝えられていればいるほど、「じゃあ平等なはずなのになぜあの人だけ?」とか「自分たちは何を評価されているの?」と経営層に疑念を抱きます。
このずれに本気で対応したいと思うか、組織を大きくして事業を成長させることに本気になれるか、答えがでるまでセッションは繰り返しますので、ご安心ください。焦らずじっくりお付き合いします。
カテゴリ:実績紹介